あいつの中身

鯛谷木

本編

 俺には悩みがある。戦友にしていつでもどこでも鎧兜を外さないあいつ、アレンは女なんじゃないか、という特大の悩みが。俺だってそんなはずないとは思うが、どうしたって動かぬ証拠が何個もあって否定しきれないのだ。

 まず、一人称が私だ。声は低くてよく響くが正直どちらでもありえなくない声質をしている。そりゃまぁ私を使う男も居るが、全身鎧でそんな丁寧なことあるかよ……!?所作とかやけに色っぽいし、下ネタの反応やたら悪いし……!

 次に、俺と風呂に入りたがらない。後で行くと言いつつ結局来ないのでもはや声だけかけてバラバラに入るのがいつもの流れだ。どこかへ行った気配を追ってもいつの間にか巻かれている。

 その上、最近はなにかもじもじして何かを伝えようとするそぶりまで……これはもう、決まりじゃないか!?どうしよう、俺たちラブコメになっちゃう!!!


 と、1人で考えていると、扉をノックする音が聞こえた。

「ショウ、部屋に入ってもいいか?話があるんだ」

来た!!!!!!

「いいぜ、今開ける」


 招き入れてすぐにアレンは口を開く。鎧なので口が厳密にどこなのかはいまいち分からないが。

「実は、お前に今まで隠していたことがあって」

「うん、それで?」

「私………………鎧が本体なんだ!!!」

と言うと共にアレンは真ん中にある禍々しいレリーフを押し込んだ。観音開きのようにがぱっと外された胸当ての奥は空洞で、わずかに黒くもやがかっている以外には肉も骨も何もかもが見当たらなかった。

「えっ、あっえぇ、そう、なんだぁ……?」

よ、予想外だ……

「仲良くしてくれたのに、ずっと言えなくて、苦しくて。でも、言えてよかった。こんな存在、気持ち悪いよな?分かるよ。金輪際君には近づかないから、許してくれ」

「……いや、そんな、これくらいで引くとかないし」

「いいのか?」

「ダメなわけないじゃん。むしろ、その、かっこいい」

正直恋のチャンスじゃなかったのはわずかに悔しいようなそうでもないような気はするが、むしろ今までの疑問が解けてスッキリした。でもまさか鎧だったとは。ってことは俺と合体攻撃とか、できちゃうのかな!?!?

「ありがとう、お前と親友で良かった」

「俺もだよ。それでさ、少しお願いがあるんだけど」

「なんだ?」

「ちょっとだけでいいんだ、お前を着させてくれないか?」

「〜〜〜〜〜〜ッ!!?!!??バカッ!!!!!!!!!もう知らん!!!!」

バチィン!!!

ぶたれた。なんでだよ。

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あいつの中身 鯛谷木 @tain0tanin0ki

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