創造の星──ニューゲート──
@tamagoto_kimi
第1話 三ツ星事件
それは戦争だ。数多の人間が命を投げ、自分の家族、愛する者の為に戦った──。
◈◈◈
2020年4月3日。日本時間午後9時23分。地球に星が降った。
落下地点はアメリカ合衆国のロサンゼルス、イギリスのロンドン。そして、日本の東京。
それぞれが後に『
3つの地点に直径約18kmもの星が降り、それぞれの都市が衝突の衝撃、爆発、爆風による壊滅状態に陥り、死者は2000万人にも及んだ。
しかし3日後、歴史に刻まれるほどの伝説的な
内容は先の事件で犠牲となった者の殆どが死から生へと帰還した。つまり、生き返ったのだ。
しかし、それは犠牲者の全員ではなく、あくまで殆どだ。
その3日間の間で埋葬、火葬、又は精神的な概念で弔われた者達は全て、二度とその息を吹き返すことは無かった。
また、その復活者たちには1つの共通点があった。それは眼球に虹色の輪が現れていること。その他に体の変形、異質化などは特に現れず、体からは、有害な放射線なども放たれていないことが判明した。
3つの国では、ある組織が事件で生き返った者たちの中から志願者を募り、多大な額の報酬としての金を渡すことを引き換えに、体の精密検査、数日間の24時間監視を行った。
そしてその志願者の1人が天野
「生き返る時、体に感覚、違和感はありましたか?」
そんな質問だった。
理一の目の前にいる、眼鏡を掛け白衣を着た、前髪を7対3のところで分けている、いかにも科学者のような容貌の人物がそう尋ねた。
「いや、ただ目を開けたら病院のベッドの上だったんで。特に変な感覚はなかったですよ」
実際自分の体に起こったことが未だに信じれずにそう答えた。
理一は夜に仕事の帰りで新宿区にいたことで事件に巻き込まれ、1度死んだ。きっとボロボロの肉塊になっていただろう。もしかしたらそれすら残っていなかったかもしれない。
しかし体自体が消滅していたとして、それは人間で言う『弔う』という行為に当てはまらないため、理一は体を何らかの力によって作り直され、蘇生された。
「っていうか俺ってどうやって生き返ってたんですかね」
単純な質問を投げた理一に対して白衣の男が淡々と答える。
「事件から3日後の朝5時ですかね、理一さんたち復活者の方々は当時に着ていた服を着用したまま東京の様々な区域に捨てられたように寝ていましたよ」
そうだったんですか。と呟き、ありがとうございましたと部屋を出て施設の一部である自室に戻った。
この復活者監視のための特設実験施設は国が臨時的に設けた施設であり、監視の他に、衛生管理、精神管理、容態管理など様々な分野の施しを行っている。
まだ正式な組織にはなっておらず、名前もなく、世間からは特別監視を略して
「はあ、なんだって俺が死ななくちゃなんないんだよ」
そうイラつきを込めた言葉を吐き捨て、質素な作りの部屋のベッドに座り込む。
「まあお金貰えるし、我慢するしかないよな」
気を紛らわすために、部屋に据え付けられているテレビを付ける。
画面に映ったのは1人のアナウンサーと思われる男がライブで報道を行っている場面であった。現場は東京の23区。地面には
黒く焦げた駅。横たわって骨を見せているビル。
地面にはヒビが入って、足元はおぼつかなそうだ。
ニュースは現場の報道から切り替わり、スタジオのアナウンサーを映した。
「ここで新たな情報です。先程もお伝えしておりました東京23区に落下した隕石は、一面が
そんな内容だった。理一はそのニュースを見て、へぇ、じゃあ売れるじゃん。というくだらない考えしか浮かばなかった。
よそにニュースは続き、
「詳細は判明しておりませんが、外見は金に輝いており、衝突で地面と接した箇所を除き、ヘコみがなく、全体的に綺麗な球体で、一部分も溶けていないとのことです」
とのことだった。
「はあ、どうでもいいけど、なんか面白いことないのかよ…」
と、部屋の天井の角を見つめる。
監視カメラが睨むようにこちらを見ている。赤いライトがチカチカと点滅して少し嫌な気分になる。
◈◈◈
理一の隣の部屋、104号室で同じニュースを見ている人物がいた。
艶のある淡い紫の髪の毛をセンターパートで分けている、顔の整った男だ。
「金?」
そんな呟き。
ありえないだろう。宇宙から落下してきた金が溶けずに残った?そんな馬鹿なことあるはずが無い。
「ただでさえ溶けやすい金属だ。溶けなかったとしても少しぐらいの熱変形はあるはずだ」
理一が何気なく見ているニュースをひとり、考察していた。
「つまりこれは──
◈◈◈
「宇宙から落下したものではないだと!?」
NASA長官、ダニエル=ケェルは信じ難い局員の言葉に怒号を飛ばした。
局員は少し脅えながらしかし、ハキハキと伝える。
「は、はい。事件当時の大気圏には特に大きな塊は映っていませんでした」
「そんな事が有り得るはずがない!君たちの見間違いではないのか!?」
口調は、物理をねじ曲げるその発言に対する怒りに変わっていた。
「私達もそう思って何度も確認したのですが、日本、イギリス、アメリカの全ての上空の映像には何も映っていませんでした。ただただ地球が映っているだけで…」
「バカを言うな!ならどうやって地球に落下したと言うのだ!」
その言葉に脅えながらすぐに局員は反応した。
「そ、そこで私たちはアメリカ上空の映像を可能な限りの全ての高度から確認したところ、このような映像が確認されました」
と、脇に抱えていたノートパソコンを開き、さらにひとつのファイルからある動画を表示させた。
「これからお見せする映像はCGではありません。私達も未だ信じれていません」
「ああ、はやく再生してくれ」
はい、と動画を再生した。
それは動画を可能な限り拡大したものだったため、少し画質が粗かった。
しかしそこに映っているものは完全な奇跡、いや、まさに物理をねじ曲げる内容だった。
蒼く見える地球を見下ろした図。それが10秒ほど続いた。
途端、最初は何も無かったその空間に、緑の光が発光し始めた。その眩い光は5秒ほどで消滅し、再び先程と同じ地球を映した。
しかしそこには先程とは決定的に違うモノが映っていた──
「これは…、ありえない……」
蒼い地球の上空には、
小さな、いや、実際には
3国に落下した物と同様の金の球が顕現していた──
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