偉そうな私、キレながらクリスマス観望会開きます。(観望会開く前に終わるけどね)

縁高輝/chatGPT3.5&4

第一幕 「キレる私」

「おい、お前。」

私は、いつものように偉そうに彼に声をかけた。彼は椅子から振り返り、私の胸元をチラリと見てから顔を見上げた。

彼の名前は晴人。私たちが所属する天文部の副部長で、私の気持ちを知ってか知らずか、ずっと告白をしてこない男子。彼の切れ長の目に私はいつもドキドキしていた。

「今日は天文部が休みなのに珍しいね。」そんな彼の言葉に、私は内心で苦笑した。私がいつも部室に来るのを知っていて、なぜいつも部室にいるのか。私の心の中は渦巻いていた。

「珍しくもないだろう。まぁなんだ。お前と話をしたかった。」

私も素直な気持ちを隠し、いつもの偉そうな態度で彼に言った。

もうすぐクリスマスシーズン、わたしは、内心めっちゃイラついていた。一年間も待たせておいて、なんで誘っても来ないのっ!?でも、そんなことを言って振られたくも嫌われたくない。だからこそ、今日声をかけたのだ。

「僕は椿さんの暇つぶしの相手じゃないんだけどな。」

彼は、いつものいい加減な態度でからかうように答えた。その態度がすごく頭に来る。でも、めげるわけにはいかない。わざわざあの糞顧問に媚びをうってまで準備をしたのだ。

「大丈夫だ。今日は暇つぶしではなく、お前に話したいことがある。」 「うーん、僕には話すことがないんだけどなぁ。」と彼は返す。

うーっ!なんなの、この面倒なやり取り!と心の中で叫びながらも、私は冷静な表情を保ち、なんとか話を続ける。

「また、そんなことを言って。今回は重要な話だ。」

そう、今日の話は彼とクリスマスを一緒に過ごすための重要な話なのだ。

「また、何か企んでる?」

彼の言葉に一瞬ドキッとする。いい加減に見えて鋭い。ここで怯んではいけない。私は、なにもなかったように言葉を進める。

「企んでるわけじゃない。お前、この部活の活気のなさ、嫌じゃないのか?」

「嫌じゃないってか、この活気のなさがいいんだよ。」

入学当初、彼はあまり部活に入る気はなかったらしい。しかし、全員が部活に入るという校風のせいであまり活発でない天文部を選んだそうだ。学校の売りの天体観測室もあってイメージもいいとかなんとか。その割には部室にいつも居るな…。

「ふふふ、素直じゃないな。観望会にはいつも参加してるじゃないか。」

「まあ、せっかくだからね。」

この素直じゃない性格、変に可愛げがあって、なおムカつく。

まぁ、とりあえず彼が話に乗ってきたからいいか。

私は、大きな教壇の前に登り宣言するように話を始める。この企画で彼と共にクリスマスを過ごせることを信じて。

「そこでだ。部活活性化と部員勧誘のため、クリスマスに大きな観望会をやる。」

しかし、彼は「はぁ?クリスマスにそんな地味なイベントをやっても誰も来ないでしょ」とつれない返事。彼の予想通りの反応に私はすぐに反論する。

「そんなことないぞ。クリスマスに星を眺めるイベントだぞ。ロマンチックじゃないか。」

「でかい展望鏡で星をのぞくだけでしょ?」

天文部の部室の上には小さなドーム型の天体観測室がついていて、学校も売りとしている。しかし、残念なことに学校側が夜間活動に積極的ではなく、実態としてほとんど使われていなかった。彼がそういうのも仕方がない。だが、わたしは負けない。

「そのでかい展望鏡で星をじっくり観察して、二人でその感想を言い合うんだ。しかも、年に一回のことだぞ。こんな体験をできる日はない。わたしはすごく興奮するぞ。」

そう、クリスマスに彼と星の話をして楽しむのだ。わたしは軽やかに歩きながら妄想を膨らませていた。私が窓の暗幕あたりに着くと彼は面倒くさそうにいった。

「顧問が許さないんじゃない?」

私は教壇に戻りながら、心の中でその回答は想定範囲内よ。甘いわね。と思う。

「それは、大丈夫だ。既に打診して仮の許可は得てある。お前、知っているか?あの顧問、娘が中学生で絶賛反抗期中だ。そこで中学生に見えるわたしが目を潤わせて頼んだらいちころだった。まぁ、単純に家に居場所がないのかも知れないが。」

私は隠し持った展望鏡の使用許可書を取り出し自信たっぷりに答えた。

「ホント、どんなやり方してるんですか。」

「ふふふ、これも、わたしの魅力がなせる技だ。まぁ、別に脅しているわけでもないし、顧問も嬉しかったんじゃないか?」

そう、あのロリコン糞野郎は嬉しそうにしていた。だいたい、このイベント、顧問の点数稼ぎになるから媚びなくてもいいとも思える。だが、奴の性格を考えると、そうしなければ観望会の開催率は二十パーセント程だったに違いない。なんでここまでしなくちゃいけないんだ。わたしは更に腹を立てる。

そんなことを考えていると彼は別の案を出してきた。

「それよりも、学校の近にある港で恋愛にまつわる星座の話をして、その後に近くの山手の神社で星をみる方がロマンチックだと思うけどな。」

地元の港は、明治時代に栄えた歴史ある場所で、現在ではレトロな風情が残る観光スポットとして知られている。クリスマスシーズンには、イルミネーションで鮮やかに彩られ、独特の美しさを魅せる。近くの丘の神社には、海峡を挟んだ神社と共に、別れた恋人たちが未だに想いを寄せるという伝説が伝わっているらしい。

釣れた!!私は初めから平凡な案を出して彼を釣りあげるつもりだった。彼が罠に掛かったことにわたしは歓喜した。思わず口元が緩む。

「だめだな。港は人が多すぎるし山手の神社は海峡の橋が明るすぎる。顧問の手前、高校のアピールも必要だ。まぁ、星座にまつわる恋愛の話はいいかもしれないな。」

彼は納得したような表情を浮かべていた。私は、このまま押しきろうと言葉を発する。

「よし、準備をしよう。まず広報としてチラシを作る。担当はお前だ。」

「えっ?僕もやるの?」

「そうだ。お前は副部長だろう?それに"観望会の改善案まで考えてくれた"んだから、参加させないわけにはいかない。」

彼は罠にかかったことを悔やむ表情を見せた。でも、わたしは、彼のことを思ってこのイベントを企画したのだ。去年の"あの日"の出来事を思い出しながら、わたしは決意を持ってクリスマスに誘う。

「そ、それにな。どうせお前はクリスマス暇だろう?

寂しく過ごすくらいなら、みんなで何かやったほうが楽しいと思わないか?」

彼の表情が悲しみの色を帯びた。きっと去年の"あの日"を思い出したんだろう。

「いやまぁ、暇だけどさ。」と彼は答えた。そこで、わたしは、すかさず話をまとめる。

「よ、よし決まりだな。私はもう一度顧問と話をしてくる。また、明日部室で会おう。」

彼が何か言う前に、私は早足で部室を後にした。

よし、今回も上手くいった。しかし、いつもと違って今日は本当に緊張した。わたしはガクガクと震える自分の脚を見ながらそう思った。ふと、廊下の窓に目をやると、木々が風を受け、ざわざわと揺れる様子が見えた。


顧問に正式な許可を得て、私は家路に着いた。通学路の山手通りを歩きながら、私は天文部での思い出を振り返っていた。

晴人とは同じタイミングで入部した仲だ。切れ長の目と坊っちゃんがりの変な髪型が特徴的だった。同級生の男子が他に二人ほどいたが、わたしは見逃さなかった。何気にめっちゃ顔整ってね?

わたしは、これはチャンスだと思った。隠れイケメンなら競争率は低い。これなら、幼く見えるこんなわたしでも付き合えるんじゃないか。まぁ、このあと彼には中学生の頃から付き合っている彼女がいると知って落胆するのだけれど。

わたしはというと、学力的にもう少し優秀な学校にもいけたが、天文部を狙ってこの高校に進学した。それなのに、この活気のなさだ。わたしは絶望した。人生なかなか上手くいかない。

私は、天文部を改善しようと奮闘した。不定期だった活動を週一の定期活動に切り替えたり、観望会や展望鏡の講習会などのイベントを開催したり精力的に活動した。しかし、彼以外の同級生たちは、改革に不満を感じたのか徐々に姿を見せなくなっていった。

わたしは、またかと劣等感を感じていた。わたしの情熱はいつも実を結ばず、空回りしてしまう。小学校の図書委員でも、中学の英会話クラブでも、懸命になる度に自分も他人も傷つけてきた。結局、今までに得たものと言えば、自分も他人も傷つけないための、この偉そうな態度だけだった。


天文部のことを思い出しながら家に帰り着くと、周りはすっかり暗くなっていた。


ベッドに横たわると、今日の出来事が頭を巡った。ニヤリ顔が止まらない。

次は彼へのクリスマスプレゼントだ。しかし、流行りに疎いわたしには何も浮かばない。彼に直接聞くことも考えるが、好意がばれて振られたくはない。

悩みは堂々巡りで、最終的にわたしは意を決して彼に聞くことにした。恥ずかしさを隠そうと、布団をかぶって眠ろうとする。しかし高鳴る鼓動にわたしは、なかなか寝付くことができなかった。

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