(3)
「おとぉ〜さぁ〜ん、おかぁ〜さぁ〜ん、おうちにかえろうよ〜」
「かえろ〜よ〜」
「もう少しの我慢だからね」
「おい、そのガキ黙らせろ」
「すいません、すいません」
近くで喧嘩が始まった。
少数民族の北方系白肌人種の親子連れらしいのが……チンピラっぽいのに因縁付けられて。
北方系白肌人種は……平時でも夜中に町中を歩いてると官憲から「職務質問」と称する嫌がらせを受ける。
白肌人種ばかりが「職務質問」と称する嫌がらせの対象になってる理由は、官憲の公式見解では「肌が白いと夜中に目立つから」だそうだ。
地震や火事が起きると、白肌人種が井戸に毒を入れてるのを見たなんてデマが流れる。
見てて気分がいいモノじゃない。
冒険者なんてのは社会の溢れ者の集団も同じなんで……白肌人種の割合は堅気の皆さんよりも遥かに多い。
やれやれ……。
そうだ……私は……魔法使いだ。腐っても……。いや、腕前はかなり腐りまくってるけど。
よし……。
そう思って、私は、この場所と、城壁の外をつなぐ
ん?
「な……なんだ……あれ?」
「お……おい……どうなってる?」
何故か、周囲の到る所に、いくつもの
しまった。
ここしばらく素面だったせいで……逆に、うっかり忘れてた。
忘れてた事、その1:私は、酒が入ってないと逆にバカになる。
忘れてた事、その2:酒が入ってる脳味噌がマトモに働いてる状態でも……私の魔法は、しょっちゅう暴走する。
そして……。
「ぐえっ‼」
「ぎゃあああッ‼」
「助けて〜ッ‼」
「何だ、こりゃあッ‼」
運命ってのは理不尽なまでに平等だ。
白肌人種の一家も、それに因縁付けてたチンピラも……老人も子供も、おっちゃん・おばはんも
次々と平等かつ理不尽に魔物達に虐殺されていった。
でも、大丈夫。
私は、腐りまくってるけど、元冒険者。
こんな経験は初めてじゃない。
冷静かつ沈着に……その場を逃げた逃げた逃げた逃げた。
ともかく逃げた。
必死に逃げた。
哀れな一般市民を見捨てて、勇敢に逃げた。
何が起きたかは……何となく想像は付く。
どうやら、この世界の、この辺りに場所に転移したがってた異界の魔物が何匹も居たらしい。
そんな魔物が何匹も居たのは……偶然か理由が有るのか判んないけど、ともかく何匹も居たようだ。
そんな状態で、魔法を使えば、いつ暴走するか知れたものじゃない私が、うっかり
つながった……。
この世界の、この辺りの場所に来たがっている何匹も魔物達が居る異世界(多分だけど複数)と……。
『ドコダ?』
『
『コノ辺リニ居ルノハ判ッテイルゾ……出テ来イっ‼』
『返セ……返セ……』
ちょ……ちょっと待って……なに? どういう事?
この世界の、この辺り……おそらくは王都内に……あんなヤバそうな魔物たちから「何か」を盗んだ奴が居るって事?
どうなってんの、一体全体?
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