取違え聖女と勇者殿
帆辺 途
第1話 失われた自前棒
うとうとと眠りに入ろうとするまぶたに、ハイビームが突き刺さる。
これから帰社して残務処理を終わらせて、さっきまであんなに腹が減っていたはずなのに、腹が減りすぎて、逆に食欲が失せてきた。
少しでも早く帰って眠りたいなぁと、重くなってきた瞼にこの光。
強引に覚醒させられるのは非常に不愉快、いやまて、寝たらまずい。起こしてくれてありがとうございますだ。
だって俺は今、俺は今……突っ立っていた。
何もしていない。
ただ立っている。
光は対向車線のハイビームではなく、自分の体から放射されているようだった。
自分の体を見る。装飾の少ない白っぽいワンピース?ドレス?姿だ。こういう服を着る趣味はないし、もちろん一着だって持っていない。存在しないはずのものを着て立ち尽くし、あまつさえ自身が光っているとはどういう状況なんだ?えーっと、そもそも人間って光らないでしょ?
人体発火?オカルト?ちょっとやめてくれよ、そういうの怖いんだから。
などと思う間にも一向に火を吹き出す様子のない、ワンピース越しの体のラインは運動不足が気になる30過ぎの男とは到底見間違えることのない、なんというか女性的な……的もなにも女性、だな……華奢な女性……なぜ、どうして、え~~~と、あれ?それって。
オレの自前棒、どこいった?
自前棒がそこらへんに落ちているとでも思ったわけではないが、そこで初めて周囲に意識を巡らせる。と、遠巻きではあるが、老若なん……いや、うら若き女性ばかり数十人からなる、ファンタジックかつ高価そうかつ、宗教儀式でも始めそうな、揃いのローブに身を包んだ集団に囲まれている事がわかった。
この中のどなたか、俺の自前棒の行方をご存じなかろうか。スマホや財布じゃあるまいし、紛失するなんて思いもよらないし、盗まれるものでもないからGPSだってついていない、警察の遺失届にだって、なんて書いたらいいんだろう。
お客様の中に、記入方法をご存じの方いらっしゃいますか~~!
いやいや、それだけじゃない。体が光ってるのって何の病気ですか、言いにくいけど体が女子っぽいんですけど、とか、先に行くべきは警察より病院か?
でもさ、まずは人生の苦楽を共にした相棒である、自前棒の無事を確認したいわけよ。
ああ、頭が混乱してきた。
そんな俺の思いをよそに、周囲に立つ誰かが声を張った。
「諸賢、まさにこれ欣喜なり!銀の玉体!」
「恭敬せよ!」
「仰望せよ!」
周囲が呼応し、日常会話ではおよそ聞かない言葉を繰り返す。
何だかよくわからんが、俺に対して何かを喜んでいる事だけはよく分かる。分かるんだが、わけもわからず大勢から急に祝われ喜ばれるのは怖い。こんなの絶対詐欺か、やばい方のアリガタ~イ教えでしょうよ。
あんたがたが喜ぶのはいいけどさ、こっちはわけもわからず女体化し、心は自前棒を紛失した悲しきおっさんなわけよ。
あぁ、いや、待てよ。これは夢だ。そうだ。そうだよ。んなこた冷静になればわかりそうなものだ。
よーしよし、無事夢だと認識したことだ、さあ、目覚めろ、目覚めるんだ秋山鉄平!!
◆
「リリーナ様」
結局その後、俺は夢から覚めることなく、あれよあれよとギラギラの神輿に担がれ、キラキラのローブをまとった偉そうな人々に囲まれ、ピカピカの鎧に身を包んだ騎士が隊列をなし、さながらファンタジー大名行列が形成されたと思ったら、豪華な建物、お城?の外に出て、その後は豪勢なお屋敷が立ち並ぶ大通りを、さらに長時間かけて連れまわされることとなった。
神輿の上では、もはやこれは拘束具かと思えるほどの、ドレスや宝飾品をデコレーションされ、頭にはLサイズ鶏卵をさらに一回りデカくしたサイズの、オパール的な宝石がついた冠を乗せられている為、重量と状況不明の恐怖で指一本動かせない有り様だった。
神輿の周りには群衆が群がり、口々に祝福を叫び、慈悲を請う。
怖い怖い怖い。なにこれ怖い。
人々がなだれ込まないように抑えるのは、大名行列を守る、豪華な鎧に身を包んだ騎士たち。
彼らの体の横には半透明の輝く壁のようなものが見え、その壁を行列の外側に張り巡らせている。
唯一動く目だけで町並みや騎士たちを「綺麗だなぁ」などと観光気分に切り替えようと試みもしたが、どうにも誤魔化しきれない不安と恐怖、物理的な重量と、総額いくらかわからんゴージャスおべべを着用しているという半端ない緊張から、だんだん息苦しくなり、もうこれ以上耐えられない、吐きたい、倒れそう、と限界が来たところでようやく終点と思しき、出発地点の城よりはるかに巨大な城にたどり着き、そこから馬車にのせられて敷地を移動し、敷地内のお屋敷に案内され、長い廊下を歩き、歩き、歩き……こうして今、ようやっと部屋へ通されデコレーションをはがされた、というわけだ。
つ、つかれた!!!
