君がくれたもの【超短編】

北風 鏡

第1話完結

ー君を笑わすことが俺の生きがい。ー


そう言って笑った君はもういない。


面白く、優しい君が好きだった。


たまに不器用でおっちょこちょいな君。


よくデートに遅れてくる君。


サプライズをしようとしてドジを踏む君。


約束事を破ってしまって、怒られてしゅんとなる君。


そんな君が愛しかった。


もう、あの頃に戻ることは出来ない。


もっと好きを伝えていたらよかった。


後悔の日々。


君が私の前から居なくなって5回目の春が来た。


君と過ごした四季のイベントも、


将来の夢を語り合ったあの夜も、


すれ違いで喧嘩して大泣きしたあの日々も、


今となっては懐かしいもの。


君は元気でやっているだろうか。


どこにいて


何をして


笑っているのだろうか。


ちゃんと食べてるかな。


料理が壊滅的に下手な君は一人暮らしを始めたと風の噂で聞いた。


卵もまともに割れなくて笑ったあの日。


結局最後まで君の料理は食べれなかったね。


今、君は幸せですか?


「こんな所でどうしたの?春だけどまだ冷えるね。これ使って。」


肩に上着をかけてくれる。


『ありがとう。ちょっと昔の事思い出してた。』


君と別れて酷く落ち込んでた私。


そんな時、側で支え続けてくれた人がいた。


お腹に手をあてる。


『あっ、今蹴った。』


もうすぐ生まれてくるこの子には、私の人生をかけて沢山の笑顔を届けていきたい。


「もうすぐ会えるね。」


私の隣で優しく微笑む彼と、もうすぐ出会える”私達”の宝物に願いを込めて。




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