非モテの俺が可愛い過ぎる見た目の後輩に毎日愛の告白をされている。~愛に性別は関係ないですよ!!先輩好きです!!~

味のないお茶

第一章

~プロローグ~

 

 ~プロローグ~





「先輩好きです!!」


 ある日の放課後。演劇部の部室で、俺は後輩に告白をされた。


「そうか。ありがとう、嬉しいよ。でもごめんな、俺はお前の気持ちには応えられない」


 俺がそう言うと、後輩はかなり不満そうな表情で言葉を返した。


「何でですか!?こんな可愛い子に告白されてるんですよ!!先輩の人生では後にも先にもこんなことはありませんよ!!」


 そうだな。確かにお前は『可愛い見た目』をしてるよな。


 艶のある亜麻色の髪の毛は腰まで伸ばしている。

 顔立ちは大きな瞳と小さな鼻。

 薄紅色の唇には薄くリップを塗っている。


 小柄な体型はまるで小動物のような愛らしさがある。


「でもな……お前『男』じゃないか……」


 そう。こいつはこんな見た目をしているけど、性別は立派な『男』なんだよな……


 俺がそう言うと、後輩はため息をつきながら言葉を返してくる。


「はぁ……何を言ってるんですか先輩。今の時代では同性愛には何の問題もないですよ。一見民主党の人達も言ってるじゃないですか。ジェンダー平等です。同性婚万歳です!!」

「そうは言ってもだな。生き物としては子孫を残すべきだと俺は思うんだよ」


「ダメですよ先輩!!子孫を残せないなら同性愛はするべきでは無い。なんてのは忌むべき思考回路ですよ!!」

「それでもさ、今は少子化が進んでるわけだ。やはり子供を作るのはもはや国民の義務だろ?」


「それは女性に対しての差別発言ですよ!!女に子供を作れっていうのは政治家が言ったら辞職ものです!!」

「そ、そうか……でも、俺は議員じゃないから……」


「そもそも先輩!!大事なことを忘れてませんか!?」

「……え?」


 首を傾げる俺に、後輩がドヤ顔で現実を突きつけてきた。


「先輩に彼女が出来て、結婚して、子供を残す。そんな奇跡は起きませんよ!!」

「失礼なことを言う後輩だな!!」


「そう考えると、ここで私とお付き合いをするのは先輩としても良いことでは無いですか?」

「いやいや……それはどうだろうか……」


「先輩が好きな漫画の話も出来ます。こうして楽しくお話も出来ます。そんじょそこらの女の子より可愛い自信もありますよ!!」

「そ、そうだな……」


 そこまで捲し立てたあと、後輩はひと息ついてから話を続けた。


「まぁ、先輩の気持ちもわからないわけではないですよ?」

「そ、そうか……」


「同性愛にはまだまだ障害が多いですからね。世間からの風当たりも強いです。こればかりは仕方の無いことだと思ってます」

「…………後輩」


 後輩はそう言うと、軽く部室の窓から外を見た。


「私は身体は男ですけど、心は女です。トランスジェンダーってやつですね」

「お前を一目見て『男だ』ってわかるやつはなかなか居ないとは思うけどな」


『こんなに可愛い子が女の子のはずが無い!!』


 なんて文言が一昔前に流行ったような気がしたけどな。


「ですが、私は自分のこの見た目が好きです。なので、おちんちんがついてるからお得だと思いませんか?」

「そういうことは言わないで欲しいかな!!」


 後輩の見た目で『おちんちん』とか言わないで欲しいかな!!


「それに、先輩は同性愛は子孫を残せない。そう言ってましたね?」

「そ、そうだな……」


「でも、言い替えるなら『避妊をしなくても性行為が出来る』って事です!!生で中出しし放題です!!」

「なんてことを言ってるのかな君は!!??」


「どうですか!?こんなにも先輩が大好きな可愛い子にナニをしてもいいんですよ??」


 机をバン!!と叩く後輩。

 ダメだな……言い返せない。


 俺の『負け』だな。


「はぁ……わかったよ。今日も俺の『負け』だよ」



 俺のその言葉に後輩はニヤリと笑った。



「やりました。これで私の五連勝ですね!!」


 そう、これは即興の『エチュード』

 どちらかが言い返せなくなったらおしまい。


 今日で俺の五連敗だ。


「さて、そろそろ良い時間だから帰るか」


 外を見ると夕暮れに差し掛かっていた。


 後輩は男だが、女の子のような見た目をしてる。


 犯罪に巻き込まれる可能性だってあるからな。


「駅まで送るよ」

「ありがとうございます!!」


 後輩はそう言うと、ふわりと笑って俺の手を取った。


「えへへ……幸せです」

「そうか、それは良かったよ」


 勝負に負けたら勝った方の言うことを一個聞く。

 これは最初の勝負で負けたときにいわれたこと。


『手を繋いで帰りたい』


 期間は設けられなかったので、半永久的にだな。


 まぁ、俺としても後輩と手を繋いでいると幸せな気持ちになれるのから、ウィン・ウィンの関係ってやつだな。





 学校を後にして、後輩を駅まで送る。


 自転車通学の俺は片方の手で自転車を押して、もう片方の手を後輩と繋いで歩いていると、男性からは嫉妬の視線を感じる。


 後輩は男子用の制服ではなく、女子用の制服を着ている。


 つまり、スカートだ。


 丁寧に折りたたまれたミニのスカートからは、後輩の白くて綺麗な脚が惜しげも無く晒されている。


 はぁ……こいつは男なんだけどな。


 なんて思っていると、駅へと辿り着く。


「はぁ……残念ですがここでお別れですね」

「また明日があるだろ」


 俺がそう言うと、後輩は嬉しそうに笑った。


「そうですね!!私が行かないと部室には先輩独りですからね!!」


 後輩はそう言うと、俺から手を離す。


 名残惜しいような気持ちになったが、俺はそれを我慢した。


「今日も私の勝ちでしたからね!!先輩の罰ゲームは明日の部活の時に発表します!!」

「あはは。お手柔らかに頼むよ」


 本当に、性別なんか関係なく、後輩と一緒に居ると幸せな気持ちになれるよな。




 そして、俺の目を見ながら満面の笑みで俺に告白をした。





「先輩好きです!!」

「はいはい。俺も好きだよ、後輩」

「むー!!おざなりですね!!そんなんじゃときめかないですよ!!」

「ほら、早くしないと電車に乗り遅れるぞ」

「……わかりました。それじゃあまた明日です!!」


 後輩はそう言うと手を振りながら駅の中へと消えて行った。


「本当に……心臓に悪いんだよ……」


 大きく脈打つ心臓に、俺は小さくそう呟いた。

『男』だとは言っても、後輩の見た目はめちゃくちゃ可愛い女の子にしか見えない。

 そんな子に毎日『好きだ』と言われる身にもなって欲しい……


 これが俺、山瀬拓也やませたくやと可愛すぎる見た目の後輩、美澄花梨みすみかりんの日常だ。


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