第2話、優しい約束

星の瞬きで世界が埋め尽くされて、次に起きたのは、雲の上だった。


子供と観に行ったドラえもんと雲の王国みたいな場所で、俺はそいつと出会った。


「こんにちは、お兄さん」


南の方の特徴が入った、けど全く特徴がない部下によく似た話し方をする女が1人、俺の前にいた。


「誰?」

「ん?いや、お兄さんが暇だ、っていうので楽しませてみようかな、と」

「それ、答えになってないよね」

「そういう言い方するからロジハラって言われるんですよ?雑談一つぐらいできないと」


気持ち悪いぐらいに顔が覚えられない。

「何の用?」

「せっかちなのは、と思いますが、今から1年間、異世界行きましょう」

「何で?」

「暇なんでしょ?」

「仕事あ」

「大丈夫、この世界だと1分でお兄さんの身体時間も1分です」


何なんだ?こいつに何の得がある?

「あ、得はないです。強いて言えば暇なのは一緒なので」


「チー」

「チートとか、お兄さんが大好きそうなものは一通り付けますけど、使うと楽しくないと思いますよ?」


無双系がいい。それしかない。


「まあ、いいですけど。その知識のまま、予備知識入れて、ファンタジー世界へ、でいいですか?」


「ああ。やばい、ドキドキしてきた」

「今更?訳がわからない方ですね」

「あ、何のゲームとか漫画とかの世界?」

「火星がテラフォーミングされた世界で、地球からみると遺伝子操作によって、人から派生した人類種と動植物から派生した動類種がメインの世界です。宇宙開拓競争中でゲートというワープホール理論により開拓された宇宙航路があります」


「意外と普通だな」

「物理世界から遠く離れたら、自我が保てないと思いますが?」

「たしかにな」


「俺はこの世界で何をすればいい?」

「別に何も。ファンタシースターとかあつまれ動物の森とでも考えてお好きにお過ごしください」

「うーん」なんか、つまらないな。


「スタート地点は?」

「地球の東京にしています。国外旅行ってしたことあります?ないならこの機会にどうですか?現地時間は202X年にするので、1年間旅行しても楽しめますよ」


それも良さそう。

「あ」

「お金ならご心配なく。楽しめるだけのお金は入れてありますし、後ろ盾もあります」


抜かりないな。話し口調が部下そっくりだから余計に嫌味に感じる。


「まあ、何かあれば呼んでください」

「わかった」


じゃあ、行きますか。

そして、世界は暗くなった。

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