水と風と火と土と。

えくれあ

序章



この国には、こんな伝承が残されている。


「3000年前、この地は4人の使い手によって救われた」と。



その当時、僕の祖国、「カエリア皇国」は自然の怒りに焼き尽くされようとしていた。


文明を発展させる過程で、人類は自然を変えすぎてしまった。

海を、大地を、空を。

そこに生きる他の生物たちのことなど何も知らない。というかのように。


そんな人々に、自然は牙を向けてきた。

大火災、津波、竜巻、地震。

怒り狂う化身が各地に現れ、多くの天変地異が人々を襲った。


多くの人々が逃げ惑い、傷つき、犠牲になっていった。


そんな荒廃したこの地に、4人の使い手が現れた。

火、水、風、土

この4つの属性の力を自在に操ることのできた彼らは、各々の属性に合わせて化身たちと対峙した。


激しい戦いの末に彼らは見事勝利をおさめ、化身たちの怒りは鎮められた。


その後4人の使い手たちは、自分たちが持つ力を融合させ一つの宝玉を創り出した。


白銀に輝く宝玉の力によって化身たちは封印され、再び祖国に安寧が取り戻された。


こうして4人の使い手たちは皇国の英雄となり、その力は今日に至るまでこの国を守護している




...ここまでがこの国の人々が知る伝承だ。


しかし、この伝承には続きがあった。

僕らにしか知りえない。使い手の一族のみに紡がれし、幻の続きが。


「1000年に一度、その力を以てして再び化身の封印を成さん。」


実は彼らの封印は完全なものではなかった。

一度怒りは鎮めたものの、化身が持つ力は膨大であり彼らには「一時的に」封印することしかできなかった。


その為、彼らの子孫にあの伝承が残された。

魔力が弱まったときに、封印を継続できるように。

もう二度と平穏が壊れないように。


この伝承から3000年間。

時代を生きし使い手たちがその封印の任を継承してきた。


そして今代、僕にその封印の任が課せられる。



使い手が一人、「水使い」の末裔である僕に。





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