闇の音楽

俺は悟りを開くために闇を追求しているわけではない

ただ音楽を作るための技術として闇を扱いたいのだ

だから満たされていなければ 幸せでなければ

そうでなければ自由自在に扱えているとは言えない


何もかもを破壊してやりたい

真っ暗に真っ黒に真っ新に

そうそこに自他の区別なく

全てを無差別に破壊してやりたい


でもそれだと彼も、みんなも消えてしまう

それは嫌だ みんながいなくなるなんて

俺の大好きな人、もの、ことを全部だなんて

だからって俺にとって良いものだけを残すことは不可能だ


だって彼の大切なものが俺には違うかもしれないから

だから彼らだけ特別扱いはできない

だからみんな死んでしまえば、とはならない

だってみんな大切なんだ


だからどうにか真っ新にしないやり方を考える

そこで音楽が生まれる


もしも俺だけが死んでしまえばどうだろう

ダメだ まだダメだ

まだ諦めきれない


“多様性”と“単一性”がせめぎ合っている

その隙間で音楽が生まれる


善か悪かでいえば

俺は悪なんだろう

少なくとも多様性が善で単一性が悪ならば


創造が善で破壊が悪ならば

俺は悪だ

だって全てを真っ新に破壊してやりたいのだから


だから闘ってみたい

自分の中の悪と対峙したい

明日のために

そして音楽が生まれる


俺の中に二人の俺がいる

みんなが幸せになれますように、と、

何もかもを粉々に破壊してやりたい、が


今日も二人は争っている

そして俺は迷う

そして俺は音楽を創る


俺の創作活動は破壊衝動に因る

壊すことが作ること

だから、壊すものがなくなったら

俺は音楽をやめるだろう


もしも真の世界平和が訪れたら

俺は存在理由を失うだろう


俺は平和を破壊するつもりはない

そこまで音楽にのめり込むつもりはない

だから俺は終わりの時を夢見ているのだろう


穏やかな日常を

音楽なしでも俺が俺でいられる日々を


幸せになりたい

全てはそこに収束する

だから俺は俺のやり方で闇を

幸せな日々のために


俺は幸せだ

みんながいる

そして明日を願えるから


今日も俺は歌を歌う

終わりの時に

“なんて幸せな人生だったんだろう”と

そう思うために


闇こそ我が力なり

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