オストの風
オストの風
──最高の天気!──
空は青く遠くまで澄み渡り、雲一つない快晴だった。
私は一通りの泊まり込みでの公務を終え、一睡もせずに家族と計画と立てていた探索の準備をしていた。
道具袋の確認をする。治療薬・魔法薬はあるか・・・装備品に不備はないか・・・非常食は十分にあるか・・。
・・・そして探索の計画は十分か・・。
「・・ふふ・・」
楽しい・・。
楽しい冒険だ・・。
最高に気分が高揚する中、東風が・・春風が吹き抜ける。かすかな草木や花の匂いをただよわせて。
──最高の気分だ───
私は青空の中、眩い太陽の下で伸びをする。
***
家の前で並んだ家族たちに私は声を上げる。
「点呼いくわよ?」
「えー、点呼意味ないじゃないっすかーグレイねぇ!」
すぐに文句を言うのは下の妹のアクア。
「ふふふ、そうよ。ねぇ様」
そして幸せそうに笑顔を向ける上の妹シィタ。
「お母さん!はやくいこ!準備ばっちりだよ!」
元気に意気揚々にはしゃぐ上の娘のセタ。
「楽しみだねママ」
少し興奮に小さく声を上げる下の妹のナナシー。
「・・・・」
家族みんなの息が合わない。出発の出だしだというのに・・がっくりと肩を降ろすグレイ。
家の戸締まりを終え、先日冒険者ギルドで受注した大口の依頼へ意気揚々と行こうとおもったのだが、まぁこれもいつもの事だった。
家族みんなけっこう気ままで下の妹は言うことを聞かない事はしばしばある。
上の妹、娘たちは素直だが。
「ま・・・ とにかく、今日は久々の冒険だよ!最近なかなか家にもどれないし、計画もなかなか合わなかったからね。それと、みんなの力量もいない間にどうかわったかも知りたいし、力試しということで!」
「探検家の腕がなるっす!」
腕を大きくあげるアクアだが・・。
「そんなこと言ってアクアったら町にお小遣い稼ぎで働いて剣術のほう全然やってなかったじゃない」
と、家で常に家事をしてたシィタが横やりをいれる。
「う・・・・ それチクるかよ・・シィタねぇ・・・」
「さぼってたよねー」
「私達はしっかり勉強してたよ?」
「うぅ・・おまえら・・・」
家族同士で内輪もめが始まり、さっぱり進まない。
しかしこのやりとりが見ていて楽しい。なぜならひさびさの家族団らんの冒険だからだ。
「と、とにかく、しゅっぱーつ!」
『はい!』
みなみな一斉に挨拶したあとようやく冒険に出発。東方にある目的地に出立した。
また・・ふと、空を見上げる。本当に春風が気持ちいい。
冒険の出立には本当にいい天気だ。
いざ迎えこの先に・・この未来に。
みな血のつながりのない家族だけど・・繋がった経緯は後ほどゆっくりと語るとしよう・・。
***
セタが私に見上げながら声をかける。
「ねぇ、お母さん、次の遺跡強い相手いるかなー」
「んー どうだろうねぇ。この難易度程度だったから肩慣らし程度かなぁ」
それを聞いたアクアが鼻息荒げに身を寄せる。
「まーじっすかー。 いいレアアイテムが入手できるといいんっすけどねー」
笑顔で前を優しくシイタは声を上げる。
「まぁ、みんなが怪我しないことが一番いいわよ」
「ママと一緒だから、楽しみ♪うふふ!」
普段おとなしげなナナシーも楽しみそうだった。
と、団らんの会話を会話をしながら坂を下り、森へ・・目的地へ向かうグレイ達。
─── 本当に 東風が気持ちいい・・・
明日もいい風が吹くといいな・・・・ ───
と、グレイは思いつつ、みんなで談笑しながら家のある丘を下るのであった。
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