いちばん 書く

手紙を書く、というのは、どんなときでしょう。

最近は、SNSでの連絡が主流となり、手紙を書いたりいただいたりする機会は、

減っているのかな、と思います。


それでも、手紙を書く。

それは、どんなときでしょう。

どんなときに、なるのでしょう。

そのことを、考えてみたいと思います。


私の場合は、どうかしらと、振り返ってみます。


まず、あの人に書きたいな、と、人を想います。

その相手は、ときどき、自分だったり、モノだったり、

時には、概念だったりします。

相手のいない手紙は、自分の気持ちを整理するため、向き合うために、出してみているのだと思います。


相手のある手紙のときは、

何を、どんなふうに伝えたいかを自分に問いかけ、

言葉にしてゆきます。

うまく言葉にならなくて、そうじゃないな、と悩むことも、しばしば。

自分の気持ちなのに、しっくりする言葉が見つけられなくて、

そんなときは、むずむず、落ち着きません。


ようやく言葉にできたら、

封筒を、便箋を、切手を、したためる文房具を、選びます。

自分の伝えたいことに合わせるとき、

相手をイメージして選ぶとき、それは、まちまち。

鉛筆を使うとき、万年筆を使うとき。

インクの色も、悩みどころ。

紙との相性も、考えなくては。


そうして、やっと、手紙のかたちにしてゆきます。

いざ、書き始めると、

前もって考えていた内容から離れていったりすることもあります。

こだわりません。

出てきた言葉が、きっと、ほんとうだから。


書いているあいだは、時を忘れて、がむしゃらです。

相手を想うときでありながら、自分と対話するときでもある。

とても、濃いじかんだと、いつも思います。

物語のことを考えているときとは違うなにかが、

手紙と向き合っているときには、あるように思います。

だから私は、手紙を書くのでしょう。

そのじかんは、私にとって、疲れるときでもあり、満たされるときでも、あるようです。


ふしぎと、SNSやメールでは、手紙に書くほどの気持ちが、

自分のなかには生まれません。

私には、きっと、早すぎるのです。

すぐに書けてしまうことも、

すぐ、相手に届くことも。


早いということが、有り難がられる、尊ばれる世界ですけれど、

ゆっくり、じっくり、

発酵を待つようなときが、

私には、いとおしく思えます。


私にとっての書くことは、こんなふう。

あなたにとっては、

手紙を書くというのは、どんなときでしょう。

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