最強の管理人(一)
「まずは俺が道を切り開く」
父さんが弓を構え気を溜め始めた。目標はもちろん、盆地中央に佇む
「矢はおそらくは槍で弾かれるだろう。だが神器同士の激突で爆風が起き、周囲に土煙が立つ。それを隠れ
矢の先端が光り輝いていく。何度も俺達を苦しめた父さん溜め矢。それが今は水先案内人となって、戦場へ俺達を導こうとしていた。
「行けっ、戦士達よ!!」
父さんは輝く溜め矢を放った。正確にヨウイチ氏の胴体部分へ矢は飛んだが、半獣の管理人は手にしていた槍をフルスイングして矢を叩き折った。
ドグアァァンッ!!
「行くぜ! 隣り合う者とは二メートル以上の間隔を空けろ! 決して密集するなよ!!」
マサオミ様が真っ先に駆け出した。
(マズイ……!)
あと少しというところで土煙が晴れてしまった。
戦士達の接近に気付いたヨウイチ氏は、冷静に槍を構えて先頭のマサオミ様を薙ぎ払おうとしたが、父さんの矢が続けざまに放たれて彼の邪魔をした。管理人としての強靭な肉体は父さんに、遠距離からでも連射が可能な筋力をもたらしていた。
通常の人間である俺とシキでは無理なので、撃ち易い中距離まで詰める為に走った。
「一番! ここだぁっ!!」
マサオミ様の下段攻撃がヨウイチ氏の脚を襲ったが、彼はヒラリと身をかわした。
返す太刀でもう一度マサオミ様は脚を狙ったものの、今度も軽くかわされた。
「マサオミ、一旦退け!!」
背後からイサハヤ殿に怒鳴られて、マサオミ様は後ろへ飛び退いた。その彼の胸スレスレの所までヨウイチ氏の槍が伸びた。退いていなかったら、マサオミ様はあの槍に串刺しにされていただろう。
「うぉ、あっぶねぇ! あのジイさんよく動くぜ!?」
下がったマサオミ様にイサハヤ殿が忠告した。
「騎馬兵に深追いは厳禁だ。生身の人間は速さでは決して
「イザーカ風に言うところのヒット&アウェイか?」
「そうだ。それを繰り返して勝機を見つけるしかない。決して
「あんたも馬に乗れてたらなぁ……」
マサオミ様は軽口を叩いていたが表情が固かった。一瞬の攻防だったが、ヨウイチ氏の恐ろしいまでの強さを知ってしまったのだ。
「キエェェェイ!!」
気合の雄叫びを上げて、右側からトモハルが得意の中段斬りを繰り出した。しかしこれも簡単にかわされた。そこへ左から挟む形でミズキが双刀で斬り込んだが、またもヨウイチ氏は身をかわし、槍で地面に半円を描いた。
「離れろ!!」
後方からの父さんの注意は間に合わなかった。グワッと大きな音と共に地面が裂け、石つぶてとなった大地の
「ミズキ!」
二人は咄嗟に頭と顔を守って後ろへ下がった。
「中隊長!」
「大丈夫だ……。槍で直接刺された訳ではないからな」
石つぶてのダメージは幸い軽かったようだ。普段通りの構え姿勢を取るミズキを見て俺はホッとした。
それにしても、ミズキとトモハルの連携攻撃すら効かないのか。彼らのコンビネーションは、マホ様や隠密隊といった強敵を度々退けてきたのに。
最強の管理人と聞いてから攻撃力ばかりに目が行っていたが、真に厄介なのは回避能力の高さの方なのかもしれない。ヨウイチ氏が翼を持ちながらも大地に留まる理由は、攻撃に当たらないという自信が有るからなんだ。
「おりゃあぁ!!」
再度マサオミ様がヨウイチ氏に挑んだ。また刀は空を切ったが、今度は追い打ちをせずマサオミ様は素直に下がった。
「シキ、味方に当てない程度の甘い狙いでいい、とにかく数を撃とう!」
「了解だご主人!」
俺とシキが矢を乱射してヨウイチ氏の目潰しをしている隙に、イサハヤ殿が水平斬りを試みた。
……駄目だ! また逃げられた。けっして単調な攻め方では無いはずなのに、どうも決定打に欠ける。
イラつく俺達を
『……ふん、イオリを倒した者達の実力がどれ程のものか楽しみにしておったが、これでは期待外れもいいところだな』
…………え?
仲間内の誰でもない声だった。半獣の管理人から発せられたように聞こえたが、まさか。
『鎧を着た貴様、
間違い無かった。声の主は
ヨウイチ氏の視線の先に居たイサハヤ殿が名乗った。
「……
『なるほど、
「
『ほう、司令階級の人間まで討たれてここへ来たか。上では戦争がまた起きたようだな』
喋っているのは仮面の疑似人格なのか? それにしては兵団について詳しいようだ。イサハヤ殿が俺の知りたいことを聞いてくれた。
「今、お話し下さっている貴方はどなたなのですか?」
最強の管理人は槍を回してから柄の後ろを地面にダン! と打ち付けた。
『
なんと。ヨウイチ氏は管理人となった後も己の人格を保っていた。伝説となった無敗の騎馬隊長は、地獄の王が与えた仮面の支配すら打ち破っていた。
■■■■■■
(憎ったらしいくらい強い最強の管理人は、↓↓クリックでビジュアルチェック!)
https://kakuyomu.jp/users/minadukireito/news/16817330667538408755
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます