第58話 新たな日常を振り返ってみた
目が覚めると、寄り添うようにビビが眠っていた。
彼女の頭を撫でながら、俺は自分の首を撫でる。
数日前に聖騎士によって刺された痕は綺麗に消えていた。
治療術師がいなければ死んでいたらしい。
自覚はなかったが致命傷だったのだ。
決闘には勝利したが、あまり誇れる結果ではない。
(皆に頼ってばかりだな、本当に)
俺は自嘲を込めて嘆息する。
今回の一件でたくさんの借りを作ったので、順に返さねばならない。
当分は迷宮で奮闘する生活が続くだろう。
きっとビビも手伝ってくれるが、彼女に任せきりでは駄目だ。
もう怪我もしていないのだから自力で頑張ろうと思う。
あの後、聖騎士は王都に送還させられたらしい。
治療術師が手を施さなかったので、満身創痍のまま運ばれたそうだ。
ただ、向こうは一般的な処置だけで十分な状態だったらしい。
それとすぐに完治させると、さらに暴走する恐れがあったからだろう。
詳しい話は俺も聞いていないので実際のところはよく知らない。
職員曰く、聖騎士は役職を剥奪される可能性が高いという。
考えてみれば当然だ。
個人的な因縁で決闘を挑んだ挙句、大衆の面前で敗北したのだから。
英雄としての功績に無駄な泥を塗った形である。
国から何らかの罰が下されるのは仕方ない。
一方で職員は、王国から俺への接触も仄めかしていた。
単独で聖騎士に勝ったという噂が広まっており、それを聞き付けた使者が来るかもしれないとのことだ。
予想していた事態ではあるものの、正直かなり面倒である。
身の丈に合わない評価を受けても持て余してしまう。
今回の勝利は俺一人の力では成し遂げられなかったものだ。
皆の協力を得ることで、どうにか互角以上の戦いに持ち込めた。
もし再び決闘をしたら勝敗は逆転するだろう。
最初から慢心せずに聖騎士が挑んできたら敵わない。
死霊術師を討伐した時もそうだった。
黒い刃の短剣があったからこそ、それを決定打にすることができた。
ビビがグールの相手をしてくれたのも大きい。
だから高い実力を持つ冒険者として期待されても困る。
(ただの冒険者なんだがな……)
昨日、ギルドに赴くと英雄殺しの冒険者と呼ばれた。
もう目立ちまくりである。
街のあちこちでも噂が立っていた。
別に英雄を殺していないし、自力での勝利でもない。
まったく、勘弁してほしいものだ。
(あとがき)
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