第一章

巻き込まれて異世界

 私は目覚め辺りを見回した。ここは、西洋風の建物の中らしい。目を擦りながら今の状況を把握しようとする。


「ここ……祭壇、かな?」


 そう思いながら起き上がり、ふと左下をみた。すると清美が、スヤスヤと寝ている。


「清美、寝てるのかぁ。んー、どうみてもここってテーマパークじゃないよね」


 私がキョロキョロしていると、誰かが近づいてきた。


 みた感じは、どっかの偉い教会の人っぽい服を着たイケメンのお兄さんだ。


「これは、なんと可愛らしい。お初に御目にかかります。私は、この城の神官カイルディ・リゲルと申します」


 そう言い会釈をする。それに釣られ私も頭を下げた。


「私は、明乃泪です。それと……」


 私は未だにスヤスヤ寝ている清美に視線を向ける。


 それに気づいたカイルディさんは、清美をみるなり小首を傾げた。


「うむ、もう一人いらっしゃるようですね。これは、どういう事なのでしょうか?」


 そう言い清美の方に歩み寄った。丁度その時、清美は目覚め辺りを見回す。


「ここは……?」


 そう言い私の方へ視線を向けた。


「清美、私もここがどこか分からない。でも、カイルディさんなら……」


「カイルディさん?」


「ふむ、二人の聖女。いえいえ、それはあり得ません。という事は……」


 その声に驚き清美は、上体を起こしカイルディさんの方を向く。


「誰!?」


「これは、失礼を致しました。私は――」


 カイルディさんは、清美に私と同じ挨拶をする。


「……カイルディさん。そうなのですね。私は、聖清美です」


 そう言いながら軽く会釈をした。相変わらず清美は、清楚な雰囲気を醸し出している。


「ルイ様に、キヨミ様……ですか。それで、どちらが聖女さまなのか?」


「聖女? それって……」


 どうやら清美は、何がなんだか分からず困惑してるようだ。


 だけど私は聖女と聞いてアニメや漫画、小説などで知っていてピンときた。


 そうここは、別の世界だという事。そして、聖女を召喚したってことは……。


「……もしかして、この世界で何かあったんですか?」


「いいえ、まだこの国では何も起こっていません。ですが、災いの前兆が各地で起こっているようなのです」


 それを聞き清美は、更に驚いている。


「ちょっと待って、この世界って……。まさかここ、私たちの世界とは別の世界なの?」


「はい、そうなると思われます。私がこの祭壇で、召喚させて頂きました。ですが、なぜ二人も召喚してしまったのかと」


 そう言いながらカイルディさんは、私と清美を交互にみた。


「それは、どういう事なんですか?」


「ルイ様、本来なら聖女は一人なのです。そうなると、御二方のどちらかが聖女で、」


「……ってことは、私たちのどっちかが巻き込まれたってこと?」


 私がそう問いかけると、カイルディさんはコクリと頷く。


「そうなりますね。しかしながら、どちらが聖女なのか?」


 そう言い首を傾げている。


「……ハッ! そうでした。聖女には、確か証となる水色の羽の紋章があると言われています」


「それじゃ、私たちのどちらかにその紋章があれば、」


「キヨミ様、そうなるでしょう。ですが、どちらなのか……」


 それを聞き私は、自分のみえる範囲を確認してみた。だけど、見当たらない。


 そうだよなぁ、と思いながら清美の方へ視線を向ける。と同時に「あった!」そう言い清美の首の右側を指差した。



 そう清美の首の右側には、小さな水色の羽のような紋章らしきものが描かれていたのだ。



 カイルディさんは、私の声に反応して清美の首の右側をみる。


「おお、これは間違いありません。まさしく、聖女の証。そうなるとキヨミ様が、」


「エェッ!? 私が聖女、って……何かの間違いじゃ」


 清美は困惑しているようだ。


「いいえ、その紋章は間違いなく聖女の証です」


 そう言われ清美は、困ったような表情になる。


「ねぇ泪、どうしよう。私、聖女がなんなのか分からないし」


「じゃあ、手伝うよ。そうだカイルディさん、清美の傍にいてもいいかな?」


 そう問いかけるとカイルディさんは、明らかに迷惑そうな顔になり首を横に振った。


「それは、無理かと思われます。それに、このことを国王さまに御伝えしなければなりません。その時に、ルイ様の処遇をどうするか判断を仰ぎたいと」


「じゃあ、泪と一緒に居られないってこと?」


「そうなります。ですが国王さまと他の方々の判断次第では、その後一緒に居ることも可能になるかもしれません」


 それを聞いた私と清美は「分かりました」と言い頷く。


 その後、カイルディさんがこの城の二人の従者を呼んでくる。


 そして私たちは、その従者の案内で別々の部屋へと向かったのだった。

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