AiCONNECTION
ひま☆やん
第1話『海江アイ、十五才』
スマホのアラームがうるさい……。何故私の安眠を妨げるのか。理由を考えたけど、私がアラームをセットしたからだという、至極当然の答えしか導き出せなかった。
もう朝の6時か……。3時間しか眠れなかったし、熟睡出来なかったのか眠気が酷い。でも、今日こそは学校に行かなくちゃなぁー……。メンドクサー……。
部屋の中は散らかり放題。最後にゴミ出しをしたのはいつだったっけ?いい加減、掃除も洗濯も片付けなくちゃダメなのは分かっているけど、やる気が起きない。
お腹空いたな……。とりあえず朝ご飯にしよう。そう思ったのだけど、お気に入りのカップヌードルチリトマト味を切らしていた。朝から最悪だ……。
冷蔵庫の中にも、私の空腹を満たす物は入っていない。ミネラルウォーター以外は、エナジードリンクが1本しか入っていなかった。
まぁ、とりあえずこれで栄養補給するしかないか。学校行く途中、コンビニで何か適当に買っておこう。
我が家には大人がいない。一人娘である私を残し、両親揃って唐突に他界した。交通事故。車で移動中に、信号無視のバカが突っ込んで来たそうだ。
病院に呼ばれて行ったら、既に両親は遺体になっていた。親の死に目なんていうのを体験出来なかったのは少し残念に思う。
その後は葬式とか遺産相続とか面倒な事が続き、学校どころじゃない状況が慌ただしく始まった。
私まだ十五才なんだけど?高校入学したばかりなんだけど?何でこんな面倒な事になっているのよ?
そんな疑問には誰も答えてくれない。ただ粛々と手続きは進んで、晴れて私は天涯孤独の身となった訳だ。
両親の死については、特に悲しみとか無かった。元々ロクに会話もしていなかったし、それぞれが独立した生活を送っていたので、単なる同居人みたいな感じ。
とりあえずこの家と、私の学費や生活費を賄える程度の遺産を残してくれたのは有り難く思う。
学校へは電車で移動。通勤通学ラッシュの時間帯は嫌いだ。見ず知らずの赤の他人に埋め尽くされて吐き気がしそう。
今後の人生において一切関わらないであろう、その他大勢のどうでもいい人と、閉鎖空間に詰め込まれて移動するなんて嫌過ぎる。
せめてもの抵抗として、ドア脇コーナーに背中を預けてリュックを前に抱える。痴漢になんか絶対遭いたくない。
この自衛手段が取れない場合は何本でも電車を見送る。だから私は、学校では遅刻常習魔になっていた。
電車に限った話じゃないけど、家の外にはノイズが多い。電車や車の騒音も人の話し声も、私に関係無い音は全て不快なノイズでしかない。耳に入るだけでイライラするから、私は外出する時は必ずヘッドホンで好きな音楽を聴いている。
これは我ながら良い判断だと思う。移動中もそうだけど、学校に居る時も授業中以外はヘッドホンをしていれば、無駄に話しかけてくる人をシャットアウトする事が出来る。
誰かと無駄に会話する必要は無い。別に誰かと仲良くなりたいなんて思わない。無駄な人間関係なんか煩わしいだけだし意味が無い。
「
朝イチで職員室。全然学校からの電話には出なかったし、こちらから連絡もしなかったので、メンドクサイお説教かと思って少し身構えていたんだけど、クラス担任の緑川先生は優しい言葉をかけてくれた。
「ハイ。必要な手続きは全部終わりましたので。父が生前付き合いのあった弁護士さんに、未成年後見人になってもらいました」
簡潔に事実を伝える。無駄な世間話をするつもりは無い。
すると先生から、
「良かったわぁ〜。それじゃあ、これからは安心して学校に通えるんですよね?海江さん、入学したばかりなのにこんな事になっちゃって、ずっと欠席していたでしょう?早くクラスの人と仲良くなって欲しいし、ちゃんと授業も受けて、勉強もみんなに追い付かなくちゃいけませんね」
なんて言われた。
別に同級生と仲良くする必要性は感じないし、勉強だってすぐに追い越せると思うんだけど。私なら、すぐ学年1位になる自信があるし。
だけど先生は続け様に、
「あと海江さん、部活動も何に入るか早く決めて下さいね。この学校は全員部活に入る決まりですから。クラスで部活が決まっていないのは海江さんだけですよ」
なんて言って来た。
はぁ?何それ?部活強制とか超ダルいんだけど?それ義務なの?何言ってるのよ、この無駄巨乳は?
朝からダルい話を聞かされて、テンションダダ下がり。でも授業内容は予想通り簡単な事ばかりで、適当に聞き流せるのは助かった。
部活かぁー……。どうしよう?中学では帰宅部だったし、特にやりたい事とか無いんだけど。運動部は論外。絶対やらない。
文化系で何か適当なヤツを探さなくちゃなぁー。無駄な時間を取られたくないから、幽霊部員で居られるようなユルいの無いかなぁー?
休み時間にスマホで学校のサイトを見る。部活一覧を見ながらコンビニで買ったパンを食べていたら、知らない人が話しかけてきた。多分同級生なんだろう。
誰だか知らないけど、馴れ馴れしい話し方が気に入らないので「今忙しいから」とだけ返事をしてヘッドホンをした。
強制シャットアウトした後も何か言っていたみたいだけど、無視していたら黙って立ち去ってくれた。今私は無駄な雑談しているほど暇じゃない。
そんな事より、何か良い部活ないかなぁー?あまり他の部員と関わらなくてもいい所にしたい。先輩後輩のメンドクサイ上下関係とかも嫌だし。
でも、全く興味が湧かない部活だと時間の無駄だしつまらないだろうし、ここは慎重に選ぶべきだよねぇ……。
すると、部活一覧に『AI研究部』というのがある事に気付いた。AI研?高校の部活動でそんな事をやっているの?県内1番の情報処理科って評価は伊達じゃないって事か。
うぅ―――ん……、他に面白そうな部活は見当たらないし、とりあえず見学にでも行ってみようかなぁ?あまり期待は出来ないけど……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます