引き籠りの姉がすきになったのは、私の親友でした。
椿 セシル
第1話 自宅警備員はやっぱり最高です
私が自宅警備員になってから、早六年が経った。あっという間の六年間だった様な気がする。
私の名前は、
ある事があって、十五歳の中学三年生の時から自宅警備員をしています。
妹の凛は、ただのダメニートの穀潰しの癖に性欲と食欲は人並みにある駄目人間なんて、酷い事を言いますが、両親すら見放した私の事を今でも気に掛けてくれて、優しくしてくれる最高の妹です。
将来はきっといいお嫁さんになると思います。私には絶対になれない職業であるお嫁さんに、だって私は女の子が大好きな百合娘だからです。
どうしてこの国は同性婚を認めていないのでしょうか?
そんな事を言っても仕方ないし、私はリアルには興味はないのです。百合アニメ、百合ゲーム(成人向け含む)、百合漫画の可愛らしいキャラクターが、私の嫁なのだがら、そんな事を一人ゴチリながら灯は、一人夕食と言う名の夜食に手をつける。
完全に昼夜逆転の生活をもう何年もしているので、朝に寝て、今年高校に進学した妹の凛が学校から帰宅する頃に起床するのだ。
そんな駄目ニート生活をしている灯を、両親は呆れを通り越して、すでにこの娘は駄目だと諦めているのだが、唯一妹の凛だけは、そんな駄目駄目な姉を見捨てずに、甲斐甲斐しく世話をしている。
そんな凛に甘えている事に、多少なりとも申し訳なさを感じているが、部屋から出るのが怖いし外になんて絶対に出られない。
外に出る位なら、死んだ方がマシだと思っている程に、灯の引き籠りは重症だった。
「そろそろ起きないと、凛ちゃん帰って来るし」
凛が帰って来る前に起きるのが、凛との約束であり、約束を破ったら凛が烈火の如く怒り狂うので、流石に灯もそれだけは守っているのだ。
本来なら、誰に気兼ねなく好きな時間に起きたいのだが、凛がかなり譲歩してくれてるので、これ以上の我儘は言えないし、言ってしまえば凛にまで見放されてしまう。
両親にも見放されて、その上凛にまで見放されてしまえば、流石に生きていけない。凛からは朝起きて、夜に寝る生活をしなさい! と何度も言われているのだが、それだけは今更無理ですと長年昼夜逆転の生活をしていたので、勘弁して下さいと泣きついて、何とか許して貰ったのだが、凛は少しずつでもいいから、朝起きれる様に頑張ろうねと優しく微笑んでくれた。
そんな優しい凛に甘えてばかりではいけないと、自分はお姉ちゃんなんだからと思いもするが、今更お姉ちゃん面なんて出来ないし、する気も灯にはなかった。
こんな駄目な自分がお姉ちゃんだなんて、凛はきっと恥ずかしいと思っているのかもしれない。そう思うと悲しい気持ちになるが、直接確認する勇気なんて灯にはなかった。
夕方に起きて、先ずはゲームじゃなくて一応歯ブラシして顔を洗う。それから、凛が用意しておいてくれたご飯を、遅い朝ご飯を食べてから、ゲームをして本を読んでと自由に過ごす。一応PCでネットゲームもするが、正直下手くそなので、出来る限り一人でやれるゲームを選んでやる様にしている。
基本一人で百合ゲームをするのがお気に入りで、勿論成人向けも好んでやっている。だって一応成人していますので、ゲームも本もグッズも、全てネットで購入する。
こんな私にも、両親はお小遣いをくれるので、お小遣いの中で購入している。
比較的裕福な家庭だからこそ、こんな生活が許されているだろうとは思う。
両親からは、自分達が死んだらどうするの? と凛に頼って生きていくの? 本当にそれでいいのと何度も追求されたが、私は何も答えられない。だって、そんな先の事なんて考えられないし、考えたくもない。
今のこの自由で幸せな時間だけを、私は考えていたいのだから、それ以外に考えるのは、凛の幸せだ。
凛が幸せになる為には、私は間違いなくお荷物なのはわかっている。わかってはいるけれど、私は凛に頼らないと生きていけない。
「凛ちゃんの幸せを考えるなら、このままじゃいけないよね」
そんな事を一人ごちるが、凛のいない生活なんて、凛が誰かのお嫁さんになってしまうなんて、私の前から去ってしまうなんて、考えたくない。
可愛い妹だから、本当に大好きで大切な妹だから、幸せになって欲しいのに、私は弱いから凛が居ないと生きていけない。
こんな自分が嫌になるが、どうしても今の生活を辞められない。外に出て、働いて自分一人で生きて行くなんて、凛以外と関わって行くなんて、どうしても考えられなかった。
