疑心と真相

 ここはドルムスの屋敷の庭。そこには、美咲と司とサフィアとラギルノとドルムスが居て話をしている。


 あれから司とラギルノは、ドルムスの屋敷から出ると美咲たちの所まできた。


 美咲たちは、ラギルノに対して警戒する。


 それをみて司は訳を話した。


 その後、美咲たちは話をするため庭までくる。



 現在、美咲たちは話し合っていた。


 泪は近くの枝にとまり、その様子をみている。


「恐らく隠しても、あとで分かってしまうと思いますので名乗っておきます。俺は久遠司、と言えば分かりますよね」


「ツカサ……勇者か、まさかこの村に来ていたとはな。という事は、貴女が聖女であるミサキ様ですね」


 ドルムスの司と美咲への対応が、あからさまに違っていた。


 それをみて司は複雑な心境になる。


(そうなるよな……恐らく、ドルムスにとって俺は厄介者でしかない。だからこの対応は……普通だ)


 そう思い司は、つらい表情になった。


 ミサキは司の表情をみて心配する。


「……はい、そうです。ですがドルムスさん、司と私とでの対応が……」


「やめろ、美咲! 俺なら大丈夫だ。それよりも、これだけは信じて下さい。さっきも話しましたが、ラギルノは雇われただけです」


「うむ。それは、さっき聞いた。それで私に金を出せとでも云うのかね?」


 そう言われ司は、ムッとするが堪えた。


「いえ、違います。お金の方は、俺が払うことで話を付けました」


「それを信じろと? その証拠がどこにある」


「証明する物はありません。ですが……」


 それを聞きドルムスは首を横に振る。


「話にならんな」


「ドルムスさん。証拠はありませんけど……この村が炎で焼かれなかったのって、司がラギルノに話を付けたからですよね?」


「聖……いえ、ミサキ様。そうかもしれませんが、私は勇者さまを信用するつもりなどない」


 そう言いドルムスは司を睨んだ。


 司はそう言われ、クッと唇を噛みしめ俯いた。


「どうしてですか? なぜそこまで司を嫌うの……」


 そう美咲に問われドルムスは司を凝視する。


「ドルムス様、私も聞きたいですな。なぜ、勇者さまのことを嫌うのか」


 セフィルディはそう言いながら、美咲たちの方へ歩み寄ってきた。


「なぜ、セフィルディ……お前がここにいる?」


「用を思い出し戻って来たのですが……」


「そうか……それで、どこかに隠れてみていたという訳か」


 そうドルムスに言われセフィルディは、ニヤリと口角を上げ笑みを浮かべる。


「まぁ……そうですね。それで、どうなのでしょうか」


「セフィルディ……お前も勇者の噂は知っているだろう」


「ええ、ですが……アレは国のミスだと思っています」


 それを聞きドルムスは首を傾げる。


「国のミス?」


「はい、ドルムス様はあの国の城が破壊された件を……どこまで知っているのですか?」


 そうセフィルディに問われドルムスは考え始めた。


「どこまで……そういえば、理由はしらん」


「なるほど……では、噂だけで勇者さまを嫌っている訳ですね。以前のドルムス様なら、そういう事はなかったのでしょうが」


 そう言いセフィルディは、ドルムスから目を逸らし溜息をつく。


「そうだな……だがセフィルディ、理由があるのか?」


「あると思いますよ……そうじゃなければ、勇者さまがあんなことをしないと思います。そうじゃありませんか、勇者さま?」


 そう問われ頷き司は、その時のことを美咲と一緒に説明する。


「ミサキ様を守るため……そうか、すまない噂をうのみにしてしまい」


 ドルムスはそう言い頭を下げた。


「いえ、慣れているので。それよりも、さっきの件ですが」


「そうだな……」


 そう言いドルムスは、ラギルノの方へ視線を向ける。そして、どうしたらいいのかと考えていたのだった。

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