嘘だと言って、聖女さま!!〜五人の聖女のママになって、旦那さまと世界征服目指します〜
向野こはる
開幕
プロローグ
「だっ、だだ、旦那さま、か、覚悟は、よよ、よろしいでしょうか!?」
「お、おおお、おう、もちろんだ、だ、だ、旦那さまに二言はないぜ、奥さま!」
ひゅおっ……と足元から風が吹いてくる。
目下、断崖絶壁の崖の上だ。夜空に浮かんでいた月は雲に隠れ、足先が蹴り落とした小石が、どこかへ不時着した音も聞こえない。
崖の下で、真っ暗な暗闇が口を開けて待っていた。
人一人がようやく通れるほどの幅しかない崖は、正真正銘、魔界の入り口のように思える。
だが、ここまで来たからには、引き下がるわけにはいかなかった。
エルシィはセオドアが迷子にならぬよう、しっかりと指先を組んで手を繋いだ。彼は多少面食らったようだが、代わりにエルシィの細い体を片腕に抱きしめる。
フードのついたローブを纏い、暗すぎて互いの目の位置が分からなくとも、息を吸い込んで頷きあった。
「行きますよ、旦那さま!」
「ああ、信じてるぜ、奥さま!」
二人、崖から空中へ躍り出る。
月のない夜空。星のない暗闇。
二つ分の悲鳴はすべからく、物語の幕開けを表していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます