第6話 チュートリアル戦闘ってなんですかね?
目の前にはこちらへ奇声を上げ続ける大きな鳥が一羽。
突然の出来事に教師も学園の警備員でさえも動揺を隠せずにいる。
女生徒達の悲鳴から始まり、会場は一気に阿鼻叫喚状態。
隣には悪役令嬢……いや、今はそんな人物紹介は要らない。
恐怖でカタカタと震えているエレノア・フランツ嬢。
中身は立派な三十路の男である相澤あおい、しかし身体は齢十六歳の麗しき乙女フェイ・ヴィルヘルム。
そう、二人の乙女の目の前にでっかい鳥がいるのだ。
あおいの元に駆けつけようとしていた
鳥の奇声のせいであおいにはヨハンの声は聞こえないが、きっと「姉さん、逃げてくれ!!」だろう。
多分……そうだったら、いいなぁ~っていう自らの勝手な願望なので、
さて、どうしようかな……この状況。
〖チュートリアル戦闘〗開始
あおいは隣に居るエレノアの腰を抱きかかえ、自身の肩に担ぎ上げる。
エレノアは驚いた様に身体を強張らせる。
今のあおいはフェイの身体の為、エレノアとは同性だ。
それもフェイよりもエレノアの方が
「ごめん、エレノア。
足が地面に着くから、脚の関節を曲げてくれ!」
あおいにそう言われ、エレノアは素直に応じると脚を曲げた。
それを確認したや否あおいはエレノアを抱え、大きな鳥から距離をとる為、式場とは反対側に走り出した。
案の定大きな鳥は式場ではなく、あおい達の方に向かってくる。
これで、とりあえず大きな被害は防げそうだとあおいは一息ついた。
〖チュートリアル戦闘〗開始
あおいは走りながら、後を追ってくる鳥に視線を向けた。
確かにあの鳥は
先程も言ったが、舞台的には昼じゃなくて夜に出てくる手筈なのだが、何かがおかしい。
「フェイ・ヴィルヘルム! 右に逸れなさい!」
エレノアにそう言われ、あおいは右に逸れる。
すると、次の瞬間先程まであおい達が走っていた位置の地面が抉れた。
「嘘だろ。あの鳥、攻撃してきやがった……」
「次は左よ、フェイ・ヴィルヘルム」
あおいに抱きかかえられているエレノアは少し落ち着いてきたのか、肝が据わっているのか有難いことに鳥が次に攻撃してくるタイミングの予測をあおいに実況してくれていた。
〖チュートリアル戦闘〗開始
「ありがとう、エレノア! 助かる!!」
「……どういたしましてと言いたいけれど、どうするつもりなの。
フェイ・ヴィルヘルム」
「まぁ、そこはあの場所まで行けば、大丈夫だと思うから」
あおいの発言にエレノアは首を傾げているようだが、あおいには確かな確信があった。
そう、向かっているこの先は学園の
そして、ユリス達が能力に目覚め、この大きな鳥を正気に戻すのだ。
なんでこの先に運動場があるのか知っているかだって?
何回俺がこの乙女ゲームをプレイしたと思ってるんだ。
学園が舞台だぜ?
学園の
〖チュートリアル戦闘〗開始
……………さっきから気づいていたが、あえてツッコまなかった。
いや、むしろ見ないフリを最後まで貫こうと思ったのにさ、
見えてる?
気づいてよ!
気づいてる……よね?
おーい、見えてるよね?
おい、そろそろ気づけよ。
「……みたいに、いちいち表示画面切り替えるな!!
〖チュートリアル戦闘〗開始?
見えてますとも! 見えてますよ!
何のチュートリアル戦闘開始じゃ!
表示する相手間違えてます! おかえりくださいぃ!!」
あおいは遂に我慢できずそう叫ぶと、チュートリアル表示は歓喜したかの様にあおいの目の前にもう一度〖チュートリアル戦闘〗開始 YES? と表示してきた。
「選択肢にNOはないのかい!!
本当に表示する相手間違えてる。バグかな?バグ?
ユリスだって表示する相手!」
あおいがそう言うと、短い沈黙の後にまた目の前に表示される。
〖イマ、アナタガ、ココデケツダンシナイト……シニマス〗
「え、何、急にカタコトで恐ろしいこと言い始めたんだけど……
あー…OK、ワタシ、フェイ・ヴィルヘルム。
ユリス、チガウ」
あおいは首を横に振ると、表示画面が「………」と表示される。
言いたいことが伝わったのかとあおいは胸を撫で下ろそうとした瞬間、ポップな
「拒否権がない!」
あおいの手の甲に現れた紋章が光を放ち始めた。
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