冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
第1話
「アイリス! 貴様ぁ! 嫉妬に狂ってこのサリアを散々虐めていたそうだなぁ!? しかもサリアが自分より身分が低いからと蔑んで! 貴様のように性根の腐った女など、この高貴な俺様には相応しくない! よってこの場で婚約破棄を申し渡す! 何か言い分があるなら言ってみろ!」
今日は明日から始まる夏休みを前に、学園恒例の舞踏会が講堂で開かれていた。
その冒頭、3人の取り巻きを従えて壇上に上がったこの国の王太子イーサンは、自身の婚約者である公爵令嬢のアイリスを見下ろし、下卑た嗤いを浮かべながら言い放った。彼の取り巻き3人も同じように下卑たニヤニヤ嗤いを浮かべている。
そしてイーサンの傍らには、彼に肩を抱かれながら撓垂れ掛かっている儚げな少女の姿があった。
男爵令嬢のサリアである。ここ最近、イーサンの周りを良くウロチョロしていると噂になっていた。
名指しされたアイリスは顔色一つ変えることなく反論した。
「身に覚えがありませんわ」
「貴様ぁ! 惚ける気かぁ!」
イーサンが激昂する。
「そもそも虐める理由がありませんもの。どうして私がそんなことをする必要がありますの?」
「貴様がサリアに嫉妬したからだろうがぁ!」
「嫉妬!? 誰が誰に嫉妬するんですの!?」
アイリスは本気で分からないというように首を捻った。イーサンはますます猛り立ち、唾を飛ばしながら叫ぶ。
「俺とサリアが仲良くしているのが気に食わなかったから、貴様は嫉妬したんだろうがぁ!」
「まぁ、どうして私が嫉妬しますの!? 殿下が誰と仲良くされていようと、私にはなんの関係もありませんわ」
ここでイーサンはちょっと怯んだ。
「ぬなっ!? 貴様は俺の婚約者だろうが!?」
「えぇ、大変不本意ですが...それが何か!?」
アイリスは本当に嫌そうにそう言った。それに気付かずイーサンは続ける。
「俺に惚れてるからサリアに嫉妬したんじゃないのか!?」
「いいえ微塵も」
「ぬあっ!?」
イーサンは思ってもいなかったのか、間抜けな声を上げた。
「今は病床に伏せっておられる国王陛下が頭を下げて来られたから、仕方なく...本当に仕方なく婚約を結んであげたんですよ。そんなことも知らなかったんですか?」
アイリスは仕方なくという言葉を強調した。
「なあっ!? 言うに事欠いて仕方なくだとぉ! 婚約してあげただとぉ! 不敬だぞ貴様! 許さんぞ!」
イーサンはますます激昂した。
「許さなかったらどうするおつもりなんです?」
「今すぐ謝罪しろ! さもなくば国外追放を言い渡す!」
「そうですか。では出て行きます」
アイリスは平然と言い放ったのだった。
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