第5話 原作とは違う道を

 翌日。


 異世界に来て二日目。

 このままここで生活してもぶっちゃけいいんだけど、せっかくゲームの世界に来たんだしもう少し遠出して探索とかしてみてもいいかもしれない。


 ゲームじゃできなかったしね。そんな探索。


 主人公は大まじめだからあの女の子助けるために必死に走り回ってたからな。


「さてと、アンナ」

「ブルン」

「今日はいっしょに行こうか」


 するとうれしそうに鳴くアンナ。


「ヒヒーン♪」


 周囲の探索だ。


「よし、じゃあ行くか」


 そうして俺たちは出発した。


 森の中は基本的に一本道で進む方向に困ることはない。


 なので、どんどん進んでいくと、見覚えのある木が視界に入ってきた。


「お?あれは?」


 アンナに声をかける。


「アンナあの木が気になる。向かってみよう」

「ヒヒーン」


 足音を鳴らしながらその気に向かってくれるアンナ。


 俺たちはその木の下についた。

 そしてその木を見上げた。


 そこの木の枝にぶら下がっているものには見覚えがあった。


 虹色に輝くその果物は原作でも見たことのあるものだったのだ。



「アンナちょっと立つよ」


 アンナの背中の上でバランスよく立ちながら俺は木の枝に成ってる果物に手を伸ばした。


 ぶちっ。それをもぎ取って


【鑑定】


名前:叡智の果実

品質:★10

説明:食べることで知識を得ることができる。また、食べた者の知力を大幅に上げる。副作用などはない。


「やっぱりだ」


 俺は思わず声に出してしまった。


 これは原作でも存在したアイテムだ。


 原作主人公はもちろん自分のために使った。

 これから待ち受けるドラゴンとの戦闘を想定して、だ。


 でも俺はぶっちゃけドラゴンのとこ行く気ないからな。


「アンナ食べてみないか?」

「ブルン」


 うなずくアンナ。


「よし、じゃあいくぞ」


 俺がアンナの前に叡智の実を持っていくとそれにむしゃぶりついたアンナ。


 そして食べ終わるとすぐに変化が現れたのだった。


 つばを飲み込みながら緊張しながら聞いてみた。


「どうだ?何か変わったか?」


 するとどうだろう。


「えぇ、もちろん変わりましたよカイン」


「は?」


 思わずそんな間抜けな声を出してしまった。

 なに?今の声どこから聞こえた?


 てか、この森俺とアンナ以外誰もいないんだけどな。


 まじでどっから聞こえたんだ今の声。


 そう思ってたらまた声が聞こえてきた。


「私ですよカイン」


 声の聞こえたほうを見ると。


「あん?」


 信じられないことが起きてる気がする。


 えぇっと。

 しゃべってるのさ。

 もしかして


「お前がしゃべってるのか、アンナ?」

「はい」


 そう答える声は紛れもなく俺の相棒である馬だったはずのものだったのだ。

 これまじですか?


「えっ?なんでしゃべれるようになってんの?」

「それはですね、私の中で新たに発声器官ができたみたいです。おかげでこうしてしゃべることができるようになったんですよ」


 なるほど。馬にそんな力を与えるなんてやはりあの木の実は原作通りすごいものみたいだ。


 そんな原作通りの効果を持つ木の実を見て俺は興奮していた。


 だってさ。こういうのがあるってことはさ。


(もっといろいろ原作通りのアイテムとかがあるんじゃないか)


 って思ったからだ。

 わくわく。

 こんなアイテムを見つけて俺はわくわくを抑えられなくなっていた。


「進もうアンナ」

「はい、カイン」


 そうして進んでいく。

 原作にもあった森の中を。


 そうやって進んでいると、やがて原作にもあった分かれ道が見えた。


 しかしこの分かれ道だが、原作では右側は普通に通れるのだが、左側は謎の岩があって通れなくなっていたのだ。


 右に進むのは簡単だが。


「せっかくだから左に行ってみよう」

「でも岩をどうしますか?」

「大丈夫、俺にまかせろ」


 そう言って俺は槍を構える。


 万物にはすべて弱点がある。

 どんな岩だって同じだ。

 それを見つける。


【鑑定】


 すると弱点が見えて。


【二段突き】


 すると、硬そうな岩だったが豆腐に爪楊枝を入れるように食い込んでいき。

 やがて壊れた。


「あんなに硬そうな岩を簡単に貫くとはさすがですねぇ」

「こんなの朝飯前だよ」


 そう答えて俺はアンナといっしょに左の道を進んでいく。


「しかしこっちの道は少し薄暗いな」


 ちょっと薄暗い道が続いてた。


「明かりでもあればいいんだが」


 そう思って俺はクラフトの存在を思い出した。


【クラフト】

・ランタン:暗い場所を明るく照らすことができる。


「あった」


 さっそく使ってみることにしてみた。


「【クラフト】」


 そうすると目の前に手のひらサイズの小さな箱が出てきた。

 その箱をパカッと開けてみると中には小さいろうそくが入っていた、そして初めから火がついてた。


 便利なものだな。


「私が持ちますよ、カイン」


 そう言ってくれたのでアンナの前に差し出すと彼女はランタンについていた紐をくわえた。

 これで明かりは確保できた。


「進もう」

「はい、カイン」


 そうして薄暗い道を進んでるとやがて視界の先にうっすらと照らされてきたものがあった。


「なんだあれは」


 そこには大きな石の壁があった。


「あれはいったい?」


 疑問を持ちながらも俺たちは壁のほうに向かうことにした。

 そうして近づいて行くと、壁の前には門があった。


「これは、まさか」


 俺は門の前まで来て確信した。


「ここは、ダンジョンの入り口だ」


 なんだこのダンジョン、俺の知らないダンジョンだった。


 原作ではこんなダンジョンなかった。

 まぁ当たり前なんだけど、だって俺が通ってきたの原作にはなかった道だったからな。


「ごくり」


 つばを飲み込んで俺はアンナを見た。


「進んでみるか?」

「はい。進んでみましょう」


 原作では絶対にくることのなかった場所にあるダンジョンに胸が熱くなる。


 興奮が止められない。


「でも、準備してから行こう」


 俺って人並みには慎重だからね。

 まずは


「食料だな」


 攻略に何日かかるかわからない。

 最低限数日は過ごせるだけの食料を持っていこう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る