『鬼のみにもなってください。』

やましん(テンパー)

第1話 『端は危険なのに』


 『これは、フィクションです。日本の、一休さんの昔ばなしを下敷きにしています。』




 みなさん。いわゆる鬼のみにもなってください。


 確かに、各地で、神様として崇められる場合もありますが、大体は、怖られる存在です。


 しかし、ぼくの場合は、なかり事情が異なります。


 そもそも、火星人は、タコさんではなく、地球の鬼さんや、悪魔さんに、見た目は、近い姿でした。火星人がモデルになったという、オカルト説もありました。映画にもなっていますよ。『火星人地球大襲撃。QUATERMASS AND THE PIT』です。(この映画は実在です。)


 それが、地球に移住して以降、永い年月の中で、変化したのです。


 女王さまなどの、一部のエリートは、鬼の姿を維持しながら、普段は地球人と同じ姿になっていて、必要なときには、本来の姿になります。


 ただし、現在の王女さまなど含めて、謎はたくさんあるのですが。


 このお話しは、昔ばなしですが、ぼくがかつて、実際に見聞きしたものです。


 あ、ぼくは、地球人の姿になれないのです。


 しかし、ある功績によりまして、女王さまのお褒めに与りまして、不死化されました。


 二千年くらい前までは、鬼の姿をしていても、地球人の姿をしていても、わりあい、どこでも、問題にはならなかったのです。


 それが、いまは、そうは行きません。


 タルレジャ王国以外では、


 各国で、様々なシチュエーションでの平等を義務化する法律が出来てきていますが、元火星人、つまり、鬼の扱いは、あまり決まっていません。


 タルレジャ王国の北島は、いわば、完全平等社会です。ただし、南島があるから成り立っているのですが。


 まあ、だから、いまも、そこで、ひっそりと、生きております。



           👹


 いまは、むかし。


 大体は、2000年くらい前です。


 サン・キ・ユーさんという、お坊様の見習いが、北島におりました。


 のちに、タルレジャ教団の偉いお坊様になりましたが。


 しかし、子供時代は、わりあいに、失敗ばかりしていて、『とんま小坊主』なんていわれていました。


 当時の国王は、パル25世でした。


 もちろん、初代国王、『パルくん』の子孫です。


 『くん』をつけて呼ばれる、タルレジャ王国の国王は、他にはありません。


 小さい頃から、初代第1の巫女、ヘレナさまのお気に入りで、『パルくん』と呼ばれていたからです。


 その『パル25世』は、たいへんに、お茶目な王様で、冗談好きでした。


 娘さんには、こちらもヘレナさまという、それはもう、利発な王女さまがありました。


 王女さまや、女王さまは、伝統的に、ヘレナさまか、ルイーザさま、ヘネシーさまです。伝説の火星の女王ヘレナさまは、初代巫女のヘレナさまのことなのですが、宗教的には、ちょっと分裂しています。


 なんにしても、出来ないことはない、という、王女さまで、相対性理論みないなことも、すでに良く知っていたらしいですし、宇宙船も、しっかりもっていました。


 王国には、テレビも、コンピューターも、すでにありました。


 火星文明から受け継いだからです。


 さて、ある日、サン・キ・ユーさんは、お城の前の橋にやってきました。

 

 その橋は、今で言えば、文化財みたいな橋で、一万年前に作られたとされます。


 もちろん、いまも、あります。


 しかし、この時は、大雨でちょっと壊れかけていたらしいです。


 そこで、国王さまは、『このはしわたるべからず。』と、書いた看板を建てて、チェーンをひいていたそうです。


 ところが、サン・キ・ユーさんは、国王や、ヘレナさまに認めてもらいたくて、わざわざ、『はしがダメなら、まん中ならよいのでしょう。』と言って、チェーンを越えて、渡り始めました。


 それで、真ん中あたりで、橋が落ちたのです。


 たいへんです。


 レスキュー隊員だったぼくは、増水した川に入り、命がけで、サン・キ・ユーさんを助けたのです。


 それなのに、このことは、いつの間にか、サン・キ・ユーさんの手柄ばなしになりました。



 鬼のみにもなってください。



         👹

 


 


 


 


 

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