なんもかけんきゅう


「なんもかけん」というタイトルから「何も書けん」というイメージを持ってしまったことこそが、そもそもの過ちだった。

 ひらがなで書いているのだから、どこで区切っても問題はないはずだ。「なんもかけん」とすれば、「なんもかけん」というタイトルで何かは書けるようになるはずだ。


 この場合「なんもか研」には2つの受け取り方がある。


 1つ目はオカルト研究会=オカ研とするように、「なんもか」という対象(物体、性質、概念、人物、事件など)があって、それを研究対象とするということだ。

 1つの疑問が浮かび上がってくる。この「なんもか」とは一体、何なのであろうか。さっそく物知りAIに聞いてみることにする。


Q.「なんもか」とは何でしょうか

A.【「なんもか」という表現は、誤りであり、正しくは「何もかも」または「何も彼も」という表現があります。前者は「全て、一切、全部、一切合財」などの意味を持ち、後者は「どれもこれも、すべて」などの意味を持ちます。】


 なんと誤りと出てきてしまった。「ズンドコベロンチョ」ですら正しく解してくれたAIが、初っ端から誤りと断じたのである。

 誤りでは困るのだ。このままでは「なもかけん」になってしまい、読者からタイトル詐欺と言われてしまうのである。

 大体、仮に「なにもかも研」だったとして、何を研究しろというのだ。すべての研究とは? 欲張りさんにも程があるだろ。永遠に研究が終わることはないので長続きはしそうである。研究員の皆さんはそれはそれは遠い目をしていることだろう……


 もう1つの捉え方は大学の研究室みたいに「なんもか」という名前の教授がいて、その研究室ということだ。アンミカもいるんだから、なんもかもいるはずだ。

 南茂家 充なんもか みつるとかどうだろう。南茂家 充って誰だよ。

 

Q.「南茂家 充」がしたことは何でしょうか。

A.【すいません、そもそも質問文にある「南茂家 充」とは一体何なのでしょうか?(意訳)】


 こっちが聞きてえんだよ。


 困ったことになった。

「なんもか」を研究対象にしようと思えば「誤り」と返され、「なんもか」を大学教授にしようと思ったら「誰」と返されてしまう。

 AIですら匙を投げてしまった。


 やはり自分の頭で考えるしかないのか。

 更に頭を絞り出してみる。よく発酵したチーズのようなにおいが漂う。

 数分の思考の後……検索結果が出た。


・・・検索結果・・・

  なんもかけん

  なんもかけん

  なんもかけん

  なんもかけん

  なんもかけん



……どうしたらいいのだ。

 これを見せつけられて、一体どうしたらいいのだ。


 何に対する権利や検定なのか。

 下3つに関しては、音読みが「ケン」で熟語になればなんでもいいやみたいな感じではないか。

 しかもこんな体たらくでありつつも、AIと違って、自分の頭というのはがめついやつで「多くの思考回路を使用した。当脳は従量加糖制を採用している。よって見合った糖分を請求する」と騒ぎ立てるのである。


 なぜなのだ。MAXコーヒーを流し込みながら考える。

 わざわざこんな宿題みたいな……それも後々役に立ちそうな知識とか考え方とかじゃなくて、どっちかというと「漢字の書き取り」みたいな、いたずらに時間だけ過ぎていって、最終的にはゲシュタルト崩壊して何書いてるのか分からなくなるような、比較的不毛な結論にいきつくことをしているのだろう?


 自分の愚行のせいだよ、いい加減にしろ。

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