第23話 勇者パーティーの入り口に立ち。終

シナリオが…無い!

あれ、ふわっと落ちてたよね?

俺の近くに落ちているはずだけど…無い。


「…」


あたりを見渡す。

しかし、周囲にはめぼしいものは見つからなかった。


……まさか、主人公君?盗む…?

いやいや、仮にも勇者パーティーのリーダーだよ?

悪役である俺を追放する、勇者だよ?

流石にこそまで社会的地位を失うような行動に出るほど馬鹿なわけない。


…だったらシナリオはどこにあるって話だよな。

ちなみに牧師の可能性も考えました。

結果から言って、あり得ない。


盗んでないことを証明することは難しい。

だから盗んだとして、矛盾を導き出します。

・そもそも盗む時間が無い

勇者が二人登場した時、牧師は必死に女神様に助けを求めてたもんね。

それからすぐに儀式再開したし、

・隠す場所が無い

牧師がいた場所には、でっかい像と台ぐらいしか無かった。

服に入れるとしても大きすぎる。


はい、牧師の可能性なし。

問題は主人公の方だ!!

謎の人物の介入で俺があっけにとられてた次の瞬間、勇者とシナリオが消えたんだが?

うん…。勇者の線が濃いな。

まだ信じてないけどね?

流石に勇者が一者を勝手に盗むわけが無い。


……あ、考えてたら儀式終わったわ。あっけなかったぁ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ヒョーゴは『女神様の祝福』の儀式が終わり、帰宅した。

勇者が二人も出現するという、大事件が起きた割にはすぐに静まったものだ。

これは例の『賢者』による、影響であるとヒョーゴは考えていた。

感謝の意しかないが…。


「…ただいま」


「あ!お帰りなさい、ヒョーゴさん!」


ヒョーゴが家に帰ると、ニコニコ顔のサリーさんが顔を出す。

俺悪役なんだけど!


「儀式お疲れさまでした!結構時間がかかってましたね…」


そんな俺の心の声に気付かないサリーさんは、言葉をつづけた。

まあ、一大事件があったから結構長引いちゃったね。

流石に儀式終わってすぐに返されることも無くて、『賢者』さんに引き留められたんだよなあ。


『君がヒョーゴだね!勇者おめでと!しかも二人もいるよ、これで世界も平和だねえ~』


貼り付けた笑顔で語る賢者さん。

これは皮肉なのでは?


『噂はよく聞いてるよ、どうやら街での人気者らしいじゃないか?』


やっぱ皮肉ぅ


『おいらが抱えられてる帝国で使者送ったりとか表彰とかが後々あるから、

ロイロ・クラシ街のギルドで、また一年後ぐらいに会おう!もしかしたら、おいらは忙しいから会えないかもしれないけど~』


そう言いながら、賢者さんは二枚の紙を渡した。


『これに詳細書かれてるから!あともう一枚は今いない勇者に渡しておいてねえ!』


ざ、雑用係!

これは参った…。

まあ別に構わないけど。

ライトノベルのことについて尋問したいことがあるし(怒)

一つ問題点があるとすれば、主人公君の家が知らないこと。

シナリオも何もない状態だから未知な領域が広すぎて……。


『それと……、最近魔王の行動が活発化しているから気を付けてねえ!』


最後に忠告だけして賢者さんは去っていった。

気を付けろーってか…。

俺は無責任すぎる言葉に嘆いた。



「—————そうだな。忙しかった。まあ、俺の事は気にすんな」


俺は短い言葉だけ残して立ち去ろうとした。


「もー!ヒョーゴさん少しは会話したらどうですかー?二日前は私を求めてましたのに」


…。

その話は反則だぜ?

あのパフパフ事件だろ?

俺にとってはあの出来事も一大事件だった…。


「はあ、俺は別に求めてなんか……」


「え?ヒョーゴさん、あの後、私が「そろそろ終わりにしましょうか?」って言った時に何も返事せずに顔を埋めてたじゃないですか?」


ん?

完全に酸欠で俺意識失ってた時なんですけど!

次に気付いたら俺は何もせずに突っ立っていたっていうオチね。

本音を言えばパフパフ事件ほとんど記憶にございません!

サリーさんのふくよかな胸に抱かれたってことは覚えているけど、それ以外の記憶が…。(酸欠で意識が朦朧ワロタ)


やべえ、完全に下心満載なガキみたいなイメージが追加されて行ってしまっている…。


ヒョーゴは自分の立ち位置に危機感を覚え始めていた。


「と、とにかく。部屋に戻る…」


「ヒョーゴさんも可愛らしいところがあるんですね!見直しました!」


可愛いだと?!

ふざけるな!

てか…悪役を精一杯演じてるんだから引っかかってくれよ。

変なところで見直したりするなあ!!


心の中で思いの丈を叫ぶ。

勿論この声もサリーさんに聞こえってしまったら、手玉に取られてしまうので声には出さなかったが…。


「……」


「~♪」


どんどんサリーさんが上機嫌になっていく。

俺が出発した時より元気そう。

なんで俺が帰ってきたら上機嫌になるんだ?


まあ、いいや。今日はもう頭が痛いし、食べて寝る。

部屋でグータラしてよ~。


「…あ」


あ!そうだ言い忘れてた!

主人公の野蛮な行動に心を打たれすぎて、頭の中で思考が纏まっていなかった。


「……サリー。俺は『勇者』になった。二年後に俺は勇者パーティーに加盟することになる」


俺はさらっと話した


「…え?」


するとサリーさんの笑顔は急に固くなった。

声のトーンも下がっており、さっきまでとは様子が全く違って見えた。


まあ、そりゃあ驚くのも仕方ない。

だって『勇者』だもん。

こんな悪役が勇者になったらサリーさんもびっくりするだろう。


ヒョーゴは能天気にそんなことを考えていた。

だからサリーの気持ちに気付く由もない。


「……二年過ぎたら。会えなくなるんです…か?」


そう、彼女にとって『勇者』など些細な問題であった。

しかしサリーは勇者パーティーに加盟することに対して反発心を持っていた。


「しょうがない…ですね…。ヒョーゴさんは…勇者ですし。私の事なんて…別に…」


勇者パーティーに加盟する、そのパーティーは帝国直轄のため、すべては帝国のために動くような存在なのだ。

その一つに、帝国の敵となる魔王の討伐。がある。

つまり勇者パーティーは帝国の一つの重要役職でもある。

そのため、他の国を行き行きすることに制限が加えられているのだ。

勇者パーティーに加盟したなら時間のほとんどを帝国で過ごすこととなるだろう…。

もちろんサリーとヒョーゴが仲良く暮らしていく未来など更々ない。

これが彼女にとって最も辛い事であった。


「…」


えぇ?!

サリーさん泣いてるんだけど?!

…え?会えなくなるって?

勇者パーティーって多忙なんだね。

まあ、サリーさん自身も心をすり減らせる元凶が居なくなってラッキーでしょ!

『悪役退散、嬉しすぎて涙が…。』

って感じでしょ?

お互い様よお互い様。




~~~~~~~~サリーSIDE~~~~~~~~



どうしても…引き留めたい…です。

ヒョーゴさんを手放したくない。

やっぱ、私って卑怯ですよね。…でも、ごめんなさい。

私は気付きました…やっと…。

ヒョーゴさんに依存しているのです。

そうに決まっています……たまらなく愛惜しいのですから。





作者より

忙しい!!!ふう、とにかく。投稿一旦停止。

指摘コメントは直す時間が無いので、後々確認します!では、






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