取引

 司はラギルノの返答を待っていた。


「どうしたんだ? 何を悩んでいる」


「悩ませているのはお前だろ! だがそうだな……お前と戦いたい気持ちはある」


「なるほど……んー、ここじゃなきゃ駄目か?」


 そう問われラギルノは首を傾げる。


「うむ、ここじゃなくても構わん。だが、どういう事だ?」


「お前と戦うのは構わないが、この村を壊しかねないからな」


「本当にお前、嘘がつけんな……素直過ぎる」


 そう言われ司は苦笑した。


「嘘をつくより、いいだろ?」


「まあ、そうだな。んー、どうだ! それなら、取引しないか?」


「なるほど……それもアリだな。だがまさか、ラギルノから持ちかけてくるとは思わなかった。それで、取引内容は?」


 そう言い司はラギルノを見据える。


「至って簡単だ。俺は今回依頼料をもらっている……だから、その倍の金額を出してくれたらこの件から手を引く」


「確かに簡単だな。だが、いくらなんだ? 金額によっては無理だぞ」


 そう聞かれラギルノはその金額を言った。


「……でどうだ?」


「んー、その倍か……ギリギリだな」


「無理なら、この村を破壊するだけだが」


 そう言われ司はジト目でラギルノをみる。


「なんか足元みてないか?」


「どうだろうな。だが、悪い取引じゃないだろ?」


「ハァ~、そうだな……だがどうする? お金を渡すにも、お前を逃がすにしたって……」


 それを聞きラギルノはその方法を司に教えた。



 ▼△★△▼☆▼△



 ここはドルムスの屋敷の外だ。


 あれから美咲とサフィアは二人の男と戦っていた。と云っても、戦っていたのはサフィアの方である。


 美咲はドルムスを安全な場所へ避難させていた。


 そして現在、二人の男はアッサリとサフィアに倒され地面に倒れている。


 それをみた美咲とドルムスは、サフィアの方へ歩み寄った。


「相変わらずね、サフィアは……」


「美咲だって、能力を使えば強いでしょ」


「んー私の場合は、自分と同化できるものがないと無理だからな」


 そう言い美咲は苦笑する。


「ゴホンッ、話している所すまない。……改めて、ありがとう」


 ドルムスはそう言い頭を下げた。


「あ、頭を上げてください。それにまだ終わっていないので」


 そう言い美咲はドルムスの屋敷を指差す。


「そうね、ボスは強いから……。でも、司なら倒せるだろうけど」


「そっかぁ……だけど、そのボスって誰なの?」


「んー美咲も知ってるかも……ラギルノ・ダルフェよ」


 その名前を聞き美咲は青ざめる。


「……あの人、生きてたんだね。でも、それなら……ここで二人が戦ったら火の海になっちゃう」


「えっ!? どういう事なの」


「司は炎の能力でラギルノが炎系の魔法を使う……ってことは」


 そう言われサフィアは、ゾッとした。


「それって……村の人たちを避難させないと」


 そう話をしているとドルムスの屋敷から司とラギルノが出てくる。


 それに気づき美咲とサフィアとドルムスは、司とラギルノの方を向き首を傾げた。

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