第4話 初めましてだいだら様 Scene4
『で、何しに来たんだよ。』
少し不貞腐れながら、だいだらをイスから降ろし
空いたイスに今度は、俺が腰を掛け脚を組む。
目線はまだ、だいだらより少し高い。
『冷やかしなら出てけ、俺は忙しいんだ』
イライラからか少し口調が強くなる。
だいだらは、物怖じせず澄ました顔のまま。
「まぁ、さぞや忙しくしておったのじゃろうのぉ。お主の様(さま)を見れば一目瞭然じゃわい。」
『ぐぬぬ。』
強がってはみているものの、俺の苦虫を噛み潰したような表情は恐らくバレているだろう。
『ホントに、用が無いなら出て行ってくれ』
「まぁ、そう急かすな。とおるよ。」
「仕事じゃ、お主も来るかの?」
「まぁ、ムリにとは言わんぞ。先刻言うてた通り、お主にはやることがある様じゃからな」
くるりと向きを反転し、だいだらはドアの方へと歩き出した。
(最後まで煽ってくるじゃん、この小さい神様)
心の中でつぶやく。
だいだらは、一瞬立ち止まると振り向くこと無く問う。
「で?どうするんじゃ」
俺は、ふざけた表情を一切消して真剣に答える。
『アホか。』
『行くに決まってんだろ』
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
その後、だいだらに連れて来られたのは神社から直線で3キロ程離れた工事現場ような場所だった。
あと連れて来られたと言う表現に少し納得いかないので補足すると。
実際に自転車を爆走させてきたのは俺だけで、だいだらは自転車カゴにお尻をスッポリと入れ、綺麗に収まりむしろくつろいでいた。
道中、今回の仕事の説明をしてくれていた事は感謝するが、途中から「遅い遅い」だの「飛ばせ飛ばせー」「童貞の脚力見せてみろー!」などと騒いでいたので数回頭を小突いてやった。
この工事現場は、国道の山道を少し登ったところから横道に逸れ、少し森に入った所にあった。
森の入口付近には、野生動物を注意喚起する立て札やいつからそこにあったのか分からなたい文字の掠れた看板がいくつか立てられていた。
この町も、最近はでは駅前開発や大型ショッピングモール建設で、発展してきたかと思っていたが少し町から外れると改めて田舎町なのだと実感する。
辺りは一面、木々に囲まれている中この工事現場だけが場違いのように整地され更地となっていた。
既に、重機の類いは数台停まってるだけで、恐らくこれからなんらかの施設を作るため、また別の新たな重機などが入れ代わり入ってくるのだろう。
どうやらここが今回の仕事の現場となるようだ。
道中、自転車カゴで悠々と説明するだいだらの話しによると、この工事現場で事故が多発してるという話だ。1回や2回なら偶然かもしれないが、その数12回。大小様々な事故が短期間で発生しているとか。
さすがに気味が悪くなり、現場の頭領が山神神社に参拝に来たらしい。
「おい、いつまで呆けてるつもりじゃ」
と、だいだらに言われ意識を戻す。
『なぁ ここ、もともと何かあったのか?』
「ほほぉ。何故そう思った?」
だいだらは、目を細め少し笑う。笑う?少し嬉しそうな表情をした。
『いや、悪い。何となくそう思っただけだ』
「なんじゃ。」
今度は、少しつまらなそうな顔をする。
「まあ良い。とおるよ、準備は出来とるか?」
俺は、軽く屈伸しながら返す。
『問題ない。いつでもいける。』
「じゃあ、前回のおさらいじゃ。おぬしで見つけてみろ」
『わかった。今日は邪魔するなよ』
「ワシが、いつとおるの邪魔したというじゃー!あと今日は。ってなんじゃ!いつも邪魔しとみたいに、、、、ガミガミガミガミ、、」
俺は大きく息を吸い込み目を閉じ意識を集中する。
近くに、だいだらが居るとやはり安心する。
更に集中する。五感を抑え込み、第六感を研ぎ澄まし更にその先へ。見えざる者を捉えるために。
目を閉じているが、周囲の空間を立体的に感じ取とれる。
数台の重機。
風に揺れる木々。
落ちる木の葉。
一人騒いでいる だいだら。
周囲を目で見るより詳しく。空間を透過するように探る。
そして、『見つけた。』
ゆっくりと目を開き、対象物を逃さぬようしっかりと捉える。
『正面右側の木々に後ろ。たぶん、向こうはこっちに気づいてる。』
「うむ、上出来じゃ」
だいだらは、満足そうな表情を浮かべ組んでいた両腕を開き。
「どれ、引き釣り出しは妾がやってやるかの」
『いや、俺がやる。邪魔しないって約束だろ』
俺は怪訝な顔でだいだらを見下ろす。
「まあ、そう言うで無い。少し気が変わってのぉ。あと、おぬしにやらせると手荒になって敵わんからの。」
だいだらは、こっちの静止を軽く流すと数歩前にでて唱えだす。
「誘いや誘い、踊れや踊れ、哀れな御霊を誘って踊れ。だいだらぼっちの名のもとに神柱もって囲いとせよ。」
すると、俺たち周辺のみを月明かりが一層激しく照らし出す。
上空から丸太の様な木の柱が何本も降り注ぐ。
ズドン、ズドン、ズドン・・・と、あっという間に
周辺一帯を囲う様に突き刺さった。
「神柱を使った結界じゃ。神威を帯びた柱だからのヤツらにはなかなか堪える。あと、誘いの言霊もサービスしておるから直に向こうから出てくるじゃろ」
改めて、コイツの・・・だいだらの神威を目の当たりにすると人間を超越した存在だと思い知らされる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます