第三章:BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY/恥も外聞も人倫も無い大戦争

(1)

「一体、どうしてくれるんだッ⁉」

 結局、イルゼとルーカス君は行方不明。

 暗号名「選ばれし7人マグニフィセント・セブン」の残りのメンバーは補欠を含めて全滅。

 この冒険者ギルド本部の近くの酒場の中に死体が3つ。

 補欠含めた残り全員の死体は、荷車に積まれて、酒場の前に放置プレイ。

 ただし……私と行方不明の2人を除いて。

「いや……どうしろと言われても……」

 冒険者ギルドの本部に連行されて、この国の冒険者ギルド最高幹部「よりよき明日の為の評議会カウンシル・オブ・ア・ベター・トゥモロー」の皆さんに、どんだけ罵倒されても、そう答えるしか無い。

「あのなぁ……君、元とは言え、ランキング1位のチームのメンバーだろうがッ⁉」

「でも、私、今では……冒険者じゃないですし……」

「残念ながら、当ギルドの登録は抹消されていない」

「へっ?」

「君は、まだ、当ギルド所属の冒険者だ。当ギルドの指令に従う義務が有る」

 なら、あんたらがやれよ、と言いたいところだけど……残念ながら評議会の皆さんは、いい齢したお爺さんばかり……。

 荒事なんてやったら1ターン目で腰を痛め……。

 あれ?

 そう言や、女の冒険者も……中年になる前に、ここに並んでる皆さんより遥かに話題になる冒険を成功させて引退した人も居るのに……なんで、この評議会のメンバーは、いい齢した爺さんばかりなんだろ……。

 まぁ、いいや。

 私が当面やるべき事は……。

 酒だ。

 酒。

 お酒。

 可能なら、この王都で一番強い酒。

 酔っ払って、ややこしい話とおさらばしたい。

 でも、テレポーテーションで逃げようとして、さっきみたいな事になったら……。

 冒険者ギルドのエラいさんを行方不明にしたら……一両日中に、私が行方不明になる。

 ギルド所属の冒険者って、一般市民にとっては一種の偶像アイドルだけど、冒険者ギルドの実態は……暗殺者アサシンギルドの方が、まだ、悪なりに筋が通って見えるような理不尽組織だ。ここにガン首揃えてるエラいさん達も、長年の間、下っ端達をいじめまくったせいで、若い頃は女の子にキャーキャー言われるような顔だったのに、今や、完全な悪人ヅラだ。

「おい、聞いてんのか?」

「ええ、聞いてますよ」

 それは、ともかく酒だ。

 酒が欲しい。

 飲みたい。

 酔っ払いたい。

「聞いてるんなら……何か『鋼の男』を倒す為のアイデアを出せッ‼」

 アイデア……アイデア……。

 ああ、そうだ。

 発想を逆にしよう。

 私が、テレポーテーションで、ここを逃げ出すんじゃなくて……魔法で、ここに酒を転移させればいい。

 よし、では……実行。

「おいッ‼ 待て‼ 今、何の魔法を使った?」

 何って……そりゃ、酒を……。

 待て……。

 ここに一番近い酒が有る場所って、どこだっけ……。

 あ……。

 我ながら、発想が逆にも程が有る。

 物体転移トランスポーテーションの魔法を使ってから、取り寄せたいモノがどこに有るかを考え始め……。

「うわぁぁぁ……ッ‼」

「何だこりゃあッ⁉」

「おい、誰でもいいッ‼ 魔法の使えるヤツ、あの天井の転移門ポータルを閉じろッ‼」

 多分、私のせいだろう。

 この魔法を使えるようになったばかりの初心者でもやらないドジだ。

 おそらく、私が取り寄せたいモノ(要は酒だ)がどこに有るか、良く判んないまま……物体転移トランスポーテーションの魔法を使ったせいだと思うけど……天井から、大量の汚水が、この会議室に流れ込んでいた。

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