あのクソ重たい冠のせいで身長2㎝はへこんだと思う。
気付けば体の発光現象は収まっている。
そういえば、デコレーションをはがされた時、冠の宝石がLEDもかくやと言うくらい光を発していた気がする。ハイビームの正体はお前か?
「リリーナ様、ぼうっとされて。ずいぶんとお疲れでございますね」
茶色い髪をくるりと結い上げた、かわいらしいそばかす顔のメイドさんに名前を呼ばれ、オレの脳に電流が走った。
リリーナ。
そうだ。
リリーナ。
リリーナ・ポワンスワン。
この“体”の名前だ。
ドレッサーの鏡が目に入る。
そこに映るのは、シンプルだが仕立てのいいドレスに身を包む、二十歳かそこらの美しい女性だ。
髪と瞳、そして爪までもが、銀色に輝いている。
名 を呼ばれ、自身の姿を目にした事が引き金となり、俺の中に彼女の『記憶』が流れ込む。
精霊に選ばれし、銀の乙女。
この世界を構成する6つの精霊『光』『闇』『火』『水』『風』『土』。
そのすべての精霊に選ばれ祝福され、それらすべての精霊の力を使うことを精霊に よって許された、この世界のバランサー、調停者。銀の乙女。
俺が目覚めて最初にいたのは城ではなく儀式場であり、その祝福の儀式を終えると、全身が、血の一滴までも銀になると言われている。
無論、血の一滴までというのはさすがに誇張であるが、今回儀式を無事に終えたリリーナは、髪を含む体毛と瞳、そして爪が精霊銀と呼ばれる色に変質した。これが銀の乙女の姿である。
もともと彼女の髪は栗色で、瞳は緑だったのだ。
うぶげが銀光を帯びて、全身が淡く輝いて見える。
リリーナにとって見慣れた姿、しかし同時に初めて見る姿でもある。
不安と高揚。
この精霊銀の色を持つのは精霊に祝福された銀の乙女のみ。このリリーナと、現在銀の乙女として調停者を務めている“頑健なる”ヘディ・テレラーテの2人だけ、いや、厳密には銀の乙女に一歩及ばなかった、銀結晶と呼ばれる女性たちのみだ。
リリーナはこれからヘディのもとで、銀の乙女としての務めを学んでいくのだ。
銀の乙女を助ける6人の……6人の……と、ともに。
え?
なんか記憶がおかしいんだが??
だって、常識的に考えておかしいでしょ、6人の、って。
白雪姫と7人の小人じゃねーんだからさぁ。
今の状況も勿論常識外れだが……いや、でも。
頭の中ですら、言葉にするのが怖いんだけど……。
「リリーナ様、お茶が入りましたよ」
俺が呆然としている間にも、てきぱきとそばかす顔のメイドさんが働いてくれていた。
「あ、えっと、コニー?だっけ」
俺がそう声をかけると、そばかす顔のメイド、コニーがぎょっとした顔をした。
「えっ!?まぁ!リリーナ様、夢でもご覧になっているようなお顔で!」コニーは顔いっぱいに心配を表す。「さようでございますよ!12年間お側にお仕えしている、コニーでございますよ。おかしな事をおっしゃって、驚くじゃございませんか。あちらの扉の先が寝室になっておりますから、お休みになられます?大勢に注目されて、儀式も一晩以上かかりましたし、もうじきお昼ですものね。なによりもうここは慣れ親しんだご実家ではありませんし、疲れがたまっておいででしょう」
コニーはまくしたてながら、俺の額に手を当て熱を計り、薄手のカーテンをさっと閉める。昼の日差しが遮られて薄暗くなると、実際疲れ切っていた俺はほっとした。
