甘々な彼氏は色んな意味でみえません

織坂一

第1話 喪女の私が突如白皙の美青年とエンカした件について



人の因果は、時としてとんでもない事態を引き寄せる。

古来から因果それは、呪いと呼ばれることもあれば、縁とも称されることがある。


原因があれば結果が付随する比翼連理だというのなら、一体これはなにが原因で起こっているという?


現在、私・神代かみしろれんは非現実的な事態と出会いによって混乱の底に堕とされていた。


現実では目にすることのないクリーム色の髪。

少し跳ねた髪は、柔らかい髪質が一目で見抜けるほど細やかで。

そして柔和なのは髪質だけでなく、彼の浮かべる笑みも同じ。


今、私の眼前にいる白皙の美青年と邂逅したきっかけはほんの数時間前まで遡る。







現在、平均賃金が下がる一方のこの世の中で、日々働き詰めになるのはそう珍しくもない。


かくいう私も、働き詰めな毎日の中、今日も激務を終えて帰路につき、さらに自宅で雑務を片付けようとぼんやり考えていた。


ありえないほどの仕事量に思わず眩暈もするし、残業手当ても出ないというのによくもまぁこんなキリキリと働くものだと自嘲する。

だが、これらの仕事を明日まで放置するという愚行だけは犯さない。


なにせこのまま仕事を放置すれば、後日に多大な皺寄せとなって私の精神と灰燼と化す。


そのせいか私の目は常に死んでおり、時々こんな自分が嫌になる。

おかげであってないようなプライベートを送ること3年——この期間に私に恋人など出来ることはなかった。


当然といえば当然の出来事。

平日は家と職場の往復しかせず、休日は自室にて惰眠を貪って1日を潰すのだ。そんな女に出会いが訪れる訳がない。


結果、私は婚期が大幅に遅れるどころか恋愛など周回遅れもいいところだ。


婚活? 街コン? 誰が参加などするか馬鹿め。

社畜にとって休日がなんたる日を、どうやら世間は知らないのだろう。

再三いうが、社畜にとって休日とは読んで字の如し。


誰からも責められることなく惰眠を貪ることを許された日に、婚活という精神的に負担のかかる地獄へ足を突っ込む方が私としてはおかしい。


このままではきっと、三十路などとうにすぎ、40、50年……と月日は過ぎていく。


ん? もしやこのままでは年金と同じく自分の女としての人生は静かになくなるのではないかなんて思っていた頃。


こんな喪女の元に導き出された因果がである。

謎の美男子との邂逅エンカウント——思わずこの現実に如何なる縁があってこうなったのか、私は声にならない悲鳴をあげた。




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