拳に愛を込めて
Bu-cha
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「おはようございます!」
午後の人事部の部屋の空気を、覇気のある男性の声が今日も強く振動させる。
私はそれに控えめに返事をしたけど、他の社員さん達の声に埋もれてしまった。
そんな私のデスクに真っ直ぐと歩いてきた男性・・・。
正社員でもなくバイトでもない男性・・・。
人事部内でただ1人の派遣社員。
今年25歳の派遣さんが新卒の私の元へ。
デスクも用意されていない派遣さんが、私の椅子の横に立って爽やかな笑顔で笑っている。
「的場(まとば)さん、日程調整の返信来てますか?」
「はい、30人以上から返信が来ています。
15分間隔で日程調整をしていっています。」
「いいですね、お願いします。
22時以降の面接は一旦僕が対応しますので、深夜でも早朝でも面接ガンガン入れてください。」
今日も派遣さんがそんなことを言ってくる。
「派遣さんだけにお願いするわけにいきませんので、私もちゃんと対応します。」
この人がうちの会社・・・加賀製薬の人事部に派遣されてから数日。
11月に入り突然来たこの人のお陰で、私は毎日寝不足。
人事部長からは仮眠を取るよう言われているけど、日中も土日も深夜や早朝も関係なく面接が入っている。
この人の補佐として、そしてこの人から色々と勉強するように言われているので面接に同席している。
今年新卒で入社をした私でも、こんな面接の日程調整が普通でないことは分かる。
派遣さんも数日間ほとんど眠れていないはずなのに、今日も覇気のある爽やかな笑顔を私に向けてくる。
そんな爽やかな笑顔に“負けていられない”とは思うので、気付かれないように闘志を燃やしこの人に微笑み返した。
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