第11話 愛されたのは
ビオレッタは王として、帝国の妃として、精力的に動いている。評判も良くて、ビオレッタのおかげで我が国の評価も上がった。
愛されなかった正妃だったわたくしは、ビオレッタと出会って変わった。
あれだけ愛されていたアメリア様は、夫に殺された。側妃のままの方が、愛されたのかもしれないと思う事もあるわ。わたくしも、上手くやれば元夫に愛されたのかもしれないと思う事もあった。だけど、クリスと結婚してからはそんな事思わなくなった。わたくしが愛している男性はクリスだけなのだから。
ビオレッタはアメリア様の墓を建てた。時折訪れて、アメリア様の冥福を祈っているそうだ。
王になったビオレッタが真っ先に行ったのが、アメリア様を弔う事だった。母と呼ぶ事はできないし、母とは思えない。けど、産んでくれた恩はあるからと。
元夫は罪人だから、墓はない。だけどアメリア様の墓の隣に名のない墓石が用意されている。
ミリアも恨み言を言いながら、毎月墓参りをしているそうだ。少しずつ、少しずつミリアの態度は変わっている。この間、初めてビオレッタを姉様と呼んでいたわ。その時、ビオレッタはとても嬉しそうに笑っていた。よほど嬉しかったみたいで、ミリアを抱きしめていたわ。
モーリス様が嫉妬するから離れてと叫んだミリアも、真っ赤な顔をしていた。
以前ビオレッタは、こんな事を言っていた。
「ミリアは本当になにも教わっていなかったみたいで、今必死で学んでいます。可哀想に思う事もあるけど、あの子は王族としての生き方しか知らない。今更平民として暮らそうとしてもうまくいかないでしょう。可愛らしい顔立ちをしていますから、護衛もつけずに暮らしていたらきっと襲われてしまいます。ミリアを見てると、思うんです。わたくしは本当に運が良かったのだと。お母様がわたくしを拾って下さらなければ、わたくしはミリアのように甘やかされて育ったのかもしれません。もしかしたら、育児放棄されていたかもしれない。だけどわたくしは、お母様の愛情をたっぷり受けて育った。お母様やお父様、マリー達がいろんな事を教えて下さったから、王族として困る事はなかった。お母様、わたくしを救ってくれてありがとうございます。そうそう、マリーのご子息が今度結婚なさるんですって。ミリアが教えてくれたわ。宰相補佐として頑張っているそうよ」
共にビオレッタを育ててくれたマリーは、故郷に帰ってご子息と暮らしている。ビオレッタが王になり国が安定したので、逃げていた貴族達が帰って来た。その中に、マリーのご子息もいたのだ。
ミリアの夫と仲が良く、マリーはミリアの教育係、ご子息は宰相補佐をしてくれている。マリーが厳しいと文句を言っていたミリアも、次第にマリーを慕うようになった。
「お母様との出会いが、わたくしの人生最大の幸運です」
そう言って笑うビオレッタとの出会いは、わたくしにとっても人生最大の幸運だ。
ビオレッタのおかげで目が覚めて、あの男と別れられた。マリーと出会えた。大好きなクリスと結婚して、新しい家族ができた。
家族の中心にはいつもビオレッタがいて、家族に幸せを与えてくれた。
ビオレッタには感謝しかない。
そんなビオレッタが、久しぶりに里帰りしてくる。部屋を用意して、医師も手配した。ビオレッタの顔を見るのが楽しみだわ。
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