集会に遅刻しそうになった話
多田七究
新人冒険者の受難
どうやって作るのか、だれが作ったのかなど、
そんな
「ナマタ、このあとヒマか?」
「いや、訓練があるんだ。またにしてくれ」
ナマタと呼ばれた男は、剣を振り始めた。
呼びかけた二人組のうちのひとりが、肩をすくめて唇をとがらせる。
「それじゃ、またな」
「わるいな、スイカライ。ウークラ」
ひたすらに、ただがむしゃらに剣をふるうナマタ。
二人組のうちのもうひとりが、スイカライと呼ばれた男をなだめていた。
ナマタはチームに所属している。
名は、
「合同作戦が発動する。野郎ども、気合い入れてくぜ!」
その所属チームのリーダー、トッピンから告げられた、他チームとの合同作戦。
トッピンはかなりのやり手。剣と盾を装備したスタンダードなスタイルにもかかわらず、数々の実績をあげている。ナマタの憧れの人物。
組むひとつめのチームは、
組むもうひとつのチームは、ブルーエデン。リーダーのミテンは、女だてらにキマイラを倒したといわれる、やはり
ナマタの胸は高鳴っていた。
集合の1時間前。
ナマタは、店で食事をとっていた。料金は前払い。スプーンを持つ手が震えている。これぞ、
「落ち着け。おれ。いつもどおりでいいんだ」
完食後、おもむろに、トイレに向かった。
途中で店員とすれ違う。目立たない、ごく普通の店員に見えた。
「ふぅ」
一息ついて個室から出ようとした男は、異変に気づいた。扉が開かない。
それだけではなく、
トイレに閉じ込められたナマタ。
パニックになって、正常な行動ができない。ナマタは、しばらくもがいていた。
「落ち着け。リーダーなら、こんなときどうする」
トイレの壁際に、黒い鎧の腕部分のようなものがある。黒い
「誰か。スイカライ。ウークラ」
助けを呼んでも、チームの誰も来ない。
ここまでか。ナマタは、覚悟を決めていた。
そのとき、突然トイレのドアが開いた。
「これは、よくないですね」
「店員さん」
「ナギマスターという者です。よろしくお願いします」
店員のナギマスターが助けに来てくれたのだ。慣れた手つきで、
黒い鎧の腕部分だけに見える
ナマタは、事なきを得た。
「ぼくは、普通の店員ですよ」
そう言うナギマスターが、ナマタには輝いて見えた。
どんな
「この
「忘れものですからね。ぼくの判断では決められません。店長に相談します」
ナマタが大声を出す。
「ええっ? マスターじゃないんですか?」
「ただの名前ですよ。よく言われます。フルネームは、ナギマスター・ワールドアザーといいます」
「お前、どこ行ってたんだよ」
「遅れるかと思ったぞ」
「それは、おれのセリフだ」
ナマタは、なんとか集会の時間に間に合った。
「そこ、私語は
「はい。ごめんなさい」
いち早く
「いいか。今度は大物を狙う。お前ら、一瞬たりとも気を抜くなよ!」
「はいっ!」
しかし、さきほどの事件で気分が
浮ついているナマタ。
それを、
集会に遅刻しそうになった話 多田七究 @tada79
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