第12話 全世界配信

 和彦たちは吸血コウモリ(?)の大群に襲われて、ダンジョンの奥へと追い込まれた。

 とはいっても、このダンジョンは今までも何度も潜ってきたし、最深部まで到達してラスボス前の中ボスまでいけたパーティだから、特に危機感はなかった。


「くそ、せっかくいいとこだったのに……。せめて一発やってからだったらよかったのに」


 和彦が悔しそうに言う。


「ほんとだよ、コウモリごときに殺させるなんて、一番おいしいところもっていかれたね……。いまごろ桜子さんは血を吸われてミイラかな。この手で殺したかったんだけどな」


 春樹も残念そうにいった。

 ミイラどころか、今はのびのび入浴中だなんてことはもちろん和彦たちは知らない。


「なあ、美香子、俺、中途半端でイライラするからここでちょっとやらねえか」

「ここでぇ!?」


 美香子は心底いやそうな顔をして、


「帰ってからにしようよ。見てよ、私たちコウモリのフンだらけだよ」


 確かに、パーティ全員コウモリのフンまみれで、不潔きわまりない状態だった。

 と、そこにスケルトンが五匹ほどやってくるのが見えた。

 ここはまだ地下一階、弱いモンスターしか出てこない。

 ただのスケルトンなど、和彦たちの敵ではなかった。

 なんということはなく解呪して土に戻してやる。

 うん、俺たちは十分強いよな。

 和彦は自信を取り戻して、


「せっかくだからもう少し潜っていくか?」

「そうだね、今日でボスを倒しちゃってもいいかもしれない」


 ダンジョンのボスを倒せれば、それなりの報酬が手に入る。

 この間は中ボスのトロールゾンビ戦で魔法を使いまくってしまったのでMPも残っていなかったし、撤退したが、今回は直接大ボスのアンデッドキング戦に挑める。

 ほかのパーティに先んじられても腹がたつし、和彦も腹を決めて今日こそボスを倒そうと決めた。


「えー、もう今日は帰ってお風呂はいろうよー」


 そういっていやがる美香子を説き伏せて、三人はさらにダンジョンの奥を目指した。


     ★


 ちょうどそのころ、和彦や慎太郎のクラスメートたちは、突然始まった配信にくぎ付けだった。

 なにせ、最強クレリックパーティで名高い和彦たちパーティがダンジョン探索しているところを、どこから撮影しているのか、第三者視点の超高画質配信で見られるのだ。

 それも、クラスの高嶺の花的存在だった桜子まで連れて。

 どんな探索が見られるのか、みんなわくわくして見入ってたところ、いきなり桜子をレイプしようとするシーンが映ったのだった。


「え……この配信、リアルタイム? こいつらやばくね?」

「桜子ちゃんを見捨ててこいつら逃げてたんだけど……」

「やっば、サイテー」

「これ、拡散しよーぜ」


 こうして、和彦パーティ崩壊のようすは、全世界に配信されることになったのだった。




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