第15話 すぴーど太郎【※※※美香子視点あり】
「いやーん、こわれちゃった。これちょっともろすぎぃ」
プレステのコントローラーでフレッシュゴーレムを操作していた桜子がぼやく。
「八体しか呼ばなかったし、あと四体しかないから大事に使えよ」
そう俺が言うと、桜子は答えて、
「はーい。次は美香子ちゃんに行こう。あの子、さっきイボイボトゲトゲがいっぱいついてた棒を私に突っ込もうとしてたんだよ、あんなのでバージン奪われたら普通に死ぬし」
まじかよ、角度で見えなかったわ。
やっぱりやべーやつらだな、こいつら。
あとバージンなのか、よかった。
うんよかったよかった。
なにがよかったのか自分でもわからんが、とにかく幼馴染の女の子が処女だと知ったら普通ほっとするもんだろ?
★
今度はこっちきやがった、と美香子は舌打ちした。
魔法のメイスを構える。
さっき春樹を床にたたきつけたあの動き、明らかにフレッシュゴーレムの使役者がかわったように思う。
私は決して油断をしない。
けん制に魔法のメイスを振る。
すると、メイスの先からファイアボールがフレッシュゴーレムに向かって飛んでいく。
一番弱い魔法だが、魔法のメイスの力でMP消費なしで連発できるのだ。
フレッシュゴーレムはそれを飛び跳ねてよける。
しかし、なんかおかしい。
ちょっと滞空時間、長すぎない⁉
それもあぐらかいたままで宙に浮いているし、おかしい。
ゴーレムなんだから当たり前だが人間にできる動きではない。
とにかく慎重に行こう。
距離を見極め、ぎりぎりフレッシュゴーレムのパンチが当たらない距離を――。
!?
フレッシュゴーレムの腕が伸びた。
ゴムのように伸びたのだ。
とんでもないリーチのパンチが美香子を襲う。
なんとかメイスでガードする。
今度は前蹴りを出すゴーレム。
やはり足が伸びて、そのありえない軌道に対応が遅れた。
「そんなの、ずる――」
ゴキン。
美香子の下あごにキックがクリーンヒットし、美香子は意識を持っていかれてその場で膝から崩れ落ちる。
このままではまずい、と本能的に感じ、意識がないながらも立ち上がるが、さらに追撃でスライディングのキックを下半身にくらった。
後頭部から床に落ちる。
これは、やばいこけ方をした、と自分でもわかった。
よろよろと立ち上がるが、頭の上をヒヨコが飛び回っているかのように頭がクラクラして、なにも考えられない。
――やばいやばいやばい!!
本能が危険信号の警鐘をガンガン鳴らす。
だが、身体が動かないのだ、どうしようもない。
次の瞬間、美香子は目の前のフレッシュゴーレムが口から炎を吹き出すのを見た。
よけられるわけがない。
その炎をまともに受ける。
全身が燃え上がる。
肉の焼けこげる臭い。
ああ、この臭い。
思い出すなあ。
いつだったか、すぴーど太郎で肉を炭になるまで何十枚も焼いたことがあった。
あんときは楽しかったなあ。
慎太郎をパシリにして何回も肉をもってこさせてさ。
和彦と春樹とで高校生だけど酒飲んで大麻入りのタバコ吸いながらバカな話をしながらずーーーーっと肉を炭にしてたんだっけ……。
肉は極限まで焦げると炭化して真っ黒になって……。
支払いは全部慎太郎にさせたんだよな……。
肉が焦げて炭になっていく臭い……。
ああ、今は、
今は、
私が、
炭だ。
皮膚が焼けこげ炭になる。
肉が焼けこげ炭になる。
骨まで焼けこげ炭になる。
脳も焼けこげ炭に……。
「
和彦の呪文詠唱が聞こえた。
焼けこげた肌が元通りになっていく。
倒れそうになるのをなんとかこらえた。
「あぶなかったー! 絶対死んだと思った、半分以上死んでた、和彦、サンキュー!」
さすが私の彼氏、いいとこで助けてくれた。
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