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月曜日、10月1日・・・。




「黒住さん、おはようございます!」




「黒住さん、おはようございま~す!!」




会社のビルに入ると、沢山の社員達が笑顔で挨拶をしてくる。

それに私も笑顔で挨拶をしていく。




そしてエレベーターを降りると、私よりも少し年上であろう男性社員が隣に並んできた。




「桃子さん、おはようございます。」




「おはようございます。」




「聞きましたよ、結婚式でブーケをキャッチしたらしいですね。」




「そうですね、幸せをお裾分けして貰いました。」




「恋人はまだいませんか?」




「いませんね。」




「僕、やっぱりダメですかね?

何度もフラれてますけど、桃子さんのことまだ好きなんです。」




そう言ってきた男性社員の顔を歩きながら見上げる。

こんなことは社内の男性なら何人も言ってくるので、顔をよく確認していなかったから。




顔を確認した後、私は困った顔で笑う。




「お父様やお母様、本当に大丈夫なんですか?

夜間の高校に通っていたような高卒なうえ、子どもが2人もいるような私が相手で、ご両親は本当に大丈夫なんですか?」




「結婚よりもまず先に、お付き合いしてみませんと。

お付き合いをして、その先に結婚があると僕は思っているので。」




「私は子どもが1番なんですよね。

私は子どものことが1番好きなので。

なので、そういったことは慎重になります。

申し訳ありません。」




そう答えた私に、男性社員は残念そうな顔をして“またチャレンジします”と言って去っていった。




残念そうな顔をしているけれど、ギラギラとした顔で。




死神である私を利用しようとしている顔で。




私は死神と呼ばれている女。

私に攻撃をしてきた人間は降格、または支社か子会社へ異動となる。

でも、私と仲良くなった人間は軒並み昇進していく。

長峰や宝田もその例。




そんな本当のことが噂となっているので、今では表面上は取り繕っている社員が大多数。

そして、昇進を狙っている男性社員は私と恋仲になろうとしてくる。

シングルで子持ちの女にはそれも有効だと思われているらしい。




私のことを本当に好きではないのにそんなことまでしてくる男性社員達には、ある意味尊敬をする。




そんなことを考えながら、会社の廊下を歩いていく。

そして、企画部のフロアへ・・・。




先週の金曜日までいた企画部のフロアを通りすぎ・・・




通りすぎて、着いた先は・・・




人事部の部屋・・・。




その前に立ち、気を引き締める・・・。




気を引き締めて、人事部の扉を・・・




開けた・・・。




「おはようございます!」




.




人事部の部長、50代の佐竹部長が私の隣に立ち口を開いた。




「今日付けで企画部から人事部に異動になった黒住さんです。

企画部でも課長職でしたが、人事部でも課長職に就いて貰うことになりました。

黒住さんには社内組織の構築・再編、人材育成担当の課長としてみんなの上に立って貰います。

黒住さん、一言お願いします。」




「企画部で課長をしておりました黒住です。

人事部への配属は初めてなので、課長ですが分からないことも多いかと思います。

初心に戻り、気を引き締めて参りますのでよろしくお願い致します。」




そう言ってから、深くお辞儀をした。




私の頭の上には大きな拍手が・・・。




ゆっくりと顔を上げると、人事部のみんなが笑顔で拍手をしている・・・。




本当か嘘かまだ判断出来ないような笑顔で・・・。




段ボールに入れていた物を用意されていたデスクに片付けていく。

私なりに、片付けていく。




そしたら・・・




「僕にも協力させてください、黒住さん。」




片付けるだけなのにこんな声を掛けてきたのは、ホテルでそういうことをしてきた男の子・・・。

この男の子とも同じ部署になってしまったと思うと、苦笑いしか出来ない。




「片付けるだけだから私1人で大丈夫。」




そう言ったのに・・・




男の子は私よりもテキパキと荷物を片付けていく・・・。




それも、使いやすいように・・・。




私が使いやすいように、一瞬で片付けてしまった・・・。




それにも苦笑いをしながら、お礼を伝える。




「ありがとう。」




「黒住さん、仕事は出来るのに片付けは出来ないって企画部の人達笑ってましたからね。」




「・・・そんなこと言われてたの、私?」




「そうっすね~。」




男の子が面白そうな顔で私に笑い掛けてきて、その笑顔を見上げながら私も少し笑った。




そんな私を男の子が真剣な顔で見下ろしてきて・・・




「僕、黒住さんのことが好きなので、人事部に来てくれて嬉しいです。」




「・・・誰が私を人事部に異動させたんだろうね~。

足手まといにならないようにするよ。

そんなことまで言ってくれる若い男の子に幻滅されるのは惜しいしね!」




そう言って男の子に笑うと・・・




人事部内の女の子達は明らかに不満タラタラな顔で私の方を見てきていた。

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