腐食連鎖

大狼 芥磨

プロローグ

 生物にはいろいろな種類がある。大きな木のように枝分かれしていき、果ては知り得ないほどだ。原生生物、植物、動物、脊索動物、節足動物、不完全菌、維管束植物、コケ植物、バクテリア、アーキア、根足虫、アピコンプレクサ、数えきれない。


 そして、更に細かく分類された中に、私たち人間は存在している。人間といっても、そこから更にネグロイド、コーカソイド、モンゴロイド、オーストラロイドとなり、他にも国ごとに分類されたりもしている。


 その中でも外見の違い、五感から感じ取れる特徴を人間は強く意識する。肌の色、髪の色、目の色、頭の良し悪し、耳の良し悪し、目の良し悪し、身体の良し悪し、いろいろだ。そして、特徴の違った人間を尊び、敬い、妬み、憎み、排除していくのだ。


 そんな中にはこんな人間もいる。一度見たものを記憶できる人、音を聞くだけでその音の音階を把握できる人、わずかな色の違いを見分けられる人、通常では見ることのできないものを見ることができる人、そして、病にとても強く、病まない人間というのもいる。


 そういう人間はある時は尊ばれ、ある時は敬われ、そして、ある時は妬まれる。そんな感情の中に晒される人のことを私は悲しく思う。生まれながらにして優劣などないと神様はいうかもしれないけれど、そんなことはない。ある人は人より優れたことを悔やむかもしれない。ある人は人より劣っているために妬むかもしれない。生まれた時に赤ん坊が泣くのはきっと悔みも妬みも悲しみも喜びも全てわかっているからなのだと思う。


 私が生まれてきたことを後悔しない日はない。


 そんなことを思いながら私は道を歩いている。人が一人も歩かないこの街の大通りを闊歩する。


 私はもうすぐこの街が死ぬことを知っていた。

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