第49話 ざまぁ展開5秒前

 ――シャルと亜美が連れていかれた港の廃倉庫。


 そこでは、シャルと亜美が後ろ手にロープで縛られていた。

 2人のスマホは赤坊に取り上げられ、亜美が怯えた様子でシャルに寄り添っている。

 シャルは怒りの声を上げた。


「ちょっと! 私はともかく亜美さんはもう良いでしょ!? 解放しなさいよ!」

「シャルちゃん、落ち着いて……怒らせると何をされるか分からないよ……」


 赤坊はおしゃぶり型の葉巻を吹かしてニヤリと笑う。


「そうしようと思ってたんだが……どうやらこの亜美ちゃんは友達想いの子みてぇだからな。このまま行かせると、警察に通報しそうだからよ――」


 赤坊が片手を挙げると、手下たちは2人の周囲を取り囲んでゲスびた笑いを浮かべる。


「サツには行かねぇようにちょっと手下たちにでもさせようと思ってな」


 シャルは亜美を守るように前に出て啖呵を切った。


「亜美さんは頭が良いから教育なんて必要ないわ、むしろ教育が必要なのはアンタなんじゃない? よければ貴方にピッタリの学校を教えてあげるわ、駅前のメンタルクリニックなんだけど」


 シャルが強がって言うと、手下の一人が噴き出して笑った。

 そして、慌てた様子で口を押さえる。

 赤坊はその手下の前にゆっくりと歩いて行った。


「おい、何を遠慮してんだ? 笑えよ、面白かったんだろ?」


 その手下は身体を震え上がらせながら、首を横に振った。


「い、いえ……すみません! どうか、許してください!」


「……おい、俺にガラガラ鉄パイプを持ってこい。ステュワーデスがファーストクラスの客にキャビアとワインをサービスするようにな」


 丁寧に渡された鉄パイプを手に持つと、赤坊はその手下の前で軽く素振りをする。


「や、やめてください……どうか……」


 手下は震え上がって土下座をしながら許しを請う。

 そんな様子を見て、亜美が声を上げた。


「な、何をするつもり!? やめてよ! 貴方に逆らった訳じゃないでしょ!」


 赤坊は考えるように顎に手を添える。


「そうだなぁ、教育する相手はお前だもんな」

「そ、そうでしょ! だからその人は許してあげて!」


 亜美が震えながらそう言うと、手下は泣きながら感謝する。

 しかし、赤坊はなんの迷いもなくその手下の顔面に鉄パイプを振り抜いた。


「きゃぁぁぁ!」


 亜美は悲鳴を上げた。

 シャルはすぐに亜美の顔を自分の胸に抱き寄せて目と耳を塞いだ。

 鉄パイプで殴られた手下は床に倒れ、赤坊はその後も鉄パイプで容赦なく何度も殴りつける。


「ふぅ……これなら手下もお嬢ちゃんも教育できて一石二鳥だな。おい、こうなりたくなかったら大人しく震えてな」


 赤坊は頬に付いた返り血を拭うと、笑った。


「亜美さん、見ちゃダメ」

「うぅ……シャルちゃん、怖いよぉ」

「大丈夫。すぐに甚太が助けに来るから」

「じ、甚太なんか来たって、こんなのどうにもならないわ……」

「ううん。甚太なら、こいつらをやっつけてくれるわ」

「無理だよ、甚太はヘタレだし……殴られることはあっても、喧嘩なんてしたことないんだから」

「……確かに今まではそうだったかもしれないけど。今日は違うわ」


 シャルはそう言うと、亜美の頭を優しく撫でた。


「――だって、貴方を守る為に戦うんだもの」


       ◇◇◇


 倉庫の外では、軽く息を切らしながら一人の男子学生が到着していた。


「――ここが例の倉庫か。シャルと亜美……無事で居てくれよ」


 すぐに駆けつけた俺――伏見甚太はベイビープレイのアジトに単身で殴り込んだ。


 ――――――――――――――

【ご連絡】

 本格的な投稿再開はもう少しかかります!

 大変申し訳ございませんが、続きを楽しみにお待ちください!

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