第2話 俺の環境

※推敲忘れてました。


「モー、メエエ、モーモー」


目が覚めると俺は小屋にいた。

豚と牛を合成したような変な動物に舐められて起こされる。

これが異世界の動物かあ…。


見渡す限り奇妙な動物しか見えず、人の姿は見当たらなかった。

よし!これで気兼ねなく現状確認ができるぞ!


「あー。幼いけど少し筋肉質な感じだ。マジか…本当に俺転生したんだなあ」


自分の体を触ってみて違和感に気付いた。

赤ちゃんの頃から転生が始まると思ったけど、身長や体格から見て

十代ぐらいだろう、まあ中学生と言った所だろうか…。


声はもう、太くなっている。

声変わりが終わった体みたいで、声を出すことに支障はきたさないだろう。


「悪役ってどんなんだ?汚い言葉遣いとか必要だよなあ…」


ちょっと困る。

何せ前世で俺は他人の悪口を一つも言わないままこの世を去った。

人の欠点は見つけられるけど、なんか悪口には繋がらないんだよなあ。


ここはラノベの知識に頼って対処するか!


あとは周囲を確認して俺の生きていた環境を知る。

急に人が変わったら近寄りがたくなるからね!

俺自身にもそんな経験あるしね!

まじで中二病許さない、


「あの、変な音響いてましたけど…。大丈夫ですか?」


考え事に浸っている間に小屋のドアが少し開く。

誰かが小屋を覗きに来たのか…。

どうやら俺を心配して誰かが見に来たらしい。

てか、この人が俺と深い関わり持ってたら速攻バレるやん。


バレるじゃん、え?どうしよう…。

やっべ緊張しすぎてクラっと来る、



「あ…、えっとな…」


言葉に詰まる、

いやいやコミュニケーション障害者かよ、何か喋ろよ。

女神様の前でも流暢に喋ってたじゃないか…。


やっべ、思いつかない。

少しの苛立ちによっていつもの癖で後頭部の髪を掻きむしろうとする。

俺はストレスが溜まった時と照れ隠しの時に後頭部を掻いてしまう癖がある。

ヌルッ

すると、手に生暖かい感触が残った。

あれ?

なんだこれは?


「…」


手を後頭部から離して軽く握りこぶしを作る。

そしてゆっくりと、後ろに回した手を自分の顔の正面に持ってくる。

手を開く。


…あー血だ。相当な量だ。

手にベッタリと血がついていた。

ちょっとクラっとしたのはこの理由もあるかも~。


「え?大丈夫なの?!……!!」


何かドアの前にいる人が叫んでるね。

かなり危ない状況かもしれん。まあ、どうすることもできないけど。

…声聞きとれなくなってきたわ。

おやすみなさーい。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「……!」


ん?話しかけられてるのか?


「………きて!」


駄目だ…まだノイズが混じってる。

でも、頭が段々と冴えてきている気がする。

転生直前も頭痛だったし、頭痛耐性とかついているのかもしれない。



「ヒョーゴさん起きて!!」


「…っ!」


完全に目が覚めて体を上半身だけ起こす。

目を開けるとここは少し古ぼけた平民が暮らすような中世っぽい部屋だった。

例えにくいが、The ISEKAIだ。

そして一人の女性が俺を凝視していた。


「ヒョーゴさん。幸運でしたね。あの出血量から見て

一時間発見されていなかったら、死んでいたでしょう」


さらっと恐ろしいこと言うねこの子。

しかも冷静だ。


「…俺はヒョーゴか?」


「その通りですけど…、やっぱり手遅れでしたか…」


なんか勘違いしてる感じ?

転生の現象を脳の病と勘違いしています、

よりによって説明しずらい。


「いや、ちょっと気が動転していただけだ。お前がこれ以上深入りする必要は無い」


悪役、悪役になりきって言葉を選ぶわ。


女性に向かって言葉を言い放った。

その女性は銀髪でショートカットであり、まだ若い。

大学一年生といった具合の年齢っぽそう。

そして角が二本生えている。

マジでファンタジーな世界だ。


そういや、女神様も銀髪だったなあロングだったけど。


「そうですか、一時はどうなるかと思いましたが安心しました。」


っと俺に話しかける。

けど全く顔が嬉しそうじゃない。

目の奥まで冷め切ってしまっているような表情だ。

言葉も抑揚が無く刺々しい。


あー。俺が転生して得た体の元の主も元から嫌われるようなことしてたのかあ…

好都合だけど何か複雑だなあ…。

元のヒョーゴの性格は散々だったようなことが伝わってくる。


「…はあ、もういいです。私はやるべき仕事に戻ります」


そういって目の前の女性はドアの方に向かって歩き出す。

もう少し俺について知りたいんだけど!

周囲との関係とかこれまでの成り行きとか…。


そこまで思ってふと思い返す。

てか、この人誰だろ?

俺とどんな関係があるのかが分からなくて距離感が掴めない。

日記とか書いてあったら便利だけどなあ、後で探すか。


「では、」


そう言いながら銀髪の女性は部屋を出ようとする。

その様子に咄嗟に俺は言葉が出てしまった。


「ありがとな…お前が居なかったら俺は死んでたわ」


…あ、感謝しちゃった。

ま、まあ悪役も感謝くらいはするよね?

大丈夫大丈夫。


「…それは、どういたし…まして…?」


足を止めて俺の方に視線が向く。

その後、困惑したように銀髪の女性が体ごと振り返ってきた。


そして少し弱い声で首をかしげながらお返しの言葉を添えた。

また何か別の感情も含んでいるように。

その困惑の裏に隠れている感情をお互いに気付くことはもう少し先かもしれない


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