AIといっしょにファンタジー書く

緑窓六角祭

AIといっしょにファンタジー書く

[1] 死

 その男、名は半助、姓は持たない。人里離れた山奥にひとりで暮らしている。

 ある日のこと、山菜採りに出かけたきり彼は帰ってこなかった。心配した村人たちが探しに行くと、崖の下で死んでいる半助が見つかった。


 この小説は筆者とAIのべりすとが交互に書いている。

 細かい設定は随時変更していくのでここでは言及しない。いずれ語るかもしれないし、語らないかもしれない。


 半助には妻がいた。名前は花子という。

 二人は仲睦まじく暮らしていたのだが、あるとき戦がやってきた。花子はばらばらに引き裂かれた。

 半助は悲しみに暮れたが、いつまでも泣いてばかりはいられない。彼は必死になって働いた。

 働いて働いて働いていきついた先がこの顛末である。彼をよく知る人々はねんごろに半助を弔ってやった。

 周囲の人たちは半助にその程度には借りがあったし、そしてその葬式によって借りは返せたと思った。


 こうして半助は死んだ――はずだった。

 彼は首の骨が折れて崖の下に倒れ伏す自分を空の上から眺めていた。それからその死体が村人たちに発見されて、丁寧に葬られるさまもずっと眺めていた。

 死ぬのは初めてだった。だから死んで葬式が終わるまでそのようにじっと見ているものだと、それが普通なのだと思った。


 葬儀を見届けたあと、気がつくと彼はまたあの場所に立っていた。そこは見慣れた場所であった。

 自分が生まれ育った家だ。家の前には小さな墓がある。それは妻のものであった。妻はここに埋められているのだ。

 その隣にはたった今掘り返されたばかりの穴がひとつ開いている。

 半助は自分の手を見た。先ほどまでは人間の姿であったが今は違う。

 指の長い黒い毛むくじゃらの怪物の手になっていた。土まみれであった。

 そこに来て初めて半助はどうやら自分の置かれた状態は死とはちょっと違うらしいことに気づいた。


 自分は妖怪になったようだ。

 妖怪? 妖怪とは何か? よくわからない。

 けれどもよくわからないものをまとめて妖怪と呼んでいるのだから、よくわからない自分は妖怪であっている。

 妖怪になったことについて半助は格別の感情を抱かなかった。それはそういうものだとすぐに納得できた。

 自己というのはそのようなものなのかもしれない、あるいは彼が一度死を自覚したせいなのかもしれなかった。


 遠く村を見やる。てっぺんにのぼった日の下、小さな人々が畑仕事に精を出している。

 その中に混じっていたはずの半助の姿はない。自分は彼らとは違う存在なのだと理解する。

 悲しみもない。わざわざ近づいて自分は化け物なのだと確認する手順を踏む必要もなかった。

「おーい」

 声が聞こえてきた。

「おおい」

 誰かが呼んでいる。

「おおーい!」

 そいつはひょいと半助の前に現れた。


 背の高い痩せぎすの男である。頭巾を被っていて顔はよく見えない。

 男は片手をあげて言った。

「こんにちは」

「……誰だ?」

「同類だよ」

 言いながら男が頭巾をちらりとめくれば獣の顔が現れた。犬か狐のような耳が見える。

「私はケモノガミだ。お前さんは妖怪だろう? といってもまだなったばかりで右も左もわからない」

「そうだ。そのとおりだ。つい今しがた自分が妖怪になったことに気づいばかりだ」

「自覚があるのか。それなら多少は話が早くてこちらとしても助かるよ」

 ケモノガミは半助に手をさしのべてくる。

 握手を求めているのだとわかるのに時間がかかった。その動作は妖怪には不似合いに感じられた。


 しかし半助はその手を握りかえすことにした。

「よろしく頼む」

「ああ、よろしく」

 ケモノガミは半助のことをよく知っているようだった。妖怪のことは妖怪がよくわかっているということだろうか。

 いやだとしたら俺にも彼のことがよくわかるはずで、それがよくわかないのはまだ自分が妖怪になりたてだからなのか。


 考えたところでわからないことというのはある。

 半助はそうした時にとりあえず動くことを信条にしていた。それは妖怪になったところで変わらなかった。

「俺はどうすればいい?」

 ケモノガミに単刀直入に尋ねた。

「私についてきてくれればいい」

 そう言って彼は歩き出したので半助は素直に従うことにした。


 山道を歩く間、ふたりは何も喋らなかった。会話の糸口が掴めなかったという方が正しい。

 半助は自分がこれから何をすべきかもわかっていないのだし、そもそも妖怪がどういうものかすら知らない。

 ケモノガミは自分より先に妖怪になっているから何かを知っているはずだが、それを語ろうとしない。

 道なき道を行く。木の葉がさやぐ音が聞こえる。鳥が鳴いている。

 よく知っている山だった。そのはずだった。けれども踏み入れば踏み入るほどに知らない山に変わっていった。


 やがて開けた場所に出た。そこには小屋が建っている。

 小ぢんまりとした平屋で、古びていてあちこちが傷んでいる。

 ケモノガミは戸を開けて中に入る。続いて半助も入る。

 そこは居間になっていた。畳が敷かれてあって、座布団がふたつ並べて置いてあった。

 奥の方では囲炉裏が燃えている。

 そのそばには老人がいた。枯れ枝のように細い身体をした老人だった。

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