フェルフォードの石板〜宝石とアーティファクトを探す旅レアストーンを探し出し獣人の国を守れ〜

碧絃(aoi)

第1話 白猫のララ

 中学2年生の、僕の日課は、学校帰りに神社に立ちることだ。


 とは言っても、別におまいりをしにきたわけではない。


「ララー!」


 名前を呼んで、猫用のおやつを、ポケットから取り出す。今日はペースト状のおやつで、ほたて貝柱味だ。


 僕が石段に座ると、木のかげから、白い毛玉が近付いてくる。真っ白な長い毛をなびかせているのが、猫のララだ。


 彼女は、この神社にみ着いているようで、僕が学校から帰ってくると、いつもこうして姿を現してくれる。そして、足元に座ったララは、大きな金色の瞳で僕を見つめた。


「はい、どうぞ」


 僕はおやつのふうを切って、ララの口元に近付ける。すると、彼女は夢中でペースト状のおやつをめ始めるのだ。これが可愛くて、仕方がない。


 猫って、なんでこんなに可愛いんだろう。どうせ家に帰っても誰もいないし、ここでララと遊んでいた方が楽しい。


 少し前までは、学校から帰るとゲーム三昧だったけど、今はスマホもタブレットも取り上げられている。ゲームの課金はおこづかいの範囲でやっていたけど———。ついつい夢中になって、いつの間にか、いつもの3倍の金額を課金してしまっていた。


 そりゃあ、僕が悪いかもしれないけど、何もスマホやタブレットを取り上げなくてもいいと思う。まぁ、自業自得じごうじとくと言われたら、それで終わりなんだけど。


「いいよなぁ、猫は自由でさ」


 ララの耳が、ぴくりと動いた。

 僕の言葉に反応しているんだろうか。


「親にガミガミ怒られることはないし、勉強だってしなくていいんだろ? うらやましいよ」


 なんで僕は、猫に話しかけているんだろう。猫が答えるわけがないのに。


 すると、「にゃーん」という鳴き声と共に、ララが僕のひざの上に乗ってきた。


「ララは、人間の言葉が分かるのか?」


 そんなはずはないと思いつつも、思わず聞いてしまう。


「にゃあ」


 まるで返事をするかのように鳴いたララは、今度は僕の顔をぺロリとひと舐めした。


「うわっ! ちょっと待って、くすぐったいよ」


 あぁ、幸せだ……。この時間が、ずっと続けばいいのに。


 僕はララを抱きしめた。このまま連れて帰りたいが、家はマンションなので、動物は飼えない。


「ララと離れたくないなぁ……」


 思わずため息をつくと、ララはもう一度、僕の顔を舐めた。そして、膝の上から飛び降り、神社の本殿ほんでんの方へ歩いて行く。


「もう、帰るのか?」


 僕が声をかけると、ララは振り向いて、「にゃーん」と鳴いた。なんだか、ついて来いと言っているみたいだ。


「行けばいいの? 分かったよ」


 僕は立ち上がって、ララを追いかける。


 そういえば、石段に座っていれば、勝手にララが出てきてくれていたんだった。神社の本殿ってどんな所なんだろう。


 ララが本殿の中に入ったのでついて行くと、そこはうす暗くてほこりっぽい。壁は所々に穴があいていて、床板は腐りかけている。天井からはクモの巣が垂れ下がって、まるで廃墟はいきょのような雰囲気だ。


「うぇ〜。ララはこんな所に住んでたのか。僕の家で飼ってあげられたらいいのにな」


 僕は本殿の中を見まわした。すると、またララが「にゃーん」と鳴く声が聞こえる。


 僕がララの声がした方を見ると、そこには、外国のお城に飾ってありそうな、大きな鏡がある。金色の装飾そうしょくと宝石が光り輝く鏡は、神社の雰囲気には似合わない。


「何で、こんなものが……」


 僕が手を伸ばすと、突然、鏡が白い光を放った。


「うわぁ!」


 まぶしくて、目が開けられない。


 しばらくすると光が収まり、僕はそっと目を開けた。すると目の前には、僕の身長の3倍はありそうな、大きな扉がある。


「えっ?」


 さっきまでは、廃墟のような神社の中にいたはずだ。それなのに今は、中世ヨーロッパのお城のような場所にいる。


 松永侑李まつながゆうり、14歳。ついに頭がおかしくなってしまったのか。ゲームができなくなったストレスか?


 僕が呆然ぼうぜんとしていると、目の前の大きな扉が、ギイィと音を立てて、開かれた。


「うわっ」


 僕は思わず後ずさる。


 扉の向こうには広い空間が広がっていて、壁も床も全部、大理石だ。床の真ん中には、レッドカーペットがかれ、その先には赤と金の玉座ぎょくざがある。


 ん? 玉座には何か、薄いグレーの丸っこいものが……。


「中に入って。国王様がお待ちよ」


 背後から女の子の声が聞こえた。


 僕が振り向くとそこには、同じくらいの年の、女の子が立っている。見た目は間違いなく美少女だ。ただ……長い髪は真っ白で、目は金色だ。


 そして、猫耳がある———。




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コンテストに応募する用の小説です。

全5話なので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

 

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