第9話 傭兵時代の宮本龍二

【前書き】

傭兵だった頃の龍二の話です。

過去編は全4話でサッと終わります。

早く現代無双が見たい皆様すみません!長くはならないので!

 ――――――――――――――


 ――国際連合特殊部隊『SWORD』。


 世界中にあるアジトを転々としながら暗躍し、世界の危機を秘密裏に守る秘密部隊。


 そこに傭兵として加入した俺はその隊でも一番若く、未熟だった。


「"よう、新人ルーキー。日本人が勤勉ってのは聞いてたが、よく『そいつ』の話を聞いてられるな。お前もオタクってやつか?"」


 とあるアジトの部屋の中。

 仲間に武器の使い方や特徴などの説明を受けている中、英語で口を挟んできた彼の名前はアーロン。

 アメリカ人男性の元軍人で、お調子者だ。


「"りゅ、龍二さんは凄いです! 武器オタクの僕がこんなにいっぱい話しても嫌な顔一つせずに熱心にメモを取りながら聞いてくれるんです! こんなの僕の娘以外では初めてで……最高です!"」


 そう言って感激の涙を流しながら、流れるような手さばきでハンドガンや手榴弾を解体したり組み立てているのはエルマ。

 冴えない風貌のドイツ人の男性で、彼は武器の調達やサポート担当だ。


「"俺は早く強くなりてぇだけだ。だから勉強もするし、訓練もする"」


 俺がそう言うと、ハンモックに揺られながら本を読んでいる髭面の隊員も言い返した。


「"そうだよアーロン。知識は人を助け想像力を働かせて人生を豊かにする。学ぶ姿勢を茶化すべきではない"」


 彼はイタリア人のディーノ。

 暇さえあれば小説を読んでいて、いつも知性や落ち着きに満ちている。

 部隊のブレイン的な存在だ。


「"へっ、知識ばっかり入れたって使えなきゃ意味ねぇぞ"」


「"アーロン。君は英語しか知らないだろうけど。世の中には色んな言語があるんだ。龍二は他の言語も覚えていつも現地で役立てているだろ?"」


 いつも通り、ディーノに皮肉たっぷり論破されそうになるとアーロンは頭をガシガシとかいて、子猫でも持ち上げるように俺の首根っこを掴む。


「"頼りになるのは知識より経験だっ! 龍二、武器の説明なんか聞くより実際に撃ちまくった方が100倍早いぜ? 射撃場に行くぞ!"」


「"……確かにそっちの方が効率良いかもな。よし、射撃訓練だ"」


 アーロンの言葉も一理あると思い、俺は武器を用意する。

 説明を聞いていて、早く撃ちたくなったのもある。

 人をじゃない、的をだ。


「"なんで龍二はそんなに一生懸命鍛えてるんだ?"」


 料理を作っているオスカーは何気なく聞いてきた。

 彼はフランス人で、傭兵なのに少し気取った奴だ。

 食事マナーにもうるさく、礼儀が人を作るのだとたびたび熱弁している。

 もちろん、ガサツなアーロンとは食事の度に喧嘩だ。


「"俺は強くなりたいんだ。隊長を倒せるくらいに"」

「"あぁ~、そういえば。入隊初日に殴りかかって返り討ちにされてたな"」

「"隊長を倒せるくらいに……か。そりゃ気のなげぇ話だな!"」


 アーロンが豪快に笑う。


「"ふんっ、言ってろ。俺はすぐに強くなって隊長を超えてやる。それと、戦場に必要な技術も全て学んで無敵の傭兵になるんだ"」

「"おうっ! じゃあ俺様が教えてやるぜ!"」


 俺は銃を手に豪快に笑うアーロンと射撃訓練に向かった。


       ◇◇◇


「"お~い、龍二! お前もやれよ!"」


 訓練後、食事を終えるとアーロンに呼びかけられた。

 見ると、懸垂をするトレーニング器具とストップウォッチが用意されている。


「"俺が発明したゲーム! 『誰が一番早く手を使わずに靴下を脱げるか!』だ!"」

「"…………"」


 あまりの幼稚さに絶句する。

 大人のやることか? これが。


「"ルールは簡単。そこの棒にぶら下がった状態で足だけで靴下を脱ぐんだ。それで一番遅かった奴が今日の皿洗いだ"」

「"なんだこのバカげたゲーム。いつものトランプで良いじゃねえか"」


 読んでいた本を閉じて、ディーノが笑う。


「"トランプは最近、アーロンが負けてばっかりだったから。彼が無い頭を使ってゲームを考案したんだよ"」

「"それにお前訓練好きだろ? これならトランプよりも役立つじゃねぇか"」

「"……手を使わずに靴下を脱ぐ技術がいつ役に立つんだよ"」


 俺が呆れると、アーロンはチッチッチッと人差し指を左右に振った。


「"そんなの後から分かる。人生なんてそんなもんさ、全ての経験に意味があるんだぜ?"」


「"――よっしゃ! 俺もやるぜ!"」


 そう言ってやる気満々に飛び出したのはスペイン人のギルベルトだ。

 彼は部隊一の大男なんだが……同時に太っている。

 オスカーが止めに入った。


「"ギル、君はダメだ。体重が100キロあるだろ? 器具が壊れたらどうする?"」

「"96.76キロだ! 俺は痩せたんだぞ!"」

「"小数点以下まで覚えてるのが涙ぐましいな"」

「"バカバカしい。皿洗いくらい俺がやっておく。あと、ギルベルトはダイエットしろよ"」


 俺がそう言ってゲームを辞退しようとすると、アーロンは馬鹿にしたように笑った。


「"お? 逃げるのか? 負けるのが怖いんだろ"」


 アホらしい挑発だった。

 しかし、若造の俺には効果てきめんだ。

 不敵に笑うアーロンを睨む。


「"いいぜ、靴下どころかパンツまで脱いでやるよ"」

「"パンツは脱ぐなよ……"」


 オスカーはスペイン語でもっともなことを呟いた。


 ――30分後。


 キッチンには負けて皿洗いをしている俺の姿があった。


(くそっ、意外と難しい……。まずは右足から脱ぐとして、左足の指を思いっきり広げるんだ。そうしたら靴下の中に空間ができるから……焦らず冷静に……)


 ……後日、練習して完全にコツを掴んだ俺は両足の靴下を3秒で脱げる程になっていた。


「"――で、そんなのが何の役に立つんだ?"」

「"こうしてお前に皿洗いをさせられる"」

「"あっはっはっ! 違ぇねぇ! 馬鹿とハサミは使いようだな!"」


 負けたアーロンは皿洗いをする。

 トランプでも勝てないアーロンは、料理も作れないくせに皿洗いだけはドンドン上手くなっていった。


 ◇◇◇


「"龍二。我が部隊に新しいお友達だ"」

「"……隊長、ここは学校じゃねぇぞ?"」


 ある日、『SWORD』の隊長がそう言って入隊させたのが――


 シャルロット・スタンリー。


 悲しい色の瞳をした、当時まだ13歳の天才美少女ハッカーだった。

 ――――――――――――――

【業務連絡】

少し過去編が続きますが、龍二の修行編みたいなモノとお考え下さい!


堂島への復讐や学園無双。

生きていた龍二への周囲の反応を楽しみにお待ちください!

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