怪物から伝説の男へと

 泪は今いる場所と、違う所で起きていることを同時にみていた。


(……同時にみなきゃいけないって……キツイよ)


 そう思い泪は、ハァーっと溜息をついている。




 ――場所は移り、サイアル城内――


 泪はセフィルディとラギルノの行動をみていた……――



 ――……現在セフィルディとラギルノは、傭兵詰所に来ている。


 辺りには、数名の傭兵がいた。


 その中でも偉そうな男が一人、椅子に座り机上に肘をつき書類をみている。



 この男は傭兵をまとめる団長だ。名前はグラグウィル・セイビボル、三十五歳である。


 髪はわざと剃ってるらしく、光にあたると見事なほどにテカっていた。見た目は悪くないが、体格と頭のせいで残念ながらマイナス点である。



 机の前には、セフィルディとラギルノが立っていた。


「これはセフィルディ様……」


 そう言いグラグウィルは、慌てて立ち上がり深く頭を下げる。


「よい、頭を上げなさい。それでは、話ができません」


「承知しました。それで、今日はどのような用でしょうか?」


 そう言われセフィルディは、なぜここに来たのかを話した。


 それを聞きグラグウィルは、書類を引き出しから取り出すとテーブル席に移動する。


 そのあとをセフィルディとラギルノはついていった。


 その後三人は椅子に座る。


 グラグウィルはテーブルの上に書類を置いた。


「また一人、ですか……」


「ああ、非常時のためですよ」


「なるほどです。それでセフィルディ様が連れて来たという事は……かなりの経歴なのでしょうな」


 そう言いグラグウィルは、ラギルノを見据える。


「ああ、伝説にもなっている男だ」


「伝説……なんのでしょう?」


「ラギルノ・ダルフェと言えば分かりますか?」


 それを聞きグラグウィルの顔は青ざめる。


「ま、まさか……あの……ブルゲスタの怪物!? 勇者に何度も敗れはしたものの、対等に渡りあったと云われている男。ですが、最後の戦いで死んだと聞いていたが」


「俺は死んでいない! それに……ツカサと対等なんかじゃなく、それ以下だ」


「それでも……生きている……普通じゃありませんよね?」


 そう言いセフィルディは、目を細め笑みを浮かべるとラギルノをみた。


「そうだな。大怪我はしたが、なぜか生きている……自分でも不思議だ」


「なるほど……これは面白い。じゃあガルディスとは、知り合いだな」


「ああ……できれば、アイツの顔はみたくない」


 それを聞きグラグウィルは、ニヤッと笑みを浮かべる。


「これは面白いことが起きそうだ。セフィルディ様、どこで探してきたか分かりませんが……こんないい人材をみつけてくるとは……」


「気に入ってくれると思っていた。それで……例の件は?」


「勿論、進んでいますよ。ラギルノも、ガルディス同様に城内の警備をですね」


 そうグラグウィルが言うとセフィルディは、コクッと頷いた。


「……なるほど、二人共ぐるか」


「ええ、そういう事ですよ」


 その後ラギルノは、書類に記載する。


 そしてラギルノとセフィルディとグラグウィルは、今後について話しをしていたのだった。

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