(5)

 あれ?

 何か……変だ……?

 心の余裕を取り戻すまで、どれだけかかっただろう?

 騎士団のリーダーの頭が砕け散った直後、何故か、馬の方まで吐血し……。

 ガクリと足を折り……。

 えっと……騎士団のリーダーの頭を砕いた「何か」は……どの方向から飛んで来たの?

 けど、騎士達も、自称「冒険者ギルド最高幹部」の爺さんたちも、それ所じゃなかった。

「お……おい……誰が……やった?」

「し……知らん……見当も付かん……」

「でも……マズいぞ……これ……」

 最初の内は……その場の雰囲気は凍り付いていたが……段々と……。

「あ……っ」

 騎士団の中のクロスボウ隊が……あっちとこっちの自称「冒険者ギルド最高幹部」に狙いを付け……。

 矢の雨……と思ったその時……。

 騎士団の真ん中で轟音……。

 騎士や馬が衝撃波で吹き飛ばされ……。

「えっ……」

「な……何で……?」

 そこには……スーパーヒーロー着地をしている「鋼の男」が居た。

「冒険者ギルド最高幹部の皆様。この冒険者ランキング1位『鋼の男』がお助けに参りました。御安心くだされッ‼」

 どうやら、あの鎧の中にも……「魔法の拡声器」が仕込まれてるようで、ここまで声がはっきり届く。

 で……でも……ッ。

 ……あ……安心出来るかッ‼

「なにも……えっ……⁉」

 「鋼の男」に斬り付けた剣は……あるいは折れ、あるいは曲がる。

 騎士が馬ごと派手に宙を舞う。単に、「鋼の男」が槍の攻撃を捌いただけで、その始末だ。

 宙を舞った馬と騎士は……別の騎士に激突し……。

 「鋼の男」は……何の武器も持ってない。そして、防戦一方だ。

 けど、こんな無茶苦茶な「防戦一方」は見た事ない。

 「鋼の男」が騎士達の攻撃を受け捌いてるだけで……攻撃してる筈の騎士団にどんどん被害が出て行く。

 あ……馬鹿……。

 大通りの向こうの自称「冒険者ギルド最高幹部」の1人が「鋼の男」目掛けて、火炎弾ファイアーボール

 しかし……。

 「鋼の男」は……何ともなく……騎士達が焼け死んだだけ……。

 あああああ……。

 こ……こんな……。

 生き残った何人かの騎士は逃げ出し……「鋼の男」は……それを見逃し……。

 マズい……。

 騎士団を虐殺した犯人が「冒険者ギルド最高幹部の皆様。この冒険者ランキング1位『鋼の男』がお助けに参りました。御安心くだされッ‼」とがなり散らした事も……多分、国王に報告される。

 あああ……。

 し……始末しないと……。

 冒険者ギルドのどこかに有る……私が、まだ、冒険者登録を抹消されてないって証拠を……。

 そうしないと……私は……国王直属の騎士団を虐殺したテロ組織「冒険者ギルド」の一員って事に……。

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