闇堕ちマリオネット

陽菜花

プロローグ



「――僕は、キミを傷つけたりしないよ」



(……や、やめっ……!!)



傷跡だらけの白い手が真っ白な髪の少女を優しくなでる。

ここからじゃ、男性の顔は見えない。


少女は理性と闇が混ざったぼんやりとした真っ赤な瞳で目の前の男性を見る。

……意識はないのに。

完全に、操られている。



その姿の通り、操り人形マリオネットだ。



きれいにふんわりと巻かれた長い真っ白な髪。

上は黒いリボンがついたブラウスのような白いデザイン。

腰より下は黒や紫、赤を基調としたダークなドレス。

歩きにくそうなヒールの高い靴。

片方の足は黒のタイツ、もう片方は黒いリボンがつるのように巻き付いている。

……そして、華奢な細い体や手足を縛りつける糸。



早く、解放したい。

あんな痛い糸を斬りたい……けど、彼女はもう……人間じゃない。

どうしようもできない。



彼女を撫でる黒魔術師の男は優しく笑う。

しかし、空気が変わった。

ドクン、と心臓が跳ねる。



「—―ずーっと、僕が可愛がってあげる」



(……あっ……!)



彼女の赤い瞳が、紫色に光った。

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