ダンジョンの奥底で錬金術師の店を営んでいたらいつの間にか文明を築いちゃってました 〜 客人は殆ど来ませんが、周りにモンスターが沢山いるのであんま問題無し! 〜

鬼来 菊

プロローグ

『ダンジョン』


 それは、日本に突如として出現した謎の構造物である。


 中には身の毛もよだつ様なモンスター達と心を奪われる様な宝物。


 入った瞬間にゲームの様な職業ジョブやスキルが付与されるという謎の現象。


 人々は、そのダンジョンに夢と希望を抱いて入っていった。


 そしていつしか、そのダンジョンに入って稼ぐ者を『探索者』と呼ばれる様になった。


 探索者が仕事をし続けて約10年が経った頃、こんな噂が広まった。


『このダンジョンの奥底には、凄腕の錬金術師が店を営んでいるらしい』


 錬金術師なんて職業は誰も見た事がない。


 探索者達はその錬金術師の店へ行こうとしたが……


 誰一人として行けなかった。


 だが、仮に実在しなかったとしても、ダンジョンに潜る目的になるから良いだろうという事で、いつしか子供に教えられる御伽話おとぎばなしとなったのだった――。



          ∞∞∞



「ぶえっくしょい!」


 あ゛ぁ〜……最近花粉がやべぇ。


 いつ客が来るかも分からんのに……。


「ゲコ!」

「あっ、らっしゃい」


 このかえるのモンスターの名前は『ゲコ』


 そのまんまの奴だ。


 そして俺の店のお得意様でもある。


「ゲコゲコ? ゲーコゲコ!」

「そうそう最近ライラの木の花粉やばいだろ? あれのせい」


「ゲコゲコ」

「ご心配どーも。そんで、今日は何を買いに来たんだ?」


「ゲコゲコゲコ! ゲコ!」

「あぁー、あの素材か? ちょっと待ってろ」


 奥にあるたなの中を探す。


「あーあったあった」


 そう言って渡す。


「ゲコ!」

「はい確かに140ゲグルだ。まいだぁーりー」


 ゲコはそのまま跳ねて帰って行った。


 はぁ〜……やっぱ花粉症辛いわ。


 素材を出すのが少し遅れちまったよ。


 後で治す薬を錬金しておこう。


 そう思いながら受付で鼻をかむ。


 そして


「スゥー」


 とキセルを吸う。


「ぷっはぁ〜……やっぱこれだけはやめらんねぇ」


 そう言ってもう一吸いした。




 ここはダンジョンの最下層……に行くちょっと手前。


 ここでこの先に行く探索者達に身支度をして欲しくて店を建てたが……。


 誰も来ねぇ。


 むしろさっきの様にモンスターが買っていく様になっちまった。


 というかモンスターにあんな知性あるんだな。


 この店には殆ど客〝人〟は来ない。


 だが、客モンスター……いや、少しダサいな。


 ……でも思いつかねぇしいいや。


 客モンなら沢山来る。


 だからここで何だかんだ生活はできる。


 お金払ってくれるし。









 そう、これは、一人のあまりにも強すぎる錬金術師が、誰にも気づかれずにこんな奥底に行ってしまって店を営んでいたら、なんかモンスターの文明が出来ちゃってた話である。

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