「私は、凛ちゃんのお荷物だよね」
口に出すと悲しくて泣きたくなった。
悲しくて辛くて、自分が情けなくて、情けないのに変われない自分が、本当に嫌で、嫌なのに凛に甘える事を辞められなくて、甘えないと生きていけない駄目なお姉ちゃんだ。いつの間にか大粒の涙が頬をとめどなく流れていた。
「お姉ちゃんただいま〜今日もゲームしてるのかな? 偶には運動しなさいよって! どうして泣いてるの? 何か嫌な事あったの? ママに何か言われたの? 」
「違うの。ママには何も言われてないよ」
何も言われてないどころか、もう何年も顔すら合わせていないし、扉越しに会話したのももう何年前だっかすら覚えていない。
「違うの。お姉ちゃん、こんなだから凛ちゃんに見捨てられるんじゃないかって、凛ちゃんがお姉ちゃんの前から居なくなるって考えたら、とっても悲しくなって」
「ハァ〜何を言ってるの。こんな駄目ニートの引き籠りを一人にして、私だけが幸せになるなんて考えた事ないし、見捨てるつもりもお姉ちゃんの前から居なくなる事もないし」
こんな駄目ニートの姉を見捨てられる筈なんてない。本来なら、見捨てるべきなのかもしれないし、普通なら見捨てるのだろう。いくら姉妹でも、限度と言うものがあると、周りからは言われてしまう事も理解している。
それでも、凛は灯がお姉ちゃんが大好きでとても大切なのだ。
だから、例え自分に恋人が出来ても(全く予定なし)、灯が部屋から家から出られる様になって、しっかりと独り立ちするまでは、灯の側にいると決意しているのだ。
「だから心配しないで、そんな事考えて泣かないでお姉ちゃん。私がお姉ちゃんと離れるのは、お姉ちゃんが独り立ちして、素敵な恋人を見つけた時だからね」
「ありがとう凛ちゃんって! こ、こここここ恋人なんて絶対に出来ないから! こんなキモオタで百合好きで、ちょっとエッチなお姉ちゃんに恋人なんて無理だからーーーー!」
そんな力説しなくてもいいし、ちょっとエッチって結構エッチでしょお姉ちゃんとはツッコミは入れずに、凛はだから安心してねとだけ伝えると、着替えてくるねと部屋を出て行った。
凛の言葉に安心すると、そのままへなへなとへたり込んでしまった。
本当にあの駄目ニートはと、凛は制服から部屋着に着替えながら、どうしたらいいのかと、どうしたら先ずは規則正しい生活を送れるのかと、娘を持つ母親の様な事を考えながら、ちょっとこのブラキツイかな? 新しいの買わないといけないよねなんて事も同時に考えていた。
脱衣所で洋服を脱ぎながら、毎日お風呂って面倒だなと考えてしまう。以前は数日に一度だったのだが、凛にお風呂は毎日入りなさい! 女の子でしょ! と鬼の形相で怒られてしまった。
凛に怒られては言う事を聞かない訳にはいかないのだ。だって怖いんだもん。
「ちょっと太ったかな? 相変わらずおっぱいは成長しないけど」
小さい訳ではないが、平均よりは少し小さい。妹の凛は大きいから、余計に気になってしまう。
「今度通販で何か買おうかな? でもゲームと漫画買いたいし」
考えて数秒で考えを変えて、灯は下着を脱ぐとそのままお風呂へと突入した。
お湯に浸かっていると「お姉ちゃん、私も汗掻いたから入るね」と、ガラッと扉を開けて凛が入って来た。
「り、りりり凛ちゃん! 」
「何で、そんなに驚いてるの? 姉妹なんだからいいじゃない」
それはそうだけど、女の子の裸が大好物の灯にとっては、例え妹の裸と言えど、女の子の裸には変わりなくて、興奮してしまうのだ。
顔を赤らめて、だらしなく涎を垂らしている灯を見て、この姉はと凛は、灯の視線など気にせずに髪を洗い始めた。
そんな凛を灯は恥ずかしそうに、それでも久しぶりに入る妹とのお風呂を楽しんでいた。
「お姉ちゃん、少し太った? 」
「ハグァ! や、やっぱり太ったかな? 鏡を見てもしかしたらって」
「夜中にお菓子とカップ麺を食べてるからだよ。だからちゃんと朝起きて、ご飯を三食食べて間食は控えなさいって言ったでしょ」
「ご、ごめんなさい」
これでは、どっちが姉なのかわからない。
「今日からは、私が夜食作っておくからお腹空いたら、そっちにしなさい」
「う、うん。ありがとう凛ちゃん」
本当に仕方ないんだからと言いながらも、凛は嬉しそうに微笑んでいた。
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