「リリーナ様が銀の乙女になろうとも、コニーはこれからもずっと変わらずお仕えいたしますからね。なんだっておっしゃって下さいまし。今日はもうお休みになってよいとのお達しでしたし、明日からすぐ忙しくなるようですので、お寝間着ご用意いたします?それとも先に軽食をお持ちしましょうか?儀式の間、そりゃぁ気が気じゃございませんでしたから、リリーナ様のお好きなビスケットを山のように焼いたんですよ」
そう言って、テーブルの上に置かれた、2つの瓶詰めビスケットを指さす。
コニーはリリーナの侍女であるから、通常厨房に立つ事はしない。
だが、難しい厨房の使用許可をもぎ取って、リリーナの好物である、ナッツやベリーのビスケットをたびたび焼いてくれるのだ。
「儀式の間は一口も召し上がる事が出来ないのだと伺いまして。お戻りになったらすぐにお出しできるようにしようと。仕方のないこととはいえ、食事抜きだなんて、そんなひどい仕打ちがありますか」
リリーナより少し年上のコニーは、よくしゃべる子だ。昔からそうだ。
リリーナの記憶の温かいところには、いつもコニーがいる。
彼女のプリプリと続くマシンガントークに気持ちが軽くなる。コニーの暑苦しいくらいの気遣いに、俺まで何だか嬉しくなってしまうじゃないか。
「あ、ビスケットだ、うまそ~!」
ふいにそんな声が聞こえた。
「なるほどね、回復アイテムのビスケットって、パンパンに瓶詰されてたんだ」
音の発生源の方向、ドレッサーの鏡を見ると、鏡の中にひげ面のいかつい風体の男が“いた”。映りこんでいる、というわけではない。ぽっかり開いたのぞき窓から、お互い顔を突き合わせているような状態、と言った方がいいのだろうか。
ぎょっとして思わず体が跳ねる。
男も驚いた顔で「え、あ、リリーナたん今こっち見た?聞こえてる?えっ、見えてる?やっば」と、声を発する。
黒髪に黒目、彫りの深い30代くらいの日に焼けた厳めしい風采、筋肉の張った首の太さが、鍛え抜かれた肉体を想起させる。声色は錆を含んだ渋さがあるが、いかんせん口調がカスッカスに軽薄ですべてが台無しだ。
俺の様子に気づいたコニーが声をかける。
「どうなさいました?」
「えあ、いや……あの」
俺は思わず鏡を指さした。
「あら、まあ!」
コニーも驚愕の声をあげる。
「虫が入り込んでいたなんて!」
え?
コニーは鏡の枠にしがみついていた小さな虫を躊躇なくつまみ上げると、窓を開けてぽいと外にはなち、すぐに窓を閉める。
鏡の中の男もコニーの動きを目で追い、なぜか「おーい」と手を振っているが、コニーが男に気付く様子はない。声も、聞こえてはいない様子だ。
いや、しかし、この男。
俺、多分こいつの事 “知っている” ぞ。
この男が俺、いや、この体、リリーナを知っていたように。
「申し訳ございません。驚かせてしまって」
「こっちこそごめん。俺、わたし、が驚きすぎたっていうかさぁ。疲れてるせいかな、ちょっと大げさになっちゃったよね」
誤魔化そうと頭を掻こうとしたが、きちんと編み込まれた髪に驚いて慌てて手を離す。
そうだ、俺じゃないんだ。
「まあまあ、お可哀そうに。本当に疲れておいでだわ。そんな言葉使い、ご実家で聞かれたら、手をぴしゃりとされますよ」
そういうとコニーは寝室の扉を開けた。
今いる居間もだいぶ広いが、寝室も相当な大きさがあるようだ。ベッドに天蓋が見える。
「さあリリーナ様、コニーのおしゃべりはもうお終い。お着替えいたしましょう」 と、寝間着を用意するコニー。
この流れ、もしかして、着替えに助けがいるのか……?
