月の下で待っていて
堀井菖蒲
第1話 孤独なランナー
僕は走る。
広がる草原に真っ直ぐな道。でこぼこも無く、小石一つ落ちていない平坦なその道は、月に向かって伸びている。
月は丸く、大きい。
そして、血を被ったように赤い。その光はクレーターの凹凸によって濃淡を作り、真っ黒い夜空に浮んでいる。
空には、星はない。一つも、無い。
月明かりは、草原と一本の道を浮かび上がらせる。草の背丈は均一で、葉の形もみんな同じだ。「原っぱ」と聞いたら誰もが思い浮かべるような、個性のない草地がどこまでも広がっている。
道は決して曲がることも、傾斜を付けることもない。アスファルトのようなざらざらした感触も、砂地のように沈み込む感触も、足の裏に与えることはない。無機質な道は月に向かって真っ直ぐに伸び、地平線の彼方に行く先を消している。
その道を、僕はただひたすらに走っている。
たった一人で。
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