心臓止まる…

次の日の夜の6時。

みずきは創との待ち合わせ場所で待っていた。

その日は交通量が少なかった。

一台の車が来るのが見えて、それが創のだとすぐに分かった。

車は、親のというだけあって、おしゃれではなかったが、大きな車を運転している創は少しかっこいいと、みずきは思った。


車がみずきの前に停まったので、みずきは車のドアを開けて、助手席に座った。


「ごめん、遅くなっちゃって」

創は運転席から言った。

「ううん、大丈夫」

2人はいつもの感じで喋る。

「夜景ってどこ?」

「大永山の」

「あぁ、行ったことないな。那葉山なら、大学のサークルで行ったけど…」

「そっか。綺麗だよ」

(彼女と行ったのかな…)

「俺、運転、あんまり慣れてないから、怖くない?」

「うん、全然。前も乗ったしね」

「良かった」

みずきは、あまり来ない場所だから、珍しくて、景色を見ていた。

「みずきさん」

「ん?」

ボケっとしてたから、名前を呼ばれてびっくりした。 

「寒くないの?その服」

「寒くないけど…」

「夜の山、冷えるよ?」

「そっか、失敗」

「寒いよ」

「いや、もう遅いから。言うな」

2人は笑った。


大永山についた。

「きれいだね」

そこには、みずきと創しかいなかった。

みずきは、ドキドキしていた。

抱きしめられたり、キスされたりするんじゃないかとか思っていた。

突然後ろから、創に触られた。

みずきは、びっくりした。

「あ、虫…。いたから…」

「あ…」(なんだ)

みずきは、1人でドキドキして恥ずかしくて、また背中を向けて夜景を見た。


その数秒後みずきは、後ろから創に強く抱きしめられた。

みずきはビクッとしたが、期待していたことでもあったので、すんなり受け入れた。

みずきは、後ろから回された創の手に触れる。

創の指には、ペアリングがなかった。

「ね…」

「うん?」

「ペアリングは?」

「今日、外してきた」

(別れたんじゃなくて、外してきた…?)

「そっか…」

「みずきさん、寒い?」

「ううん、温かい…」

創は、抱きしめる腕に力をいれた。

「夜景、きれいだね」

「うん…」

「…もう少し、上の方に登ろ」

「うん」

創は一旦離れてから、みずきの手をとると、上に行く階段へ向かった。


「上も、きれいだね」

階段を登った先の広場に着いた。

「みずきさん…、ギュってしていい?」

「…うん」

創はみずきの手を自分の前に引っ張って、またみずきの後ろから抱きしめた。

みずきもまた、創の手を握った。

「肩、細い…」

「細くないよ…」(好きって言ってくれないのかな…?)

創は、首筋にキスするように顔を押し付けた。

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