「このままの格好で横になりたいな~、なん、ちゃって、ね」
こんな事言ったって、一時しのぎだとわかっちゃいるが、着替えの手伝いをしてもらうなんて、恥ずかしい。それに今は鏡の向こうにひげ面の観衆がいる。最悪だ。
「まぁ、ご実家でないとはいえ、コニーにも限度がございますよ」
コニーが咎めるような顔をするが、リリーナは彼女のこの顔が、決して怒っていない事を知っている。
「ですが、今日だけは目をつむりましょう。本当に顔色がお悪いんですもの。さ、ウエストと袖口だけもう少し緩めて、髪もほどきましょう」そういいながらコニー手際よく、するするとドレスの締め付けを解いていく。
おかしな事が続いているせいで、服の締め付けなど今の今まで気付きもしなかったのに、呼吸の楽さがケタ違いとなった。
「わはぁ~、息がつけた。ありがと」
コニーは心配そうに微笑むと「本当に今日のリリーナ様はおかしいったら」と言い、椅子に俺を座らせて、固く編み上げられた髪をほどき、緩めのみつあみにしておろしてくれた。「さあ、ひとまずこれで良しといたしましょ」
何かあったら壁の呼び鈴を鳴らすようにと再三言い含め、瓶詰ビスケットの1つと、たっぷり水の入った水差し、グラスを寝室のサイドボードに運び、ようやくコニーは部屋を出て行った。
「はえ~~お貴族様だ~~」
鏡の男が感嘆の声をあげる。
お貴族様~~という部分には大いに同意する。が、それより。
「なぁ、あんたさ、もしかして、“ウルフ”?」
鏡にできた穴に手をつく。手には今は見えない鏡の感触が伝わってきたから、実際穴が開いているわけではなさそうだ。
「えっ!そうそう、あたし “ウルフ”!え~ッ、リリーナもやっぱりもしかして、中の人違ってるヤツ?」
リリーナ“も”、中の人違ってるヤツ……。
これは、もしかして、あれか……。
「うへ……これ、異世界転生……?」
「ぽいよね~」
愕然として思わず顔を覆う。
異世界転生もの作品、好きよ。俺。無双とか出来たらきっと最高だもん。
でも、でも、このお姫様然とした容姿は、どっちかっつーと、おとめげ……グウッ、これ以上は、考えたくない!
「こんなんマジでビビるよねぇ~」
鏡の向こうのウルフは、そう言いながらへらへらと笑っている。
「ねえねえウルフってなに、誰?どういう作品?」
「……あとでリリーナの事も教えてくれよな」
「おっけ~」
「俺の知ってるその、ウルフ、ウルフ・ウェオルフは、【
「ふんふん。なんか謎の薬飲んだ、とか6魔人の事は、ウルフの記憶って言うのかな、それがバーっと入ってきて、なんとなく分かってたんだけど」
なんか謎の薬……いや、よく考えたら竜血薬という名前は、オープニングイベントの最中に「竜血薬を消費した」という、システムメッセージで表示されるだけだった気もするから、ウルフ本人がその名前を知らなくても不思議はない。
「そっか。じゃあ最悪、その6魔人は放置しといても、大丈夫だったするかなぁ。あたし、アクション苦手なんだよね~」
ウルフはいたずらを隠そうとする子供のような、バツの悪い顔をする。
ウルフの“中の人”は言動からしておそらく女性だ。そしておそらく若い。
無駄口を叩かない、渋いマッチョな大男であるウルフが、女性しぐさでしゃべって動くさまは、正直キツイ。ウルフが好きなキャラクターである分、ドギツイと言って差し支えない。
いや、多分俺が入ってるリリーナも大概で、今頃コニーが悶絶してる可能性は高いけど。
「うーん放置ね」
確かに。これが単なるゲームなら、わざわざ危険を冒さずとも、お使いみたいな小さいイベントを優先的にこなしたところで何の問題もない。そういう細かいイベントには事欠かないし、グラフィックがとにかく美麗で、用意された広大な世界は、地域で建物の様式や生えてる草木も違うなど、景観の変化もすさまじくて見飽きない、歩いているだけで時間が溶けていったものだ。
だが、自分が今リリーナとして感じている“実感”をゲームと断じて処理してしまってよいのだろうか。
ゲーム世界に閉じ込められたならともかく、実在する別の世界として転生したのなら、世界の事情とは向き合った方が良いのではないのか。
向き合いたいかどうかはともかく。
「うーん、それについては分からないけど。そういえば、俺もそっちみたいにリリーナの記憶、情報が入ってきてさ。その中で一つ、気になる事があんだよ」
「なになに?」
「これから俺は……リリーナは、結婚を……、その、何て言えばいいか」
「あ~うん、はいはい!言いたい事わかった、なんだそりゃって話ね!発売前情報であたしもだいぶザワついたし。まぁでも、推しがcvやってたら買わないわけにいかんし」
人の気も知らんで、ウルフはけらけらと笑う。
「攻略対象の“6人全員と結婚”するって話でしょ?エタ銀、【
「攻略対象6人“全員”と結婚ってどういう事なの!?」
やっぱり乙女ゲーか~。という気持ちに遥かに勝る重婚の衝撃。
6重!?開発狂っとんのか!!???
