第63話 思わぬ人物と再会してみた
不意打ちで雷撃を浴びせてきた職員を叱った後、俺はビビと共にギルドの別の階に移動する。
鑑定術師と武具屋の主人のもとを訪問し、挨拶ついでにそれぞれ利用させてもらった。
竜の装備の礼はもう言った。
資金が貯まったら贈り物も渡すつもりである。
命の恩人と評しても過言ではないため、今後も感謝の念が尽きることはない。
ギルドを出たら治療術師に会いに行く。
挨拶だけで去るつもりが、向こうの希望で軽い手合わせをすることになった。
何度も殴り倒されてから解放される。
まだまだ肉弾戦では勝てそうにない……いや、勝てる日など来るのか。
魔術ありならともかく、単純な殴り合いは無理だと思う。
それでも多少なりとも技能面で上達しているのは、ひとえに治療術師のおかげだろう。
世話になった人達への挨拶を済ませた俺達は迷宮へと向かう。
受注した依頼に合わせて、どこの階層で活動すべきか話し合った。
効率面に関わる大事なことだ。
新米冒険者がやりがちな失敗で、無関係な階層を徘徊して時間を無駄にするということがある。
さすがに俺は慣れているので大丈夫だが、それでも不慮の事故とも言えるような出来事が潜んでいるのが迷宮だ。
なるべく計画を立てておくに越したことはない。
そんなことをして歩いていると、前方から誰かが歩いてくる。
眉を寄せると同時に声がした。
「やあ、二人とも! 元気そうで何よりだ」
満面の笑みで手を振ってくるのは、全身が包帯だらけの聖騎士だった。
包帯で人相がまともに窺えないが間違いない。
周りの通行人も怪訝そうに避けている。
そんな人物が俺達のもとへ嬉しそうに駆けてきた。
俺とビビはほぼ同時に反応する。
「げっ」
「あの人……なんで?」
反射的に身構えるも、聖騎士は平然としていた。
俺達の前で立ち止まった彼は、不思議そうに首を傾げてみせる。
「どうしたんだい。まるでアンデッドでも見たような表情じゃないか」
「なぜここにいる」
「愚問だね。もちろん君達に会うためさ。王都への送還中に抜け出してここまで来たのさ」
聖騎士は両手を広げて笑う。
敵意は感じられない。
しかし、気を抜くわけにはいかないだろう。
傷だらけの聖騎士は、機嫌が良さそうに俺達を見る。
決闘の時とは別人の雰囲気であった。
初対面でビビを勧誘していた時を連想させられる。
(ようやく平穏になったのにな……)
俺は深々とため息を吐いた。
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