第四章 最終決戦
第27話 ナイスパ!【※※※和彦視点】
「もう、俺たちは進むしかない」
「そうだね、ここのラスボスを倒してダンジョンそのものを制圧すれば、出られる方法がみつかるかもしれない」
和彦と春樹は今、地下十階にいた。
MPは祈念の指輪を使い、最大近くまで回復している。そのかわり、レアアイテムである指輪は壊れてしまったが、この際命がかかっているので仕方がない。
特別に豪華な扉の前に立つ。
おそらく、この先がラスボスの玄室だ。
切り落とされた春樹の腕も、和彦の回復呪文で今は復活している。
体力的にも万全であった。
ふたり視線を合わせ、うなずく。
そしてゆっくりと扉をあけた――。
そこで繰り広げられていたのは、闘いであった。
和彦から見ると、舞台のように一段高くなっている場所。
向かって右側にいるのは、三人のパーティ。
見覚えのある顔。
慎太郎、ほのか、桜子。
そして向かって左側、三人に相対しているのは、
まずは、巨大な象のゾンビ。だがその鼻はタコのように八本に分かれていて吸盤がついている。というか、タコ足そのものだ。
そんな気味の悪いキメラの背中に乗っているのは、小柄な少女。
ショートカットの黒髪で、かわいらしい顔をしているが、噂のここのラスボスだろう。
だがその恰好がちょっとおかしい。
ここのラスボスはロリータファッションと聞いていたのだが……。
今着ているのは、セクシーでウエスタンなカウガールの衣装だ。
トップスとパンツが分かれてへそ丸出しのちょっとエッチなやつで、ヒモでできたフリンジで装飾されている。
袖なしの衣装だが、なぜか左の肘にだけ黒いサポーターをつけていた。
頭にはウェスタンハットをかぶっている。
かなりの美少女だ。
彼女は人差し指と小指を突き出し、中指と薬指を折ったメロイックサインみたいなのを作ると空中に腕ごと突き上げ、
「ウィ~~~~~~~!!」
と叫んだ。
あっけにとられてその少女を眺める。
象の背にはタブレット端末が固定してあり、彼女はチラチラとその画面に視線をやっていた。
「ちゃうで。これはメロイックサインちゃうんやで。それはメタルバンドとかでよくやるやつやろ。もちろんベビメタのフォックスサインでもなければるーみっくの漫画のちゅどーんでもない。フックエムホーンズといってな、テキサス大学のサインなんや。テキサスといえばスタン・ハンセンやからな! ウィ~~~~~!」
いったいなにが起こっているんだ?
このラスボスはいったいなにをいっているんだ?
ここは山形県だぞ、テキサス大学が何の関係がある?
スタン・ハンセンって誰だ?
るーみっくって?
ちゅどーんっていったいなんのことだ?
それらは令和の高校生が知るはずもないことだった。
和彦はとにかく脳細胞をフル稼働させる。
あそこにいるのは間違いなく、俺が死に追いやったはずの慎太郎とほのかと桜子だ。
なぜあそこにいる?
無事だったのか?
いやしかし、ほのかなんてよく見たら手が白骨化しているし……。
なにがどうなってる、幻覚でも見させられているのか?
知らないうちに混乱の魔法でもかけられたか!?
と、ラスボスが和彦に顔を向け、大声でいった。
「なにやっとるんや、わが部下、和彦と春樹よ。こいつらをやっつけろ!! やっつけたらあとでごほうびに玉こんにゃくおごったる! あ、“オシドリミルク液”さんスーパーチャットありがとうございます、ラスボスさんとてもいいスタイルですね、最近僕は太って困っています。どうしたらいいですか。うん、せやな、減量食だと“沼”がおすすめや」
まさかこれ、配信中か?
このラスボス少女、配信中に俺たちのことを部下、と呼んだか?
背すじに冷たいものが走る。
下手をすると、和彦たちが世界から人類の敵扱いされてしまう。
と、そこで慎太郎が大声で叫んだ。
「アア! オマエハ、ニンゲンヲ ウラギッテ クラスメートノナカマヲ ダマシテコロシマクッタ カズヒコト ハルキ ジャナイカ!」
くそ、超棒読みじゃねーか!
グラビアアイドル上がりの声優もどきの方がまだ演技うまいぞ!
「ホントーダ! ワタシタチニ ドク イリノ ドクターパッペーヲ サシイレテコロシタカズヒコクン!」
ほのかも棒読み!
なんか二人ともチラチラ視線を和彦たちの頭上に向けるので、振り向いて見てみると、そこにはカンペが貼ってあった。
ふざけやがって!
「なんてことなのォ! クラスメートを敵に売ってぇ、ラスボスの部下にぃ! なり果てたァッ! 和彦君と春樹くぅん!? アハァ! 目を覚ましてぇ!」
桜子は逆に演技がうまくていらっとさせられた。
その桜子は片手にタブレットを持っている。
「あ、“
「こっちも配信中か、くそ、春樹、俺たちハメられてるぞ!」
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