第4話 カップルのフリをする「幼馴染」

そうして、学年中にカップルであると思われてしまった俺達2人は、昼休み後の休憩時間、クラスのみんなから質問攻めを受けていた…

『いつから付き合ってるの〜?』

『ねぇ、どこまで行った?ヤッた?』

『どっちから告白したの〜〜?』

…っと、言った感じに。困ったものである。

『お前らが想像してるほどの事は俺たちはして無いぞ、な?渚?――』

そこで俺とは少し遠いグループで俺と同じように質問攻めにあっていた渚に協力を求めようとしたのだが…

『あ〜キス?もちろんしてるよ?なんなら1日1回しないと翔がうるさくて〜』

渚さん…?見栄を張りすぎでは?

『なんて嘘をついてるんだお前…』

『げ!翔!』

『聞いたよ〜津崎くん?毎日渚とアツアツなんだってね〜』

『そんな事実一切ないんだが…』

『え?でもさっき渚――』

『翔の馬鹿!』

『え…?なんで俺なんだよ…』

『あーあ、拗ねちゃった』

『津崎くん、追いかけてあげて〜多分それが一番の解決策だから〜』

休憩時間も残り少ないというのに教室を飛び出して言った渚の背を追って、俺は仕方なく教室を出るのだった…

『さて…それにしてもあいつはどこいったんだろうな…』

女子トイレとかに行かれたらもう俺としては詰みなんだが…

『まぁ、あそこだろうな』

あそこ とは俺と渚、それに未来がよく溜まり場として使ってる空き教室だ。

昔は音楽室として使われていたらしいが防音設備を強化するために別の教室を使うことになったため、この教室はそのまま放置されている、という訳だ。

俺達以外あまり知ってる人が居ないのか分からないが俺達がこの教室は事実上完全に占領している。

っと、そんなことを考えている間に着いてしまったな。外から軽く中の様子を伺ってみる、とそこには――

『何泣いてるんだよ、渚』

『翔!?なんでここに?』

『お前が急に教室飛び出て行くからだろ…』

『あの後クラスからの視線痛かったんだからな?』

『…それは…翔が悪いもん…』

『そんなにキスしたかったのか?』

『…もう!ほんとにバカ!そういうことじゃないの!』

めっちゃしたそうに見えるんだけど…

黙っておいた方がいいのかな…

『いくらカップルを演じるとはいえキスしたとか言ったら渚嫌かなって思ったんだよ』

『私のことを考えてってこと?』

『ああ、じゃなきゃここに来ないだろ』

『ふーん…じゃあ許してあげる』

どうやら機嫌を治してくれたみたいだ。完全に治った訳じゃないだろうけど。

『許してあげる代わりに、1個お願いなんだけど…』

少し不安があるのだろうか、自信なさげに渚が口を開く――

『ん!?』

渚が口を開くより先に、その口を俺は自らの口で塞いでいた。

『こうして欲しかったんだろ?』

そう言って口を離して渚の顔を見てみると…

『翔のバカ!!』

…といつもより弱い拳が飛んできた。

まぁ、渚の顔を見るに満更でも無さそうだからきっと喜んでいるのだろう。

『これがツンデレってやつか』

『ツンデレじゃない!』

『はいはい、じゃあ正直になろうなー』

『正直に言ってるって!』

『…まぁ…嬉しかったけど…』

『なんて言った?』

『1回で聞き取りなさいよ!』

『勘違いするなよ?俺たちは、あくまでも偽のカップルなんだからな?』

『わかってるわよ』

なぜなら、俺たちのこの恋は叶うことなんてないのだから。

俺はその気持ちをそっと胸の奥にしまい込みながら、渚に言葉を投げかける。

『よし、じゃあ帰るぞ、渚』

そんな時、学校中に授業開始のチャイムが鳴り響く。

あちゃー、ちょっと遅かったか。

じゃあもう、今更戻っても遅いしな…と、そう思った俺が渚にある提案をしようとすると…いや、必要ないな。

どうやら渚も同じことを考えているらしい。

『なぁ』『ねぇ』

『『今日の授業、一緒にサボらない?』』

そうして俺達は2人でサボる事にするのだった…



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