「ほんそれよ。えっと、リリーナが銀の乙女で精霊に選ばれた調停者、まではOK?」
「OK」
「ゲームの説明としてはこんな感じ。リリーナは、20~30年に一人選ばれる銀の乙女で、調停者として6つの属性の精霊を操れるけど、一人で全部こなすのは大変。だから6属性を司る、選ばれた“守人”、彼らと協力して世界を平和と安定に導くと。6人の守人と均等に精霊の契りを交わすために結婚という形をとるけど、恋愛関係にならなくちゃダメってわけじゃないよ、と」
「え、乙女ゲーだけど、恋愛の必要がない?」これは僥倖では。
「んまぁゆうて建前だけどね。あくまで結婚は仕事の都合で恋愛成就は結果論って話。ゲームとしてはなるべくみんなの好感度上げて誰かと恋愛関係になったほうが進行楽だし、結婚自体は最初にしちゃうし」
「ん、待ってくれよ。進行が楽っておかしくないか?最終目的が恋愛成就じゃないって事?」
「そこが説明むずくてね~目的は世界の精霊力の安定と平和だから……うんと、政治パートがあってね」
ウルフの説明はこうだ。
【光の守人】は光の精霊と軍事、軍隊を司る。これは、調停者がどうやって頑張っても必ず乱れる精霊力により発生するモンスターを討伐する為の組織だ。
【闇の守人】は闇の精霊と外交を司る。リリーナのいる国、ブレイザブリグは銀の乙女という精霊力の調停者を擁する世界の要であるため、精霊力の使い方ひとつで世界を実行支配することも可能だ。そのために反感も買いやすい。モンスター討伐のための軍事力動員の協力関係を築きつつ、常にどの国に対しても公正であることを示す必要がある。
【火の守人】は火の精霊と工業、いわゆる第二次産業を司っている。ここから内政組だ。
【水の守人】は水の精霊と主なインフラ事業を司る。
【風の守人】は風の精霊、商業や流通、通信を司る。
【土の守人】は土の精霊と農業や漁業、酪農などの、第一次産業を司る。
彼らの好感度を上げると、仕事の成果が格段に上がっていく。
恋愛関係に発展すると、特にリリーナの行動力を消費しなくとも常に高い成果をあげてくれるが、好感度が低いとリリーナの行動力を消費して国の運営指示を細かく出していく必要がり、しかも効率も効果も芳しくない状態になる。
「めちゃむずいんよこれがさぁ。正直何度世界を滅ぼしたか」
「えっ、世界滅ぶんですか……」
「わりとポンポン滅ぶんだよね」
「ポンポン滅ぶんすか……」
「しかも、結局トゥルーの逆ハーエンド一回も見てないんだよ~。難易度鬼すぎて」
ウルフがほっぺ膨らませてぶー垂れている。逆ハーで始まるのに逆ハーで終われないのは、健全なのか何なのかよくわからんな。
「そんなんだから評価低いしマイナーでさぁ、エタ銀。攻略情報もろくに見つからなくって」
乙女ゲーなら愛だの恋だのをもっと謳った方が良い、というか謳うべきだと思うが、戦略や国営シミュレーションゲームを作りたかった人が、開発チームの指揮にまぎれていたのだろうか。
「ま、そんな感じ。こっちでウルフが気を付ける事ってある?」
「うーん、ゲーム的なことで言えば、寝食なくても動けるけど、バッドステータスになるとか」
「寝食無しが問題なく出来たとしても、普通にヤだよそんなの」
「だよなぁ…あ、6魔人はそれぞれ特定のフィールド範囲内を普通にうろついてて、 遠目にはドレス姿の女性って感じだから、準備無しのエンカウントはマジで気をつけてな」
「うっわ、マジその情報ありがと!気を付ける!」
「そういえば、6魔人も『光』『闇』『火』『水』『風』『土』の属性に分かれてんなぁ。偶然と言えば偶然だけど」
「ファンタジーでは良くあると言えば良くあるからね。ベタすぎて逆に見ないかもくらいの」
「そうなんだよな~」
「あたしポシェモン好きだから、属性細かく分かれてるのも好きだけど、そんくらいシンプルな方が覚えやすくって助かる~」
「それについては俺も完全に同意」
俺もポシェモンは好きだが、全部ああ細かく属性分けされてたら大変だ。
そこで少し言葉が途切れた。
沈黙によって、2人の間に冷静さが引き戻される。
「いや、つーかさ、この状況ってマジで何なんだろうな」
「……ほんとね~」
「いやぁ、えらいほんますんません」
と、急に話に割って入る声がした。
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最後までお読みいただき、ありがとうございます!
応援なにとぞよろしくお願いいたします。
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